第3話

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2021/02/20 00:12
ーーーテヒョンのマンションーーー
テヒョン
テヒョン
タナ~
ヨンタン
ヨンタン
わん!わん!
テヒョン
テヒョン
今日はもっと眠れないよ…
そう、あの香りが気になって眠れないのだ…
テヒョン
テヒョン
怪我も気になるし、どうせ寝れないし、
行ってくるね…
ヨンタン
ヨンタン
わん!
今日もまた、テヒョンはマスクとキャップをかぶり、
昨夜行った場所の方へ行ってみる事にした。

平日の深夜12時を過ぎた街はやはり人が少ない。

昨日来たコンビニまで来たが
それらしい人物には会えなかった。

ふと、テヒョンは我にかえる。
テヒョン
テヒョン
僕、何やってるんだろ…
折角だからと、コンビニで大好きなみかんゼリーと、
牛乳を買って、元来た道を帰るのが…
昨日の黒猫と目が合う。
テヒョン
テヒョン
あ!昨日のにゃんこ!
テヒョンが近づくと、
また路地裏へと入り込んで行った。
やっぱりテヒョンは気になって着いていくと、
今度は倒れている人影を見つけた。

テヒョン
テヒョン
この香り…
近づかなくてもわかる鉄臭い匂いとその香り。
そこには、探していた人物が、
昨日より新しい傷を作って倒れていた。
テヒョン
テヒョン
君!!!
大丈夫???
テヒョンは意識のないその人物を、抱き上げて。通り沿いに出ると、すぐにタクシーを捕まえた。
タクシー運転手
お客さん、厄介事はお断りだよ!
テヒョン
テヒョン
いえ、知り合いなんですみません。
アペルバウムの近くまで。
タクシー運転手
何だお客さんお金持ち?
まぁお金さえ払ってくれたら良いんですけどね。
タクシーの運転手はルームミラーで後ろを確認する。
タクシー運転手
おっとそいつは…
テヒョン
テヒョン
知ってるんですか?
タクシー運転手
知ってるも何も、
そいつは검은고양이黒猫だろ?
テヒョン
テヒョン
검은고양이黒猫??
タクシー運転手
その子は多分スラムの子だよ…

さっきの道をもっと先まで行けば、
ご存じの通り九龍村スラムだ。

ここ数年、外観が損なわれるってんで、
九龍の立ち退きの嫌がらせが凄くて、
いつの間にかその子が九龍村スラムを守ってるのさ…
テヒョン
テヒョン
そんな…
タクシー運転手
まぁ、
スラムの人間達にとっちゃヒーローだが、
あんた達富裕層には消えてもらいたい人間達だろう?
この子を含めな…

そんなあんたが何故そいつを?
テヒョン
テヒョン
いえ、この子は…
知り合いの子なんで…
タクシー運転手
え?そうなのかい?
随分검은고양이黒猫に似てるがなぁ…
ま、男か女かもわからねぇから、
知らないっちゃ知らないな…

はい、着いたよ。
料金は…
テヒョンは抱き抱えマンションの自室に連れ帰った。

フードがとれ、長めの前髪から覗くその顔は、
汚れているし、傷だらけで、
目を閉じているためわからないが
恐らく整っているように見える。

美容院には行ってないだろう、その髪型は、
不揃いに切られたショートヘアだ。

その姿には似合わないバニラの甘ったるい香り。



ヨンタン
ヨンタン
わん!わん!
テヒョン
テヒョン
タナ、しぃ…
起きちゃうよ…
すると、臆病で人見知りのヨンタンは、
珍しくベッドに横たわるその人物に心配そうに、
ぴったり寄り添い、顔を舐めはじめた。
ヨンタン
ヨンタン
くぅ~ん…
テヒョン
テヒョン
こら、タナ!
・・・・
・・・・
ん…んん…
その人物に意識が戻る。
うっすら開けた瞳とテヒョンの目が合うと、
その人物は起き上がり、パーカーを深く被り直し、
後ろ手に下がる。
テヒョン
テヒョン
わぁ!怖がらないで!
昨日、一緒にチンピラから逃げたでしょ?
それ僕だよ!
さっき路地裏で君が倒れてるの見つけたから…
・・・・
・・・・
・・・・。
テヒョン
テヒョン
いや、ごめん、絶対に怪しいよね。
僕、テヒョン!でも、そこそこ有名なんだけど…
その人物は顔を横にふる。
テヒョン
テヒョン
残念…僕もまだまだだな…ははっ
どうしよ…うんと、えーと…
あっ!みかんゼリー食べる?
するとまた、横に顔をふる。
テヒョン
テヒョン
そうだよね、多分しみるもんね…
じゃあ、牛乳ならしみないよ!
待ってて!
テヒョンは牛乳をマグカップに注ぎ、
電子レンジで暖めてホットミルクにして
その人物に渡した。

深く被られたフードと長い前髪の隙間から、
じーっとテヒョンを見てから、
マグカップを受け取りホットミルクに口をつけた。
テヒョン
テヒョン
なんか君、本当に野良猫みたいだ…
警戒心が強く、ミルクを飲む姿をみてテヒョンはそう思った。

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