第8話

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2021/02/20 00:13
あの富裕層の男の家に行ってから一週間ほどたった頃、

数ヵ月に一回だけハラボジとハラモニの好きなお酒を、
あのコンビニに買いに行く。

そう、僕は油断したんだ…

久しぶりの雨に、まさか、

こんな日までチンピラ達が来ると思ってなかった。

お酒を買い、コンビニを出ると、
さっきよりも強い雨が降っていた。

ボロボロの傘を指し九龍村スラムに向かおうとしたその時…
・・・・
・・・・
んん!!!!
チンピラ達は後ろから僕の口を押さえ、
路地裏に引きずり込んだんだ。
一瞬、コンビニ店員と目があった気がしたが、
助けてはくれないだろう…
チンピラ
雨だからって来ないと思ったのかい?
くっくっくっ
ちょうど良い、こんなに雨が降ってりゃ、
泣き叫んでも聞こえねぇなぁ~
ドンっと強く押され、倒される。
抵抗してみたが、馬乗りになり、
数人がかりで押さえつけられ、
着ていたパーカーを無理やり首もとからひっぱられ、
抵抗する気が無くなった。
チンピラ
おい、ちっとは嫌がってくれねぇと、 面白くねぇだろうが…
と、顔を一発殴られると、口から鉄臭い味がする。

自分の未来に期待した事なんて無かったが、
無性にむなしく、悲しくなり、
・・・・
・・・・
ちくちょう!!!!
そう言って血の混じった唾をはきかけてやった。
チンピラ
てっめぇーーっ!
しばらく馬乗りのまま殴られて居ると、
警察官
お前ら!!何してる!!!!
声のする方を見ると警察官が立っている。
その後ろにはさっきのコンビニ店員。
通報してくれたんだなぁと、
どこか他人事だったが、チンピラが一目散に逃げるのを見て、僕も面倒事が嫌で逃げる。

どうせ九龍村スラムの人間の為に警察はまともに動かない。

しばらく走って逃げると、警察もチンピラも居なくなっていた。


夜のビルに写し出された自分にふと気づく。
全身雨に打たれ、
ジッパーの壊れたパーカー。
押し倒されて汚れた服。

なんともみすぼらしい小汚ない格好。
良く見ると顔にも痣が出来、頬と目が腫れている。

・・・・
・・・・
このパーカーお気に入りだったのに…
これじゃ…帰れないじゃん…
フードを被り顔を隠す。
ハラモニとハラボジには見せられない。
途方もなく歩いていると、雨に濡れて重たくなったパーカーに全身の体温が奪われ、意識が朦朧としてくる。
そんなとき、
テヒョン
テヒョン
いつでもおいで…
あの低音のあったかい声が頭をよぎった。
そして、知らず知らずのうちに、
とこかすがる気持ちでアペルバウムの前に来ていた。

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