ーーーテヒョンのマンションーーー
そう、あの香りが気になって眠れないのだ…
今日もまた、テヒョンはマスクとキャップをかぶり、
昨夜行った場所の方へ行ってみる事にした。
平日の深夜12時を過ぎた街はやはり人が少ない。
昨日来たコンビニまで来たが
それらしい人物には会えなかった。
ふと、テヒョンは我にかえる。
折角だからと、コンビニで大好きなみかんゼリーと、
牛乳を買って、元来た道を帰るのが…
昨日の黒猫と目が合う。
テヒョンが近づくと、
また路地裏へと入り込んで行った。
やっぱりテヒョンは気になって着いていくと、
今度は倒れている人影を見つけた。
近づかなくてもわかる鉄臭い匂いとその香り。
そこには、探していた人物が、
昨日より新しい傷を作って倒れていた。
テヒョンは意識のないその人物を、抱き上げて。通り沿いに出ると、すぐにタクシーを捕まえた。
タクシーの運転手はルームミラーで後ろを確認する。
テヒョンは抱き抱えマンションの自室に連れ帰った。
フードがとれ、長めの前髪から覗くその顔は、
汚れているし、傷だらけで、
目を閉じているためわからないが
恐らく整っているように見える。
美容院には行ってないだろう、その髪型は、
不揃いに切られたショートヘアだ。
その姿には似合わないバニラの甘ったるい香り。
すると、臆病で人見知りのヨンタンは、
珍しくベッドに横たわるその人物に心配そうに、
ぴったり寄り添い、顔を舐めはじめた。
その人物に意識が戻る。
うっすら開けた瞳とテヒョンの目が合うと、
その人物は起き上がり、パーカーを深く被り直し、
後ろ手に下がる。
その人物は顔を横にふる。
するとまた、横に顔をふる。
テヒョンは牛乳をマグカップに注ぎ、
電子レンジで暖めてホットミルクにして
その人物に渡した。
深く被られたフードと長い前髪の隙間から、
じーっとテヒョンを見てから、
マグカップを受け取りホットミルクに口をつけた。
警戒心が強く、ミルクを飲む姿をみてテヒョンはそう思った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!