第2話

1 [真那side]
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2018/11/03 10:32
秋、かあ。
秋になったはずなのになあ、
宮元真那
暑すぎる…
運転手さん
真那ちゃん、冷房、もっと温度下げる?
宮元真那
あ、ありがとうございます…
新学期になってから一週間、
まだまだ異常な暑さが続きそうな空を窓越しに見て、ため息をついた。
宮元真那
はあ…
私は毎朝このバスを使って学校へ通っている。
いつも降りているところまで7箇所のバス停があるが、誰も乗ってこないし、乗っているのも自分一人だけだ。
それもそのはず、こんな片田舎の高校に、片道バスで20分くらいの近さに住んでいる生徒なんて私くらいしかいないからだ。
他の皆はもっと遠くから来ていて、地元に住んでいた子は皆都会の高校へ行ってしまった。
何故ならここ周辺には商業高校や農学校、家政系の学校くらいしかないからだ。
私は実家が農家だから、跡を継ぐために農学校へ入学したのだ。
でも、特にイケメンがいるわけでも、有名人やお金持ちがいるわけでもない。
それに田舎だから何かすごい出会いがあるわけでもない。
ただ一日中、寝て起きて、ご飯を食べて学校へ行き、友達と喋って、帰ってからも家の手伝いや勉強をして、ちょっとスマホを触って、お風呂に入って寝る。
そんな具合だ。
運転手さん
はい、真那ちゃん着いたよ
宮元真那
ありがとうございました、また帰りもよろしくお願いしますね、
運転手さん
ああ、勿論だよ、じゃあ気を付けてな
宮元真那
はい、
運転手さんにこう言ってもらえるとなんだか今日一日は安全に過ごせるような気がして好きだ。



         * * *


平田紗綾
まーなーちゃんっ!!
宮元真那
わっ!…びっくりした
平田紗綾
おはよう!
宮元真那
おはよう、なんかいいことあった?
平田紗綾
うふふ…さすが真那だね
宮元真那
えー、なになに、気になるなあ~
平田紗綾
実はあ…明日から転校生が来るらしいんだけど…
宮元真那
うん、
平田紗綾
それがね、イケメンなんだって!!
宮元真那
ああ、なんだ、まあ紗綾は面食いだもんね、うんうん
平田紗綾
なによその反応~
宮元真那
彼氏でもできたのかと思って
平田紗綾
やだなあ~、私は今杉本先輩一本なんだから!
宮元真那
でもイケメン転校生は気になるんでしょ?
平田紗綾
まあ…少しだけぇ?
宮元真那
もう、紗綾ったら…
平田紗綾
真那は好きな人いないの?
宮元真那
うーん、強いて言うなら池上先生かな…
平田紗綾
えー、池ちゃん⁉真那そういうのがタイプなんだ!
宮元真那
い、いや、別に好きな訳じゃないからね!強いて言うならだから!
平田紗綾
じゃあ真那はどんな人がいいの?
宮元真那
えーっと、そうだな、
平田紗綾
なになにー?
宮元真那
例えば落としたハンカチをさっと拾ってくれて、めっちゃ爽やかな笑顔で「落としましたよ」って言ってくれる人…かな…
平田紗綾
……
宮元真那
や、やだ、照れるからなんか言ってよ!!
平田紗綾
あ、ごめん、真那ってさ、すごいロマンチストだなあって思って
宮元真那
そ、そうなんだ
平田紗綾
うん、可愛い
宮元真那
え、あ、ああ
平田紗綾
あ、授業始まっちゃう!じゃあまた!
宮元真那
あ、うん、またね!
宮元真那
……
私って…そんなにロマンチストなんだなあ…




         * * *


夕方、部活終わりの学校
沈んで行く太陽と、子供たちと一緒に帰っていくように流れる雲
ちょっと涼しい風と一緒にどこかの家の晩ご飯の匂いがする
空の色は1秒後には違う色になる
私の心も…
平田紗綾
まーなちゃーん、何考えてたのー?
宮元真那
わあっ!…ったく、紗綾ったら!
平田紗綾
えへへ、ごめんって
宮元真那
もう、急に声かけないでよ?
平田紗綾
それより何考えてたの?転校生のこと?それともー?
宮元真那
別になんでもないよ、じゃ、行こっか
平田紗綾
うん!帰ろー
紗綾とは駅で別れる。
その後、ちょっと近くで暇潰しをして、それからバスに乗って帰る。
今日もバスの中には私一人だけ。
今日はバスに乗る時に運転手さんにお菓子をもらった。
帰ったらありがたくいただくこととしよう。
バスのエンジンがかかり、もうすぐ出発、その時だった。



男の子が乗って来た。



私と同年代くらいで、背の高いスラッとしている男の子。
桐島優斗
早川には、停まりますか?
運転手さん
ああ、とまるよ、そこの子と一緒だねえ、
桐島優斗
そうですか、ありがとうございます
その子が振り向いた時、一瞬だけ、目が合った。
一瞬目が合っただけなのに、
私はすぐに理解した。





ああ、これが、





これが一目惚れなんだ。





恋って、





こうやって始まるんだな、





って。



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