爆豪が何かを大声で叫んでいるようだが、天鬼達には音声は聞こえない。
オールマイトにだけ、聞こえているのだろう。イヤホンをしている。
「爆豪が一方的に緑谷に突っかかってる感じだよな、多分。」
「昨日とか見てても、あの2人仲悪そうだったしよ…。」
「音声ねぇと何言ってるか分かんねぇな…!爆豪のやつ何話してるんだ?」
「定点カメラで音声ないと分かんねぇよな…。」
それぞれ順に瀬呂・切島・上鳴が発言する。
3人の言葉に全員が頷くが、何故音声がないのか、天鬼にも分からない。
『(爆豪君は個性持ちの中でも強さに特化した個性なんだろう。)』
先程の爆煙は、緑谷に不意打ちを仕掛けた際に思いっきり使った個性のせいだと分かる。
だが、爆豪はいささか冷静さを失っているようにも見える。
天鬼には、2人の関係性は分からない。
緑谷が「かっちゃん」と呼ぶくらいなら、相当長い付き合いなのだろうが、それなら何故、爆豪は緑谷にそれほどまで突っかかる?
爆豪は強い。推薦入学者にも負けないほどの実力はある。
天鬼には、推薦入学者というものの基準が歪んで見えた。
このクラスの推薦入学者は、轟と八百万。
どちらもヒーローにうってつけの"強個性"だ。
さらに、轟はあのNo.2ヒーロー・エンデヴァーの息子。
雄英が見逃すわけが無い。
そのことを踏まえ、推薦入学者とは、家柄と個性がヒーロー向きかどうかで決まるはずだ。
確かな実力があるといえばあるのだ。
だがしかし、強い個性だからといって決して自惚れては行けない。
いつ、どこからか、危険が迫っているのだ。
「小型無線でコンビと話しているのさ!持ち物は建物の見取り図、そしてこの確保テープ!」
「コレを相手に巻き付けた時点で、捕らえた証明になる!」
緑谷はオールマイトが説明してくれた"確保テープ"片手に爆豪と対峙しているようだ。
あらかじめ説明されていたことを話そう。
ここの建物には、"核"(ハリボテ)がある。
ヒーローは核の場所を知らない。
制限時間は15分で、ヴィランコンビどちらにも、確保テープを巻き付ける、またはヒーローコンビが核に触れられればヒーローチームの勝ちとなる。
作戦勝ちするようなもんだ。
オールマイトが何か言っていたが、そこで爆豪が緑谷に攻撃を仕掛けた。
この狭い通路では、爆豪の個性が圧倒的に有利。
緑谷がどんな行動をとるのか、全員がモニターに釘付けだった。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。