第11話

大柄ヒーロー!
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2020/05/22 01:00
7つのグループの狭間で人に埋もれながら、奥中央の大きな鏡を見失わない様に歩いていく。

背の小さな私は、ザワザワと動き続ける背の高い壁の間からぶつからない様にすり抜けた。
赤髪の男
赤髪の男
───さ、これで入学式と寮分けは終わりかな?
いいかい、新入生達。ハーツラビュル寮ではボクが法律ルールだ。逆らう者は首をはねてやるからそのつもりで。
獅子の耳を持つ男
獅子の耳を持つ男
…ふぁ〜あ。やっとかったるい式が終わった。
さっさと寮に戻るぞ。サバナクロー寮、付いてこい。
眼鏡の男
眼鏡の男
新入生のみなさん。この度は入学おめでとうございます!
みなさんが充実した学園生活を送れるよう、オクタヴィネル寮寮長として精一杯サポートさせて頂きますよ。
人混みの中をかき分けながら、次々に私の前に出てくる他人の足に注意する。


(こ、こんなに広かったっけ?)


と、不安になるほど鏡までが遠く感じる。
1年生
あははっ、だよなー。
先輩
おい、静かにしろ!
寮長がまだ喋ってるだろ!
1年生
す、すみません!

チッ…なんだよ、威張りやがって…(ボソッ)



『ドンッ!』

あなた
…!
いきなり迫ってきた誰かの背中に私の体は吹っ飛ばされる。
あなた
痛たたた…
よろけた私はすぐさま振り返ると、

フードを被った男子学生がこちらに不機嫌そうな面を向けた。
1年生
おい、どこ見てんだよ。
ちゃんと前見ろよ!
あなた
す、すみません…
1年生
あーあー、なーんか気分悪くなっちゃったなぁ〜。どうしてくれんの?
あなた
あ、謝る事しか今の私には出来ないです…
1年生
はぁ?!土下座ぐらいしろよ、土下座!

(ま、待って、これ夢だよね?!なんでこんなに迫力あるわけ?!?!)


人混みはますます盛り上がりを見せて居るのか、私と男子学生との話し声は掻き消されてしまった。

そのせいで誰もこの状況に気づいていない。
あなた
す、すみません!本当、ごめんなさい!
1年生
はぁ…ナメられる前にここで俺の強さを示しとかねぇとなぁ?
あなた
っ…
膝を少し折り曲げ、両腕を体の前でギュッと畳んでしまった私は、立っていながら最小のサイズになった。

こちらへとジリジリと寄ってくる男子学生を前にして、私はもう動けそうにない。


(こ、怖すぎる…!)





ぎゅっと瞼を閉じた時、

大きな影が私の上に重なったのが分かった。
おい、
あなた
…?
1年生
なんだ、お前?
身体に力を入れて縮こまったまま、

ゆっくりと目を開く。





そこには私よりもずっと大きい式典服を着た背中があった。

狼の耳を持つ男
狼の耳を持つ男
こいつも謝ってるんだから、もう良いだろ。しつこ過ぎるのはどうかと思うぞ。

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