第8話

完全ナイト!
5,992
2020/05/22 01:00
あなた
あの、
角がついた男
角がついた男
どうした?
あなた
やっぱり大丈夫です。
学園の門までの道だけ教えて下さい。

(って…私、こんなに広い学園内で簡単に出口に辿り着けると思ってんの?(泣) 走ってきた自分が1番分かってるのにっ。)
角がついた男
角がついた男
本当に良いのか?
ここは僕にとってはそうでも無いが、小さいお前にはかなり広いと思うが。
あなた
大丈夫です。

(本当は大丈夫じゃないですぅぅうううっ!)
角がついた男
角がついた男
そうか…なら、さっきの入口を出て右に曲がれ。
突き当たり奥の廊下から中庭を通れば、小さくだが見える筈だ。

(うっ…今言われた通りに……私行けるかな…?)
角がついた男
角がついた男
行けるか?
あなた
だ、大丈夫です。
角がついた男
角がついた男
私の顔を暫く見上げ続けるので、私は彼に向かって軽く頷いた。

『コクン』
角がついた男
角がついた男
なら良い。気をつけて帰れ、人の子よ。
またお前と会える日を楽しみにしていよう。
あなた
はい、ありがとうございました!
私もいつかまたお会い出来るのを楽しみに…

(って、夢の中だからもう会えないかもしれないな………もう一度、この人に会えますように!)
あなた
私も楽しみにしていますね!
角がついた男
角がついた男
ああ。(クスッ)
一度も顔が緩む事の無かった彼の顔が微笑みを見せた。
あなた
では!
彼の隣を横切ると私は軽くお辞儀をして、

図書室らしき部屋を出た。



『キキィッ、バタンッ。』







あなた
って、早速迷っちゃったし…
さっきの角の付いた彼に教えて貰った通りに歩いていたつもりが、

一向に門の姿は見えない。


どうやら私は完全に迷ってしまったようだ。


(折角、グリムから姿が見えない魔法をかけて貰ったのに…)
あなた
はぁ…本当、申し訳ない。
『スタ、スタ、スタ…』

さっきまでは逃げるのに必死で気づかなかったが、

辺りはすっかり日が暮れている。


寧ろ、夜と言ってもいい。
あなた
それにしても、長い夢。
そろそろ覚めても良いと思うんだけど。
廊下の石の柱に歩み寄ると、今度はピタリとくっついてみる。

ひんやりとした石独特の温度が心地いい。
あなた
魔法とか喋る猫とか…こういう感覚的な所もやけにリアルっていうか……なんだか、夢じゃないみたい。
貴方、面白い事を言う人ですねぇ。
『ドギッ!!!』

突然の声と、トンッと置かれた手に心臓が掴まれたかの様に跳ねた。
ここは夢なんかじゃありませんよ。
やっと見つけました。ずっと貴方の事を探していたんですよ。
あなた
っ…
不安定なリズムを刻み出す心臓、

肩に置かれた知らない男の人の手。

怖くて振り返れない私に男は話掛け続けた。
ダメじゃありませんか。勝手にゲートから出るなんて!

(げ、ゲート?! 何それ、知らない知らない!!!)
…って、貴方、もうこんな魔法も使えるんですか?
姿を消す魔法なんて、一体誰から隠れていたんです?
あなた
そ、それは自分で掛けた訳じゃなくて、
…まぁ、良いでしょう。
今はもう必要ありませんからね。
あなた
え!!!
『フワッ』

私の体からキラキラしたものが消えていく。

角付きの彼から掛けて貰った魔法が解けていくのが分かった。
あなた
ま、待って下さい!
何です?
そんな事をしたらグリムに見つかってしまう、と慌てて振り返る。

そこには鳥のような仮面を被った背の高い男が立っていた。
あなた
ぎ、ギャァァァアアアアアアッ!!!!!

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