第3話

2 [真那side]
127
2018/10/29 10:25
次の日の朝、その子が例の転校生だとわかった。
運転手さん
おはよう、真那ちゃん
宮元真那
おはようございま…
私より一歩早く乗っていた転校生は、私の特等席に座っていた。
左側の、後ろから二番目の座席。
仕方ないので、私はその後ろの、一番長い席の右端に座ってその子を観察することにした。
私は、そのサラサラの黒髪にずっと見惚れていた。
運転手さん
真那ちゃん着いたよ、あ、今日からはヒロト君もだね、
桐島優斗
あ、ありがとうございます
宮元真那
……
運転手さん
真那ちゃん?
宮元真那
ああ、すみません、ありがとうございます
あの子、ヒロト君っていうんだ…
私はいつものように紗綾との待ち合わせ場所へ行こうとした。
しかし、いつも私より先にいるはずの紗綾はいなかった。
その時、ヒロト君、に声をかけられた。
桐島優斗
あ、あの、学校まで案内してくれませんか?
宮元真那
え、
桐島優斗
ああ、いきなりごめんなさい、僕は桐島優斗です、転校してきたので道がわからなくて…
☆☆学校の生徒さんですよね?
宮元真那
えっ、あ、は、はい、そうですっ!
桐島優斗
それで、えっと…いいですか?
宮元真那
い、あ、だ、大丈夫です!こっちです!行きましょう!!
道中は静かだった。
歩いて五分の距離だけど、こういうときになにか話せたらなって思う。
あと、コミュ障を恨む。



         * * *


ヒロト君は私と同じクラスになった。
本当は新学期が始まったその日から来るはずだったのだが家の都合で今日になったらしい。
池上先生
じゃあ、宮元の隣な、宮元、仲良くしてやれよ?
宮元真那
え、私の隣ですか⁉
池上先生
なんだ、嫌なのか?
宮元真那
い、いえ、とんでもないです!
池上先生
じゃあいいな、なんか校内の案内とか色々してやってくれ
宮元真那
は、はあ…
桐島優斗
あの、よろしく、えっと…
宮元真那
宮元真那…です
桐島優斗
宮元さん、よろしく
宮元真那
うん…よろしく、き、桐島君…
なんとなく、名前じゃなくて苗字にした。
そのうち名前で呼び合えたらいいなー、なんて。



         * * *


平田紗綾
…なるほど、池ちゃんに頼まれたから転校生君に学校案内をしなければいけない、しかし真那はコミュ障である…そこでこの私、平田紗綾の出番って訳ね!
宮元真那
ごめんね、せっかく今日放課後カラオケいく予定だったのに付き合わせちゃって…
平田紗綾
いいのよ、可愛い真那ちゃんのためだもんねー!
桐島優斗
あの、宮元さん、この人は…
宮元真那
あっ、えっと…
平田紗綾
真那の親友の平田紗綾です!紗綾って呼んでくれたら嬉し…
桐島優斗
平田さん…よろしく
平田紗綾
あ…
宮元真那
じ、じゃあいこうか
今回は朝より賑やかだった。
紗綾は誰とでも話せてちょっと羨ましい。
でも、私より先に桐島君と仲良くなっちゃうのはちょっと…
うーん…
なんだろう…この感じ…
平田紗綾
…な、
嫌…っていうか、でも、ねえ、
平田紗綾
…まな、…見て、…って、
うーん…
平田紗綾
真那危なっ…
桐島優斗
宮元さん!!!
ドンッ
宮元真那
…っ
平田紗綾
真那、桐島君、大丈夫?
桐島優斗
…ってて、よかった、宮元さん無事で
宮元真那
えっ…と、
なんか、近い…桐島君いい匂いがする…
って何考えてんだ私!
状況を整理すると…
工事中の中庭の近くを通ってて…上から何かが落ちてきて…そこを桐島君に助けてもらって…それで私は今桐島君の腕のなか…?
宮元真那
あ、えと、桐島君…////
桐島優斗
ああっ、ご、ごめん、
平田紗綾
ふたりとも無事でよかった…どうしたの?顔真っ赤だよ?
紗綾は私と桐島君、どっちに向かって言ったのかわからなかった。
だって、ふたりとも顔が真っ赤だったから。



         * * *


桐島優斗
あ、あのさ、さっきはごめん
宮元真那
あ、いや、こちらこそ…助けてくれて…あ、ありがと…
桐島優斗
宮元真那
桐島優斗
いつも、7:52のバス乗ってるの?
宮元真那
…うん
桐島優斗
明日も、明後日も、毎日…一緒に行ってもらってもいいかな…?
宮元真那
え…
正直、びっくりしたけど嬉しかった。
好きな人と、毎朝一緒なんだな、二人きりなんだな、って。
でも二人きりなのを意識しちゃうとちょっと恥ずかしいな…
運転手さん
はい、早川着いたよ、お疲れさん!また明日ね!
宮元真那
あ、ありがとうございました
桐島優斗
ありがとうございました



         * * *


その日の夜、紗綾からラインが来た。
平田紗綾
真那、この写真あげるよ😏
平田紗綾
タイトル:桐島君と真那の抱擁❤
…紗綾め…ぬかりのないやつめ…
平田紗綾
真那ってさ、桐島君のこと好きでしょ?
宮元真那
えっ、なんでそんなこと
平田紗綾
見ればわかる(*-ω-)
宮元真那
はあ…
平田紗綾
好きって言っちゃえば~?
宮元真那
そ、そんな、まだ早いって…//
平田紗綾
でもさ、私と話すときの桐島君はめちゃクールなのに真那と話すときは色んな表情するんだよね~
平田紗綾
あんま笑わないけど(´-ω-`)
宮元真那
そうかな…
平田紗綾
そうだよ!紗綾も応援するから頑張って👊😆🎵
宮元真那
ええ…
最後の一言に既読がついたとき、桐島君からラインが来た。
桐島優斗
おやすみ、明日もよろしく
その一瞬で体温が少し上がるのを感じた。
緊張して文章が打てなかったので、とりあえず「おやすみ」と言っている可愛いくまのスタンプを送っておいた。




__________________________________

プリ小説オーディオドラマ