照れ臭そうにお礼を言うと、
リュックを掴んで、ゲストルームに戻って行った。
ーーーーハヌルsideーーーー
いつもハルモニが切ってくれていた髪。
数日前の自分が知らない世界。
ここは15階の高級マンション。
トタンと木と布で張り合わせて作られた家。
数キロの距離で世界が違う。
綺麗にカットされ、綺麗にファンデを塗られた顔。
それに似合わないジッパーの壊れたパーカーに、
使い込まれたリュック。
数分前に浮かれた自分が急に恥ずかしくなった。
あの男もあの男がが紹介してくれた仲間も、
さっきのマリアと呼ばれていた人も、
服も、身に付けてい物も良く、
場違いな自分がやたら滑稽に見えてきて、
自分がいるべき場所ではないことを突きつけれているようで、無性に九龍村が恋しくなった。
九龍村から抜け出せて嬉しい筈が、
かえって自分を惨めにさせるだけだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。