第20話

お試し期間の終わり
1,923
2022/09/15 23:00
結局、何事もなかったように家まで送ってくれた清瀬くんによって、"キス未遂"(?)のまま遊園地デートは幕を閉じ───。

ついに、この日がやってきてしまった。
お試しで付き合って1ヶ月。

今日は、清瀬くんの彼女でいられる最後の日。
だけど清瀬くんは、朝からずーっといつも通りで、『え?今日で本当に最後だよね?』と私はソワソワ。

そのままズルズルと1日は過ぎ、ついに放課後になってしまった。
清瀬 律
清瀬 律
あれ、ヒヨコ今日バイトだっけ?
木下 ひより
木下 ひより
あ、うん……!
清瀬 律
清瀬 律
んじゃ、店まで送ってく
木下 ひより
木下 ひより
え、いいよ!
すぐ近くだし、それに……
それに、今日で1ヶ月。
私たちのお試し期間は終わってしまうのだから。

そんな言葉を飲み込んで、あおばと、莉子ちゃんの言葉を思い出す。
長谷川 あおば
長谷川 あおば
きっと、清瀬くんも
ひよちゃんとの関係が心地いいから、
今日までお試しやめなかったんだよ!
清瀬 莉子
清瀬 莉子
お兄ちゃんが私以外のために
こんだけ時間使ってるんだから、
脈アリに決まってる!
早くお兄ちゃんの彼女になってよね?
2人の言葉に励まされて、私の中に淡い期待が過ぎる。もしかしたら、このまま……。

もし清瀬くんが、今の関係に少しでも心地良さを感じてくれているなら……。

私たち、このまま本当の恋人になれる?

木下 ひより
木下 ひより
清瀬くん
清瀬 律
清瀬 律
ん?
木下 ひより
木下 ひより
今日でお試し期間の1ヶ月は
終わりだって、気づいてた?
清瀬 律
清瀬 律
……あ、そっか。
今日でちょうど1ヶ月、か
やっぱり、気付いてなかったんだ。
木下 ひより
木下 ひより
改めて、私の気持ちを伝えるから。
……清瀬くんの気持ちも教えて?
清瀬 律
清瀬 律
……っ、
木下 ひより
木下 ひより
私、清瀬くんのことが、
1ヶ月前よりもずっとずっと大好き
人もまばらな教室で、精一杯の告白。

誰も、私と清瀬くんの会話を気にする人なんていないけど、私は決死の告白に今にも意識が遠のいてしまいそうだ。
木下 ひより
木下 ひより
清瀬くんは、どうかな?
できれば、ほんの少し。
私との毎日を楽しく思ってくれていたりしませんか。

できれば、ほんの少し。
一緒にいる中で、私への気持ちが芽生えてくれていたりしませんか。

……願わくば、清瀬くんにとっての"特別"に。
清瀬 律
清瀬 律
ごめん、
木下 ひより
木下 ひより
っ、
清瀬 律
清瀬 律
俺やっぱ好きとか、分かんない
現実は、そう……上手くは行かない。
分かっていたはずなのに、期待してしまう自分を止められなかったのは、それだけ清瀬くんの事が好きだから。
木下 ひより
木下 ひより
そう、だよね〜!
1ヶ月じゃ、何も変わらないよね!
清瀬 律
清瀬 律
……ヒヨコ、
木下 ひより
木下 ひより
大丈夫!!
気にしないで、分かってたから。
……これからも友達でいてね
放課後デートも、一緒に過ごした昼休みも、球技大会でくれたリストバンドも、楽しかった遊園地も。

1人で勝手に浮かれていただけだった。……思い出す度に涙があふれそうになるのをグッと耐えて笑顔を作る。
清瀬 律
清瀬 律
……んなの、当たり前じゃん
木下 ひより
木下 ひより
ありがとう。
……あ、じゃあバイト遅れるから
私、もう行くね!
お試しお付き合いをする前は、清瀬くんの1ヶ月を自分のために使ってもらえるなんて贅沢だと思っていたのに、

欲張りになった自分の心が嫌になる。

清瀬くんに背を向けて、歩き出す瞬間。
……私は、この恋を、清瀬くんを諦める決意をした。