呼び出されてたどり着いたのは、職員室だった。
わざわざ授業を抜けさせる程の大事なのか、そう思った。
だが、いくら考えても俺は職員室に呼び出されるような事をしでかした心当たりがなかった。
俺なんかしたっけ、と考えたが何も思い浮かばない。俺は様々なパターンを想像した。
怒られるようなことは?いや逆に褒められるようなことは?いや特に悪いことも良いことも
なんもしてねぇ。
実際、俺は何もしてこなかった。
クラスや学校の役員になる訳でも、部活動で活躍する訳でも、かといって校外で活動する訳でもなくて、本当に何もしてこなかった。
ただ空気のように過ごしてきた。
学校生活で目立つような事は全くしていないから、きっと卒業して同窓会なんかする頃には、クラスメイトも先生も誰も俺の事なんて覚えていないだろう、そんな自信があるくらいなんの取り柄もない、どこにでもいるような平凡な人間だった。
そんな俺がどうして呼び出されているのか。
何があったのか。
そんなことを考えていると担任は
後ろを着いてきた俺の方を振り返り、俺の二の腕をがっしりと掴んだ。
担任は、俺に伝えにくい様子で、まるで呼吸を止めて苦しそうな、話せば何かが起こるから躊躇しているような、「ドラマを見ていて目が離せない」とでも言うくらいにじっと俺を見つめてくる。
そんな時間がとてつもなく長く感じた。
そして俺の二の腕を掴む力がギュッと強くなった。
そうしてやっと口を開き、息を吸い込んだ。
その一連の動きが俺にも分かるくらいゆっくりと。
「宮本、落ち着いて聞きなさい。君のお父さんが亡くなった。」────────────
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。