あなたは暗い部屋に押し込まれた。
その部屋には人が囚われていた。
声を掛けるが反応がない。目が虚ろだ。
しかし、なにか?呪文を唱えるようにブツブツと言っている。
私のグレイシアちゃんをかえして。わたしノグレイシアちゃんをかえして。わたしのグレイシアちゃんをかえして。グレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアかえして。かえして。かえして。かえして。かえして。かえして。
悲鳴が口から零れた。
まるで壊れたポケラジのように単語を繰り返している。
あなたはガードマンを睨む。ガードマンはそんなあなたを見下しながら言った。
スマホロトムを取り出しては映像をあなたに見せる。
その映像は、手術室のような台にインテレオンとエレズンが拘束されていた。
それを複数の白衣とマスクを身にまとった人物が取り囲んでいる。
まず体の細胞を採取する。
次にそれぞれに麻痺、やけど、毒といった状態異常への耐性がどれぐらいあるか、調べる。
とガードマンは丁寧に説明する。
スマホロトムを が映すのは、インテレオンとエレズンに取り付けられていく機械だった。
インテレオンとエレズンに電流が浴びせられる。
体力はいっきに減り瀕死になる。
そこに、また別の機械の管が伸びてきて……
あなたは映像を見て涙を流した。
インテレオンは、自分がブリーダーの師と仰ぐ人物から譲り受けたものだ。はじめてのポケモンだ。
そして、エレズンは、今、さっき誕生したばかりだ。
2つの、瀕死の体に注入されたのは毒だった。
その時、インテレオンが指先から高圧の水を噴射し、エレズンの拘束具を解いた。
画面の中で研究員は驚いていた。
瀕死のはずだ。それなのに…
いや、それは、あなたとの絆の証だった。
心配させまいと、耐えていたのだ。それを隠し、瀕死のフリをし今動いたのだ。
何故か、
答えは至極簡単だった。
あなたが誕生を喜んでいたからだ。
新たな仲間となりこれからあなたを守ってくれるからだ。
インテレオンは泣き虫なメッソンだった頃から知っている。
あなたは馬鹿である。
野生のポケモンが怖すぎて泣いていたら、ピッピ人形を大量に購入して傷薬を買うお金を失ったり、
自分たちより弱いくせに体を張って守ろうとしたり、
でも、インテレオンはそんな彼女が大好きだった。
インテレオンは自分に流された毒を気合いで治すとエレズンを抱え、マッハ3の力の水を指先から噴射し鋼鉄の扉に穴を開けると尻尾の横についている皮膜で風をつかみ飛んだ。
ガードマンは驚いていた。
こんなに耐久性のあるポケモンがいるだなんて。世界は広い。
インテレオンはこっちに来ようとしている。
スマホロトムの映像が砂嵐になったが、あなたには分かった。
一方で研究員はその、耐久性に知能に興味を抱いた。
その、耐久性をはがねタイプに移植すれば、頑丈な、ポケモンが作れる。
その知能を移植すれば、どんなに優れたポケモンが作れるだろうか。
インテレオンはあなたの考えの通り、部屋へやってきた。
体力を1残した状態で。
ガードマンの顔面に水鉄砲を食らわせるとすぐさま、あなたに駆け寄り、エレズンを託し、あなたの背中をハイドロポンプで押し出した。
言葉も出ないほどの水圧があなたを外へと押し流す。
あなたは呼吸が出来なくなり、倒れた。
たくさんの研究員が集まってくる。
顔に水鉄砲を食らったガードマンも、銀色のカイリキーを出している。
暴れた自分に注目が集まり、あなたが流されたのは二の次になっている。
インテレオンは膝をついた。
大丈夫。
自分と二人だった時より
今は仲間が沢山いる。
新しい新入りにも、お願いをした。
だから、もう、大丈夫。
その数時間後、
メタリックなピンク色に光り輝くメッソンが卵から還った。
その、30分後には虹色のメッソンが。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!