部屋に入ってきたのは父方の祖母で、いきなり入ってくるなり俺と父に交互に泣きついた。
祖母が落ち着いた後、2人で部屋を出ると祖母は
祖母「優人、辛かったね...。」
と語りかけてきた。
もう、辛いなんて思わない。俺はあの日から1度も泣いていない。
泣いたら余計惨めになる、情けなくなる、そう思って来たから絶対に辛いなんて言葉も思わないし考えて来なかった。
祖母に話しかけられても黙っていると祖母には続けてこう言った。
祖母「優人、ウチに来なさい。和彦(父)が家に居ることは少なかったかもしれん。優人は元々一人暮らしみたいなもんやったかもしれんけど、こんな時に一人でいたらダメや。おばあちゃんの所に来な、ね?」
確かに、母が死んだ後も父の仕事量は変わらず、家に居ることは少なかったためほとんど一人暮らしのような生活を送って来てはいた。
だが、突然家に来いと言われても、はいそうします、とは言えないものだ。
でも完全な一人暮らしとなると、やはり以前とは違ってくる。
学費やら生活費やらを稼いで養ってくれる人はもう誰もいない。
俺「おばあちゃん、ちょっと考えさせて。」
俺にはこう答えることしか出来なかった。
祖母「ゆっくり考えんさい。おばあちゃん待っとるから。」
俺「うん。色々とじっくり考えるから。」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。