第78話

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2021/03/14 08:02
古ぼけたビルの一室にソンジェはいた。

自分の服と手についた乾いた血を見て、体が震える。

小さい頃、父親を刺して帰ってきた母親も、
同じ様に乾いた血を身に付けいたのを覚えているからだ。

闇医者
おい、処置は終わったぞ。
こい。
ソンジェは闇医者にハヌルを連れてきていたのだ。
呼ばれて部屋に入ると、
首に包帯を巻き点滴を受けているハヌルが横たわっていた。
闇医者
俺んところに来る患者は本当に普通じゃねぇなぁ。くっくっ
ソジュン(コンビニ店員)
ソジュン(コンビニ店員)
あの…
闇医者
命に別状はない。
首を切って死ぬなんて相当な力がいるからな。
こんな手錠をかけられた状態でカッターで切ったって、
血は出るし、ただ、痛いだけだ。
致命傷を与えるには3~4センチ深くなきゃ死ねねぇよ。
首を絞められた後に、手錠に、切り傷。
それに、栄養失調。事件の匂いしかしねぇ。
こりゃ、普通の病院には連れていけないわな。
ソジュン(コンビニ店員)
ソジュン(コンビニ店員)
警察には…
闇医者
お前は馬鹿か。
闇医者の俺が通報したら俺がパクられる。
だから、ここに連れてきたんだろ?
とりあえず、この子は預かる。
俺も医者の端くれだからな。
看たからには責任があるからな。
どうせ。その様子じゃ連れて帰れないだろ?
震えの止まらない体を自身の腕で必死に止めようとしているソンジェ。
闇医者
俺は精神科医じゃねぇから
お前の処置は出来ねぇぞ。
相当参ってるだろ?さっさと帰れ。
ソンジェは家に帰ったが、どうやって帰ってきたのかも覚えてない。

まだ震えの止まらない自分を落ち着かせたくても、
幼い頃の記憶にある、猟奇的に笑う血まみれの母親が、
脳裏から離れず、ただただ、乾いた血を落とすのに必死になった。

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