驚いた。
訳ではないけど、
それよりも
親近感…というか、なんというか…
同じなんだな、って
思ったりして。
その後二人は少しの間、宮元さんの顔を見ていた。
なんだか今にも目を覚ましそうな気がして、
今にもいつものように「おはよう」って言ってくれそうな、
そんな気がして、
ちょっと希望がみえたような、そんな気がした。
気がしただけだった。
すると突然平田さんが顔を上げて、
と、大声で言った。
そうして病室を出ていった。
窓から見えた夕陽はとても綺麗だった。
あと帰り際、宮元さんの
っていう声が聞こえた気がした。
病院を出る前、急いでこっちへ向かう看護師さんやお医者さんとすれ違った。
でも僕らの気分は晴れ晴れしていたので、その足音が宮元さんの病室へ向かっているとも思わず、そのまま病院をあとにした。
病院からはバスで帰る。
一旦駅へ行って、それからあのおじいさんの運転するバスで帰る。
今日もバスのあの席に、
僕の特等席に座る。
左側の
後ろから二番目の座席。
乗客は他に誰もいない。
バスのエンジンの音と車内アナウンスの声、たまに運転手さんの声
それ以外は聞こえない、20分間だけの、僕たちの時間。
一番好きな瞬間。
既に日は落ち、少ない家々から夕食のいい匂いがする。
空には星空が広がっていた。
田舎だからよく見える。
そういえば宮元さんは星座が好きだったな…
よくこの辺で星座の話をしながら歩いたっけ
…また、一緒に帰れるよね?
一緒にバスに乗って、運転手さんと話して、星座の話をして…
今夜は火星が見えた。
火星は、凶兆を意味するらしい。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!