第2話

第1話
48
2019/06/17 13:03
20XX年8月31日
俺は毎年この日だけは家から出ないと決めている。そう、10年前のあの日から...
------10年前------
小学生の裏には小さな、でも立派な山があった。そして、そんな山の山道を勢いよく踏む音がする、前に2人、その後ろにかなり間をあけて2人。前を行く2人は山道をこれでもかと全力で走っている。後ろの2人はおおかた前の2人に置いていかれたのだろう。てくてくとゆっくり歩いている。
秋人
秋人
みんなぁ〜、はやくー!!
冬華
冬華
まって、あっきー!
はるくんと、なっちゃんがまだ...
前の2人がやっと止まる。開いていくばかりの4人の距離が近ずき、2人が追いついたのは、2人が止まってから5分くらいたってからだった。
夏希
夏希
ちょっとー!二人ともはやすぎー!!
春斗
春斗
てか、急に走り出すなよ
見失わないよう最後には結局走っていた夏希と春斗は、ぜえぜえと息を切らしている。
秋人
秋人
だって!今日で夏休みがおわるんだよ?!
人生最初の夏休みが今日でおわるんだよ?!
のびりしてたらもったいないじゃん!
4人は幼稚園のときからの幼なじみで今年の4月にそろって小学校の門をくぐり、クラス分けも見事に4人同じクラスという最高の学校生活のスタートをきった。そして、8月31日になり初めて体験した夏休みも今日で終わる。
春斗
春斗
もったいないって...
時間はいっぱいあるじゃんよ
秋人
秋人
今日はいつもより早く帰ってきなさいってかぁちゃんが...
冬華
冬華
ん?どうして?
夏希
夏希
あっきーのことだからどうせ夏休みの宿題が終わってないのよ
春斗
春斗
だろうね、きっと計算ドリルとか1ページもやってないんじゃない?
秋人
秋人
な、なんで2人ともわかるんだよぉー!
春斗
春斗
僕は昨日、あっきーがあっきーのお母さんに怒られてる声が聞こえた
夏希
夏希
実は、私も聞こえてて...
秋人
秋人
そ、そんなぁ〜
秋人は目に涙を浮かべ、それを見て3人はクスクスと笑っていた。
春斗
春斗
そうとなれば、さっそく遊ぼーよ!
秋人
秋人
そ、そうだ!
今は宿題のことなんか忘れて遊びまくるんだー!
夏希
夏希
まずはなにする?
冬華
冬華
私、かくれんぼしたい!
秋人
秋人
いいね!じゃあまずはかくれんぼ!!
春斗
春斗
じゃあ、鬼は僕がやるよ!
夏希
夏希
えぇー、はるが鬼やるとすぐに見つかるのよねー
冬華
冬華
ふふっ、それはなっちゃんがわかりやすいとこに隠れるからだよ
今日は一緒に隠れよ?
夏希
夏希
ホントに?!
ゆきちゃんと一緒ならすぐには見つからないね!
秋人
秋人
ゆっきーはかくれんぼ強いもんね
春斗
春斗
じゃあ、10かぞえるからみんな隠れてね!
いーち、にー、さーん、しー...
こうして遊んでいると、気付けば日は西の空に沈みかかっていた。といっても8月ともなれば4時過ぎでもまだ明るかった。
春斗
春斗
そういや、あっきーもうそろ帰る準備した方がいいんじゃないか?
秋人
秋人
やべ!そうだった!!
5時の鐘がなる前に帰らないと!
誰か時計持ってない?
冬華
冬華
私持ってるよ!
そう言って、おもむろに左手首に付けた腕時計をみる冬華
冬華
冬華
えーっとね、今は4時15分だよ!
秋人
秋人
4時15分?!
4時半には帰らないと怒られる!!
夏希
夏希
急がないとじゃん!
裏山から4人の家がある住宅街までは10分弱で着くのだが途中で大きな交差点を渡る必要がある。そして、急いで渡ると事故にも繋がるということで、4人とも時間に余裕を持って帰ってきなさいと親から言われている。
冬華
冬華
とりあえず、今日はこの辺で解散にしましょう
春斗
春斗
そうだね、帰る時も4人で帰っておいでって言われてるしね
こうして足早に帰り支度をすませ、裏山をおりた。そして、学校の前を過ぎると大通りの大きな交差点にでた。
信号は赤だったので4人とも横断歩道の前で止まることを余儀なくされた。
秋人
秋人
俺、のど乾いたからちょっと水飲んでくる!
そういって、交差点近くの公園で秋人が水を飲んでいると信号が青に変わった。
冬華
冬華
あっきー!先に信号渡って待ってるからねー!!
そう公園の秋人に向かって叫ぶと、秋人は了解というサインのため右の親指だけを立てて3人に知らせるのであった。
そのサインを見ると3人は横断歩道を渡り始めた。少し遅れて秋人も渡ろうとする。秋人は3人との距離を縮めるため小走りで横断歩道に差し掛かった。
その瞬間
ガチャーン!!という大きな音と共に秋人は車とぶつかった。その衝撃で秋人は大きく飛ばされた。
秋人は信号が青の時に渡っているので、車側の信号無視であることは明白だった。車はその後ガードレールに突っ込み動きを止めた。
春斗
春斗
あっきー!!
夏希
夏希
キャーーー!!
冬華は口を押さえ呆然としている。
冬華
冬華
...............
しばらくすると、秋人の動かない体から赤黒い液体が少しずつ、溢れてきた。
そうとう大きな音だったのだろう、公園に子供と一緒に遊びに来ていた大人がすぐに気付き、通報してくれたおかげで、救急車とパトカーはものの数分で来た。
3人は、目の前で起こったことに対して脳の処理が追いつかず、ただ呆然とそこに立つことしか出来なかった。しばらくして、サイレンの音を聞き4人の親達もかけつけた。
春斗の母
春斗の母
春斗、何があったの!?
その言葉でようやく我に帰ると
春斗
春斗
母さん、あっきーがあっきーが...
その日は親に連れられ、3人とも家に帰った。
その後、病院で懸命な治療が行われたが秋人の命が戻ることはなかった...
後から聞いたが事故当時、秋人とぶつかった車のドライバーは飲酒運転をしていたという。
----------------------------
この事故をきっかけに4人の友情という時計の針はピタリと止まってしまった。
ピンポーン
家のインターホンが鳴った。相手はわかっていたが俺がインターホンをとることはなかった。すると、見かねた母さんがインターホンをとった。
春斗の母
春斗の母
はい、風見です
あ、夏希ちゃん!
ごめんなさいね、今年も春斗は...
俺は逃げるように2階の自室に篭った。
春斗
春斗
もう10年か...

プリ小説オーディオドラマ