僕は咄嗟に走りだしていた。
『お~、すげぇ、怪我せずに済んだ。なに~?お前もしかして陸部?』
おっけ~、と軽く答えて中澤は小走りで先生を呼びに行った。
別に、熱中症というわけでもないし心臓が止まったわけでもなさそうだ。
中澤が言ってた通りだ。
本当に急に寝るんだ。
『せんせー呼んできた~』
先生
「あら、ありがとう。二人とも。高谷さんのご両親に御連絡しないといけ…。」
知らない女子生徒が駆け寄ってきた。
先生
「あら、園田さん。そうなの。」
先生
「そうなの?じゃあ、頼もうかしら。」
さらっと彼女の母親に電話を掛けた女子生徒はこちらを睨んできた。
先生
「違うのよ、園田さん。こちらの彼は、高谷さんが倒れたときに受け止めてくれたの。彼が受け止めてくれたから、怪我しなかったの。」
『ひっで~言い様。俺にもちゃんと名前くらいあるし~。中澤悠希だよ~、同じクラスなんだし、覚えてね☆』
『あ~、こいつ自分の名前好きじゃないらしくて名乗らないのよ、ごめんね☆まりあちゃん。』
あなたの母
「すみません、高谷あなたの母です。」
態度が僕らへの対応と真逆だな。
『まりあちゃん、ネコみたい。』
中澤も同じことを考えていたらしい。
あなたの母
「本当に…?ありがとうね…!また、改めてお礼したいわ。連絡先教えてもらってもいいかしら。」
『いいっすよ~中澤って言います~。番号は…。あ、まあ僕に連絡してもらえたらこいつももれなく付いてくると思います~』
あなたの母
「わかったわ。本当にありがとうね。お礼はまた改めてさせてね。」
あなたの母
「あら、そう。ありがとうね。まりあちゃん。」
いえいえ、と言うとともに彼女は僕たちに向かって
といった。
『話したいことって何だろね~。俺ら殺されるのかな。』
『え~そお?じゃあ、今度高谷に近づいたら許さないとかじゃね。』
だよねぇ~、と相変わらずケラケラ笑ってる。
いつのまにか彼女が戻ってきてた。
『あっれ~。あなたちゃんのお母さんは。』
『あ、そうなの。んで、俺らに言いたいことってなに?』
『近づくなって?』
眠れる森の美女症候群…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!