第73話

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2021/03/10 09:36
電話がなり、画面を見たソンジェが部屋から出ていった。

ハヌルは、拘束された手足を見る。

自分の置かれてる状況が普通ではない事はわかっているが、
今まで歩んできた人生が、普通ではなかった事で、
自嘲気味な笑いが出る。


ただ、窮地に立たされた時、自分の口から、
テヒョンの名前が出た事で
自分の気持ちに気づかされ、
ハヌル
ハヌル
僕にも人を愛する事なんて出来たんだ…
呟きいた言葉は、静かな空間にむなしく消えていく。
ハヌル
ハヌル
今さら気付きたく無かったな…
そう言ってみると胸が締め付けられる。

テヒョンを、好きだと自覚しても、
逃げ出す気力も、生きる気力もわかないのは、

どうやっても取り返しのつかない状況になっていることを知ってるからで、

さらされた自分の生い立ちを、
一生背負って行かなきゃいけない現実を目の前にすると、
自分の気持ちはテヒョンにとって、
マイナスでしかならない物だと自覚しているからだ。
ガチャっ

ソンジェが帰ってくる。
ソジュン(コンビニ店員)
ソジュン(コンビニ店員)
何で泣いてるの?
ソンジェに言われてから泣いていることに気付く。
ソジュン(コンビニ店員)
ソジュン(コンビニ店員)
いいね。
諦めてるより、絶望した自分に泣く姿。
ハヌル
ハヌル
僕は…もう…生きる場所はない…
ハルモニもハラボジも…
テヒョンさんも…
明るい空の下には僕は居られないんだ。
満足だろ?
もう…放っておいてよ…
ソジュン(コンビニ店員)
ソジュン(コンビニ店員)
いや。まだだ。
『俺見たいに、一人ぼっちになってもらわないと』
最後の言葉は声には出さなかった。

その時から、食事もろくに取らず、
わずかに飲み物を飲むだけ。

言葉も感情も、胸の奥にしまいこんだかの様に、
目にも色をうつすことがなくなっていった。

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