第25話

溺愛させていただきます
6,012
2022/10/20 23:00
清瀬 律
清瀬 律
俺、本当に鈍いらしくて。
……自分の気持ち気付くまで
すごい時間かかったけど
ふわ、と抱きしめられていた腕が離れて、くるりと180度視界が回転する。

そこには、制服姿の清瀬くんがいて、自然と目が合う。
木下 ひより
木下 ひより
……本当に?
清瀬 律
清瀬 律
気付くとずっと探してる。
……学校でも、店でも、街中でも
木下 ひより
木下 ひより
何それ、嬉しすぎる……
清瀬 律
清瀬 律
まだ、間に合う?
木下 ひより
木下 ひより
え?
清瀬 律
清瀬 律
俺と付き合って。
……今度はできれば
無期限でお願いしたいんだけど
語尾になるにつれて声のサイズが控えめになっていく清瀬くんがおかしくて、笑みがこぼれる。

こんなの、嬉しくないはずがない。

私の知らないところで、私が清瀬くんの特別になっていたなんて、本当に奇跡が起きた。

根っからのシスコンで、莉子ちゃんにしか関心がなくて、恋なんて微塵も興味が無かったあの清瀬くんの本当の彼女になれる日が来るなんて。

宝くじが当たるより、隕石が落ちるより、ずっとずっとすごい確率だと思う。
木下 ひより
木下 ひより
よろしくお願いします!
……もちろん、無期限で
***

〜 付き合って1ヶ月 〜
清瀬 律
清瀬 律
ひより
木下 ひより
木下 ひより
……ぬっ、まだ慣れないなぁ
名前で呼ばれるの
清瀬 律
清瀬 律
なんで?
もう1ヶ月経つのに
木下 ひより
木下 ひより
そ、そうなんだけど
なんか、恥ずかしい
”ヒヨコ”から”ひより”呼びになって、もう1ヶ月が経つのに、私はまだ恥ずかしさから顔が見れない。

一緒にお昼ご飯を食べ終えて寛いでいる、この時間を改めて幸せに思う。
清瀬 莉子
清瀬 莉子
あー!
いたいた、お兄ちゃん!
清瀬 律
清瀬 律
お、莉子
清瀬 莉子
清瀬 莉子
お兄ちゃん
今日、家の鍵忘れたでしょ?
さっきお母さんから連絡があって
清瀬 律
清瀬 律
あ、玄関に置き忘れたかも
清瀬 莉子
清瀬 莉子
しっかりしてよね!
私、今日はデートで遅くなるから、
私の鍵渡しとく!
律くんの前で堂々とデート宣言する莉子ちゃんにヒヤリとする私。

……だけど、
清瀬 律
清瀬 律
……分かった。
ちゃんと帰る前に連絡しろよ。
あと、絶対 送ってもらうこと
木下 ひより
木下 ひより
嘘……すごいあっさり
清瀬 莉子
清瀬 莉子
分かってるよ〜
相変わらず心配性だなぁ。
でも、ひよりお姉ちゃんと付き合ってから
物分りはすごい良くなって助かる〜!
「はい、これ!」と鍵を差し出すと、ヒラヒラ手を振りながら戻っていく莉子ちゃん。
木下 ひより
木下 ひより
いいの?あんなあっさり
デートに行かせちゃって
清瀬 律
清瀬 律
全然良くない!!けど、
俺もひよりに会いたいって思うし、
一緒にいるとこのまま帰したくないってなる
気持ちも分かるようになったから
少し照れたような律くんに、こっちまで恥ずかしくなる。
清瀬 律
清瀬 律
あー!!でも心配だから、
やっぱ放課後、後つけようかな?
木下 ひより
木下 ひより
それは絶対ダメ!
だけどやっぱり、律くんはウルトラシスコンに変わりはないみたい。
クラスメイト
可愛い妹がいるのに
可愛い彼女まで作るとか贅沢じゃね?
クラスメイト
どっちか譲ってほしいよなあ
教室を出ていく莉子ちゃんを見ていたらしいクラスメイトがヒソヒソと噂するのが聞こえて、またヒヤリとする。

こんなの、律くんの耳に入ったら……
清瀬 律
清瀬 律
……先に言っとくけど
絶対、手ぇ出すなよ?
木下 ひより
木下 ひより
あ、やっぱ聞こえてた……
クラスメイト
っ、!
出さない出さない!
クラスメイト
じょ、冗談に決まってんだろ〜
律くんに聞かれてバツが悪そうにするクラスメイトたち。
木下 ひより
木下 ひより
わっ、
清瀬 律
清瀬 律
これ、俺のだから
片手で私の肩を抱き寄せて、見せつけるように髪にキスを落とす。

かぁっと頬が熱を持って、口の中はカラカラ。
そんな私を見て満足げに笑った律くんに、私はもうされるがままだ。
清瀬 律
清瀬 律
俺が鈍いせいで今まで散々ひよりのこと待たせちゃったから、挽回させて
木下 ひより
木下 ひより
えっいやそんな、お気遣いなく!律くんにそんなことされたら心臓もたないし!
清瀬 律
清瀬 律
だーめ。……悪いけど、溺愛するよ?
木下 ひより
木下 ひより
で、溺愛……!?
だけど───。

イタズラに笑うシスコン男子律くんに恋を教えたのは私なんだって思ったら、ほんのちょっと優越感だったりして。











【E N D】

プリ小説オーディオドラマ