1回戦目から建物が使えなくなってしまったので、他の建物に移動することになった。
緑谷はリカバリーガールのところに運ばれたらしい。
それから目立った喧嘩や戦闘も無く、気付けば天鬼が戦う番になっていた。
『(すぐに終わらせよう。)』
ヒーローになるための授業など、天鬼には無意味なものだ。
鬼殺隊もヒーローも、どちらも人を助けるものだ。
だが、その重さが違う。
一人一人の覚悟も、過去の悲しさも。
鬼殺隊は全てが重く、大きい。
『──よし。』
天鬼が準備を終わった頃には、モニタールームの誰もが、天鬼に釘付けだった。
「START!!」
オールマイトの合図が聞こえ、ヒーロー側の天鬼は姿を消す。
「!?!?」
これに、モニタールームの全員が驚くが、鬼殺隊では常識だ。
『(先程の戦闘を見る限り、轟は氷の個性、障子は詮索が得意となる個性だ。私が核のある部屋に入った瞬間、氷壁で塞ぐか、私を氷で閉じ込めるつもりだろう。)』
轟も障子も、冷静沈着で、あまり騒ぐことはしない。
常に周りを見て警戒している。
『……甘いな。師範程じゃない。』
天鬼は気配を消し、轟の後ろ側へと高速で移動した。
「──!?っくそ!」
バリバリバリ!!
天鬼のスピードにはついていけなかったものの、咄嗟の判断で、天鬼に氷をぶつけた。
「(…こんなもんか?)」
トンッ
『──はい、終わりね。』
「……は?」
氷壁で動けないはずの天鬼が、何故か核に触っていた。
「確かに俺の個性で動けなくなったはずじゃ……。」
轟は開いた口が塞がらないとばかりに呆然としている。
『ちゃんと確認しなきゃ。万が一ヴィランが避けていたら殺されてるよ?』
『私は間一髪で避けて、気配を消した。それだけ。』
「…お前、本当にナニモンだ…?」
『ん〜……ヒーロー志望ではないかなぁ。多分いつか分かるよ。』
天鬼はそう言って、笑いながら出ていった。
「ヒーロー志望じゃないなら、なんで雄英に来てんだよ…。」
天鬼はそんな声が聞こえて、小さく言った。
『私"達"と君らでは、背負っているものの重さが違うんだよ。』
その天鬼の声は誰にも聞こえてはいなかったが、その時の天鬼のオーラは、モニター越しですら圧倒された。
いつか分かる、と天鬼は言ったが、確かに脅威は迫ってきているのであった。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。