第16話

足掻けリグレット!
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2020/06/17 17:00
眼鏡の男
眼鏡の男
クロウリー先生、私にお任せ下さい。
いたいけな小動物をいたぶって捕獲するという皆さんが嫌がる役目、この私が請け負います。
タブレットの声
タブレットの声
《流石、アズール氏。
内申の点数稼ぎキマシタワー。》
ターバンの男
ターバンの男
なぁ、誰かオレのケツの火ぃ消してくれてもよくねぇ?!
ディア・クロウリー
ディア・クロウリー
皆さん、私の話聞いてます?!
獅子の耳を持つ男
獅子の耳を持つ男
狸捕まえるくらい、アンタがやりゃ良いだろ、センセー。
グリム
グリム
オレ様は狸じゃないって何度言わせるんだゾ!
更に機嫌を悪くしたグリムの炎は勢いを増すばかり。


生徒達は大混乱の渦の中に飲み込まれ、

青い炎は私達を鳥籠の様に囲った。
グリム
グリム
偉大なる魔法士・グリム様とはオレ様のことなんだゾー!
眼鏡の男
眼鏡の男
威勢の良い小動物ですね。
リドルさん、お願い出来ますか?
赤髪の男
赤髪の男
違反者は見逃せないからね。
さっさと済ませるとしよう。
赤髪の男と眼鏡の男が結託してからは早く、

不思議なペンの様な長さの杖から様々な光を出してはグリムを追い込んでいく。
あなた
あれが…魔法……
学園長の影からじっとグリムが逃げ惑う様子を見つめていた私は、

グリムが「絶対にこの学園に入るんだゾ!」と何度も叫んでいるのを聞いていた。
グリム
グリム
ふな"っ?! 行き止まり?!
眼鏡の男
眼鏡の男
愚かですねぇ。
貴方、泳がされていることに気づかなかったんですか?
赤髪の男
赤髪の男
アズール、これで済ませてしまうよ。
眼鏡の男
眼鏡の男
そうですね。
早くしないと夜が明けてしまいます。
グリム
グリム
オレ様は…オレ様は…
あっという間に行き止まりに追い込まれてしまったグリムが力いっぱいに再び叫んだ。
グリム
グリム
絶対にこの学園の生徒になるんだぞっ!!!
(また、叫んで…)


赤髪の男の杖がグリムに向けられる。


(何か強い思いがあるんじゃ…)


その瞬間、ふと自分が今傍観者である事に気づき、嫌な記憶が蘇る。









『あなたちゃんってさぁ、何考えてるかいまいち分かんないよね。』





悪口を言わない私が引っ越した先の学校で、私はそう陰口を言われていた。


だから…


怖くなった私は、悪口を言われている子に思ってもいない様な陰口を口にした。


何をされた訳でも無いくせに。


私自身が周りから嫌われないようにする為に。



例え、その後に悪口を言われ続けた子をどう助けようと、

私の過去からはその事実は消えない。


誰かに何かを必死に訴えようとする、その子の言葉も、目も、何もかも…



自分が可愛いが為に、



" 見て見ぬフリをした " という過去は────






赤髪の男
赤髪の男
アズール、下がれ!
眼鏡の男
眼鏡の男
悪足掻きのように唸り声を上げて青い炎を身に纏うグリムに対し、

決して杖を下ろさない赤髪の男。


呪文を唱えようと口が動きかけた途端、私の足は動き出した。







きっと、夢の中なら────


ディア・クロウリー
ディア・クロウリー
ちょっと、貴方!!!



いや、夢の中だけなら────


あなた
止めて!!!!
グリム
グリム
ふな"っ"?!?!



────私が好きな自分に…




なれるような気がしたから。


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