第8話

7 [優斗side]
96
2018/11/23 13:45
平田紗綾
私ね、真那が好きなんだ
桐島優斗
え…それって
平田紗綾
友情的な"好き"じゃなくて、恋愛的な"好き"
桐島優斗
平田紗綾
…やっぱりそうだよね、驚くよね、
驚いた。
訳ではないけど、
桐島優斗
いや、なんかさ
それよりも
親近感…というか、なんというか…
平田紗綾
私は本気。
同じなんだな、って
桐島優斗
…うん、僕もだよ
思ったりして。
平田紗綾
だからこの前あんなこと言ったの…今更だけど傷付けちゃってたらごめんね…
桐島優斗
いや、別に傷付いたりはしてないよ、ただ…
平田紗綾
ただ…?
桐島優斗
守れなかった自分が…悔しかった…
僕こそ、平田さんの気持ちも知らずに…
平田紗綾
そっか……………なんか、ありがと
桐島優斗
え?
平田紗綾
いや、なんか安心?した、というかさ、あんたの気持ちがきけて嬉しい?っていうか、そんな感じ
桐島優斗
そ…っか、
その後二人は少しの間、宮元さんの顔を見ていた。
なんだか今にも目を覚ましそうな気がして、
今にもいつものように「おはよう」って言ってくれそうな、
そんな気がして、
ちょっと希望がみえたような、そんな気がした。
気がしただけだった。
すると突然平田さんが顔を上げて、
平田紗綾
ねえ、二人でラブレター書こうよ!
と、大声で言った。
桐島優斗
ちょ、静かに、一応病院だから…
平田紗綾
あ、そうだった…
桐島優斗
で、ラブレターって?書いたことないんだけど
平田紗綾
んー、私もないな、
桐島優斗
ええ
平田紗綾
いや、なんか真那の顔見てたらさ、今にも目覚めそうな気がしたから書こう!って思って
桐島優斗
え…ちょっとわかんない
平田紗綾
じゃあさ、どっちの手紙が真那を感動させられるか、そんで、勝った方が一日真那と一緒に過ごせるってのは?
桐島優斗
いや、それ本人の許可取ってないけどいいの⁉てかラブレターどこいったの⁉
平田紗綾
まあ真那ならいい感じにいけるよきっと
桐島優斗
適当だなあ…
平田紗綾
じゃ、明日の放課後ここに持ってきて
桐島優斗
明日って土曜日じゃ…
平田紗綾
あ、そうだった!じゃあ明日の午後!
桐島優斗
わかった
平田紗綾
じゃあそろそろ日も暮れてきたし帰ろうかな
桐島優斗
そうだね、じゃあまた明日、平田さん、宮元さんも
平田紗綾
うん、じゃあね、桐島くん、真那
そうして病室を出ていった。
窓から見えた夕陽はとても綺麗だった。
あと帰り際、宮元さんの
宮元真那
またね
っていう声が聞こえた気がした。
病院を出る前、急いでこっちへ向かう看護師さんやお医者さんとすれ違った。
でも僕らの気分は晴れ晴れしていたので、その足音が宮元さんの病室へ向かっているとも思わず、そのまま病院をあとにした。















病院からはバスで帰る。
一旦駅へ行って、それからあのおじいさんの運転するバスで帰る。
運転手さん
優斗くん、真那ちゃんどうだった?
桐島優斗
まだ意識は戻ってないんですけど、なんかもうすぐ戻ってきてくれそうな気がしました!
運転手さん
そうかい、そうかい、そりゃあ良かった
桐島優斗
はい!
運転手さん
じゃあ、出発しよう…右良し、左良し、下良し、発車します!
今日もバスのあの席に、
僕の特等席に座る。
左側の
後ろから二番目の座席。
乗客は他に誰もいない。
バスのエンジンの音と車内アナウンスの声、たまに運転手さんの声
それ以外は聞こえない、20分間だけの、僕たちの時間。
一番好きな瞬間。
運転手さん
はい、着いたよ
桐島優斗
ありがとうございました
運転手さん
今晩は寒いからねえ、あったかくして寝るんだよ
桐島優斗
はい、ありがとうございます
既に日は落ち、少ない家々から夕食のいい匂いがする。
桐島優斗
おなかすいたなあ…
空には星空が広がっていた。
田舎だからよく見える。
そういえば宮元さんは星座が好きだったな…
よくこの辺で星座の話をしながら歩いたっけ
…また、一緒に帰れるよね?
一緒にバスに乗って、運転手さんと話して、星座の話をして…






















今夜は火星が見えた。












火星は、凶兆を意味するらしい。


































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