あの日、両親が死んだ。
九月の、まだ暑かったあの日。
父親と、母親が、死んだ。
僕は一人ぼっちになった。
それから親戚の家を転々として、
あの日から6年たった今、遠縁の真田さんの家に住まわせてもらうことになった。
夏休み前まで東京の高校に通っていて、
友達もたくさんいたし、彼女だっていたし、それなりに楽しくやっていた。
でも色々な都合で
また違うどこかへ行かなければならなくなった。
こんなことは慣れている。
別に転校が寂しいわけでもないし、友達もどこでだって作れる。
それほど好きでもなかった彼女とは別れたし、ここでもまた誰かしら新しい彼女ができると思っていた。
でも違った。
ここで、
この場所で、
僕は運命の人に出逢ってしまったのかもしれない。
それはあの日_____
僕の両親が
天国へいってしまったあの日だ。
* * *
高校生かな、
…まあ、アリかな?
あ、やべ、バス発車しちゃう
…
ふぅ…ギリギリセーフ、っと
そこの子って、誰かいるのかな
そう思って振り向いた。
一瞬だけ、目が合った。
一瞬目が合っただけなのに、
僕はすぐに理解した。
ああ、これが、
これが一目惚れなんだ。
恋って、
こうやって始まるんだな、
って。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!