第10話

蛮勇の代償 後編
108
2019/12/10 16:36
あなたは暗い部屋に押し込まれた。
その部屋には人が囚われていた。

(なまえ)
あなた
あ、あの。大丈夫ですか
声を掛けるが反応がない。目が虚ろだ。
しかし、なにか?呪文を唱えるようにブツブツと言っている。

私のグレイシアちゃんをかえして。わたしノグレイシアちゃんをかえして。わたしのグレイシアちゃんをかえして。グレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアグレイシアかえして。かえして。かえして。かえして。かえして。かえして。
(なまえ)
あなた
ひっ!
悲鳴が口から零れた。
まるで壊れたポケラジのように単語を繰り返している。
モブ
モブ
そいつに話しかけても無駄だぞ。
(なまえ)
あなた
あなたは!さっきの!この人になにをしたの!警察のくせに!
あなたはガードマンを睨む。ガードマンはそんなあなたを見下しながら言った。
モブ
モブ
最初はね、潜入捜査だったさ。でも、あの人が言ったんだよ。私の力が必要だとね。
警察に通報しても無駄だよ。私が、いや、私だけじゃないな。たくさんいる。
モブ
モブ
時期、お前もそいつみたいになる。
ああ、連絡だ。思ったより早かったな。
スマホロトムを取り出しては映像をあなたに見せる。
その映像は、手術室のような台にインテレオンとエレズンが拘束されていた。
それを複数の白衣とマスクを身にまとった人物が取り囲んでいる。
(なまえ)
あなた
な、私のポケモンに何する気!!
モブ
モブ
なにって、サンプルの採取さ。
見たことないポケモンだったからな
(なまえ)
あなた
サンプル?
モブ
モブ
インテレオンは水タイプ、
エレズンは毒とでんきだね。
まず体の細胞を採取する。
次にそれぞれに麻痺、やけど、毒といった状態異常への耐性がどれぐらいあるか、調べる。


とガードマンは丁寧に説明する。
(なまえ)
あなた
ポケモンはおもちゃじゃないのよ?いますかなぐやめなさい!
スマホロトムを が映すのは、インテレオンとエレズンに取り付けられていく機械だった。
(なまえ)
あなた
お願いだからやめてっ、わた、私が代わりに受けるから
モブ
モブ
人間じゃ、意味が無いんだ。済まないね。
インテレオンとエレズンに電流が浴びせられる。
体力はいっきに減り瀕死になる。
そこに、また別の機械の管が伸びてきて……
(なまえ)
あなた
お願いします。なんでも、しますから。
あなたは映像を見て涙を流した。
インテレオンは、自分がブリーダーの師と仰ぐ人物から譲り受けたものだ。はじめてのポケモンだ。
そして、エレズンは、今、さっき誕生したばかりだ。
(なまえ)
あなた
やめて。これ以上やったら、死んじゃう!!
モブ
モブ
大丈夫。君のポケモンは新たに生まれ変わる可能性があるかもしれないんだ。
図鑑に載るぐらいに、ね。
2つの、瀕死の体に注入されたのは毒だった。
その時、インテレオンが指先から高圧の水を噴射し、エレズンの拘束具を解いた。
画面の中で研究員は驚いていた。
瀕死のはずだ。それなのに…
いや、それは、あなたとの絆の証だった。
心配させまいと、耐えていたのだ。それを隠し、瀕死のフリをし今動いたのだ。

何故か、
答えは至極簡単だった。
あなたが誕生を喜んでいたからだ。
新たな仲間となりこれからあなたを守ってくれるからだ。

インテレオンは泣き虫なメッソンだった頃から知っている。
あなたは馬鹿である。
野生のポケモンが怖すぎて泣いていたら、ピッピ人形を大量に購入して傷薬を買うお金を失ったり、

自分たちより弱いくせに体を張って守ろうとしたり、
でも、インテレオンはそんな彼女が大好きだった。

インテレオンは自分に流された毒を気合いで治すとエレズンを抱え、マッハ3の力の水を指先から噴射し鋼鉄の扉に穴を開けると尻尾の横についている皮膜で風をつかみ飛んだ。






モブ
モブ
なんだこのポケモンは!
ガードマンは驚いていた。
こんなに耐久性のあるポケモンがいるだなんて。世界は広い。
(なまえ)
あなた
インテレオン、まさか…ダメ!そのまま逃げて!
インテレオンはこっちに来ようとしている。
スマホロトムの映像が砂嵐になったが、あなたには分かった。
一方で研究員はその、耐久性に知能に興味を抱いた。
その、耐久性をはがねタイプに移植すれば、頑丈な、ポケモンが作れる。
その知能を移植すれば、どんなに優れたポケモンが作れるだろうか。
インテレオンはあなたの考えの通り、部屋へやってきた。
体力を1残した状態で。

モブ
モブ
なんなんだこのポケモ……あぶっ!
ガードマンの顔面に水鉄砲を食らわせるとすぐさま、あなたに駆け寄り、エレズンを託し、あなたの背中をハイドロポンプで押し出した。
(なまえ)
あなた
ま、待って、インテレオン!ぷはっ、インテ、
言葉も出ないほどの水圧があなたを外へと押し流す。
あなたは呼吸が出来なくなり、倒れた。
たくさんの研究員が集まってくる。
顔に水鉄砲を食らったガードマンも、銀色のカイリキーを出している。
暴れた自分に注目が集まり、あなたが流されたのは二の次になっている。

インテレオンは膝をついた。

大丈夫。
自分と二人だった時より
今は仲間が沢山いる。

新しい新入りにも、お願いをした。
だから、もう、大丈夫。



その数時間後、
メタリックなピンク色に光り輝くメッソンが卵から還った。
その、30分後には虹色のメッソンが。

???
新しいポケモンならきっと出来ると思ったのに、ダメね。
でも、新個体だし、資金は困らなそうね。
ふふっ。新しいサンプルまだまだ研究のしがいがありそうだわ

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