清瀬くんとのお試し期間が終わってから、すぐにコンビニでのバイトも辞めた。
……何だか感じ悪いかなぁとは思いつつも、清瀬くんのことを諦めるためにも、なるべく清瀬くんとの接点を断ちたい気持ちが大きかったから。
学校でも、なるべく清瀬くんを避けて過ごすようになった。
そんな私に気づいているだろう清瀬くんが、今朝になって『なんでバイト辞めたの?』なんて聞くから、『もともと、夏休みの間だけの予定だったから』と笑顔を作るのが精一杯だった。
私の恋は幕を閉じたけど、ココに今、新しい恋が花開くかもしれない。そう思ったら、なんだか少し心が晴れやかになった。
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律side
朝、『私、今日デートだから夜ご飯いらない』って、母さんに言ってるの聞いた時は味噌汁盛大に吹き出しそうになったけど。
……今までも、男子から人気があった莉子だけど、"彼氏"なんて作ったことなくて
なのに、ここに来て突然"デート"って。
相手は誰だ?デートってどこで何するんだ?帰りは何時だ?なんて心配になって、バイト中だってのに上の空。
これだから、シスコンって言われんだよなぁ。
『私、品出しするね〜!』
広瀬の言葉に、咄嗟にヒヨコの声を思い出す。
どん臭くて、見た目よりずっと要領が悪くて、だけど、どんな仕事にも誰より一生懸命で。
いつも笑ってた。
いるだけでその場が明るくなって、華やいだっけ。
だからクラスメイトにも莉子にも慕われて。
それに……。
寂しい。
それが、今の俺の素直な気持ちだと思う。
ヒヨコがいてくれた毎日が恋しい。
あの日々に戻りたい。
……だけど、もうヒヨコはいない。
この現実を受け止めるしかないんだよな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。