グリムに走り寄った私が少し息を整えながら後ろを見ると、
私の背にぴったりと張り付くかの様にさっきのゴーストがついて来ていた。
グリムの口から小さく青い火の粉が空気中にチラチラと放たれるのが目に入った。
(と、止めないと!!!)
この寮の作りは見た感じ木材が多く使われているし、外は雨が降っているとはいえ、一度火がついてしまうとなると只事では済まされない。
火の勢いは早く、凄まじく、そして恐ろしいのだ。
この寮の場合、あっという間に焼き崩れてしまうだろう。
『バタバタバタッ』
ゴーストに追われながらもグリムの傍まで駆けて行くと、
私は強引にも炎を吹き散らすグリムを後ろから抱きかかえた。
驚いたグリムがじたばたと手足を動かす。
ふよふよと自由に動き回るゴースト3人組は私達をゆっくりと玄関の壁際まで追い詰める。
グリムが思う未来に私が居ないことに少し傷ついた自分が居る。
分かってはいたが、やっぱり言葉にされると傷つく。
学園長からこの学園の生徒として入る為の条件を聞かされた時、グリムはあまり乗り気では無かった。
(…、)
少し傷ついた心に蓋をしようとしているのか、自然とグリムを抱える手にも少し力が入った。
(『関係ない』なんて言わないで…)
どう考えても無茶な話なのは理解している。
私は1人、何かしらの手違いで異世界にやって来てしまい、元の世界へは直ぐに帰れないと来た。
独りなのが不安、独りなのが怖い。
自然とそう思う自分が居る事は自覚済みだ。
それを今日会ったばかりの相手に満たす様に求めている、なんて。
こんなに図々しくて、馬鹿げている話はないだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。