グリムが思う未来に私が居ないことに少し傷ついた自分が居る。
その気持ちに蓋をしようとしているのか、自然とグリムを抱える手にも少し力が入った。
(何も、出来ない事は………)
グリムの言葉を遮って、私は大きな声で言い放つ。
その声は見事に寮内に響き渡った。
こんなにはっきりと意図的に大声に言葉を乗せたのは久しぶりな気がする。
私の腕の中のグリムは顔を上げ、私と目を合わせた。
「何言ってるんだゾ!」と、ジタバタとさっきよりも更に暴れる。
私達の会話を傍観していたゴースト達に私は背を向けて蹲る。
ふと、闇の鏡の前でした会話が頭の中を過ぎった。
『私が出す条件を守って下さるなら、
我が校、ナイトレイブンカレッジで学生としての生活を送らせてあげます!』
『な"っ?!』
『えっ?!』
『私、優しいので。(ニコッ)』
その条件は幾つかあって、とても私だけでは決められそうになかった。
だけど、今なら…
(よし、決めた!)
グリムが痛くないように抱き締めながら、私は決意を宣言した。
グリムの噛み付くような発言に私は少し笑って応えた。
ニッと笑ってみせたが、グリムは暫く私を見つめてからフイッとそっぽを向いてしまった。
呼びかけても口を閉ざしたままで。
(あれ、変な事言っちゃった?)
私はグリムから少し視線を逸らし、「う〜ん、、」と頭を悩ませる。
(確かに、今のは結構強引且つ独断過ぎた…かも……)
グリムが嫌なら…というフレーズを口の中で待機気味にもごもごさせていると、
漸くグリムが口を開いた。
グリムの恥ずかしそうに伏せた目はチラリと私を見て、直ぐに外された。
最初は何を言われたのか分からなかった私も、
理解するや否や自然と顔が綻び、笑みが零れる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。