第5話

4 [優斗side]
110
2018/11/03 10:37



あの日、両親が死んだ。


九月の、まだ暑かったあの日。
父親と、母親が、死んだ。


僕は一人ぼっちになった。


それから親戚の家を転々として、
あの日から6年たった今、遠縁の真田さんの家に住まわせてもらうことになった。


夏休み前まで東京の高校に通っていて、
友達もたくさんいたし、彼女だっていたし、それなりに楽しくやっていた。


でも色々な都合で
また違うどこかへ行かなければならなくなった。


こんなことは慣れている。


別に転校が寂しいわけでもないし、友達もどこでだって作れる。
それほど好きでもなかった彼女とは別れたし、ここでもまた誰かしら新しい彼女ができると思っていた。


でも違った。


ここで、


この場所で、


僕は運命の人に出逢ってしまったのかもしれない。




それはあの日_____



僕の両親が



天国そらへいってしまったあの日だ。



         * * *


桐島優斗
えっと…
平田紗綾
どーしたんですか?
桐島優斗
あ、ここに行きたいんですけど…
平田紗綾
それなら二番乗り場ですよ!早川で降りると近いです!
桐島優斗
ああ、ありがとうございます
高校生かな、
…まあ、アリかな?
あ、やべ、バス発車しちゃう
ふぅ…ギリギリセーフ、っと
桐島優斗
あの…
桐島優斗
早川には、停まりますか?
運転手さん
ああ、とまるよ、そこの子と一緒だねえ
桐島優斗
そうですか、ありがとうございます
そこの子って、誰かいるのかな
そう思って振り向いた。
一瞬だけ、目が合った。
一瞬目が合っただけなのに、
僕はすぐに理解した。





ああ、これが、





これが一目惚れなんだ。





恋って、





こうやって始まるんだな、





って。





__________________________________

プリ小説オーディオドラマ