あんなに高熱が出ていたメンバー達は次の日にはスッキリしていた。
意識が朦朧としていたスンミンもすっかり良くなり、ダイニングテーブルでお粥をもりもり食べている。
なんて優しい言葉をかけてくれるのだろう。
スンミンは本当に紳士だと思う。
意識朦朧としているスンミンに
コップでお水を飲ませられなくて…
口移しで飲ませた事を思い出した。
何て事してしまったんだろうと、深く反省をした。
紳士だもの…こんな、はしたない行動とられたら
すごい嫌だよね…
本人は気がついて無いようで、それだけが救いだった。
チャンビンがリビングに入って来た。
キッチンに立つ私を後ろから抱きしめるチャンビン。
スンミンが引き剥がしにくる。
チャンビンが私の顔を覗き込む。
そんな様子にスンミンもキョトンとしていた。
チャンビンがおでこをくっつけて熱を計る。
突然現れたハンが、チャンビンから私を引き剥がした。
そう言ってハンは、私の肩を正面から持ち、顔を近づける。
またまた突然現れたヒョンジンが、ハンの口を押さえて阻止した。
スンミンは、ちゃんと体温計を持ってきてくれて、イスに座るよう促す。
ピピピ…ピピピ…
計り終わりのアラームが鳴る。
通りすがりのリノに計り終えた体温計が取り上げられる。
そう言ってリノがぎゅっと抱きしめる。
今度はヒョンジンが優しく抱きしめ、
頭をポンポンと撫でてくれる。
ぎゅっ…
ふぅ〜 ヒョンジンが穏やかな表情を浮かべ
癒されている。
まるで晴れた日の公園で、木漏れ日の下でまったりくつろぐような…
「いつも抱きしめてるから」
チャンビンとリノとヒョンジンは口を揃え、さも当然とばかりに言った。
フィリックスとアイエンとバンチャンも、何事かとキッチンにやってきた。
メンバー勢揃いだ。
ヒョンジンがすっと私の肩を抱き、自室に連れ去ろうとする。
リノが割って入り、ヒョンジンから引き剥がした。
アイエンには刺激が強過ぎたらしく、1人あわあわしている。
優しく腕を引っ張られ、ひょいとお姫様抱っこするバンチャン。
バンチャンにお姫様抱っこされたまま、ベッド運ばれる事になった。
その後をゾロゾロと着いてくるメンバー達。
あっ!と何かに気がついたような声をあげ、フィリックスが追い越し、
先に私の部屋に入る。
部屋に到着すると、
フィリックスはベッドメイキングをしてくれていた。
天使のような笑顔を浮かべている。
他のメンバー達は、気がつかなかったー!!先手を取られた!!とわきゃわきゃしている。
ぽすっとバンチャンに優しくベッドに置かれ…
チュッ
おでこにキスをされた。
ぐわーーーーっ!!!
とメンバー達の悲痛な叫び声。
俺も!僕も!!とキスをしようとごちゃごちゃしている所をバンチャンが止める。
思いつかなかったのが悔やまれると
残念な表情を浮かべるメンバー達だった。
アイエンがそっと私の枕もとに置いたのは
アイエンをイメージして作られたぬいぐるみ、SKIZOOフォクシニーだった。
恥ずかしそうにアイエンがつぶやく。
それを見たメンバー達は、やられたーーー!!!と一目散に各自部屋に戻り自分のSKIZOOを取ってくるのだった。
「はい!」
「はい!これ」
「俺のが一番あなたに近い所!!」
全員のSKIZOOがズラリと並んだ。
ニッコリ笑顔で返事すると、
メンバー全員、あなたの可愛いらしい笑顔にあてられ頬を赤らめていた。
…
…
…
静まりかえる自室…
微熱がちょっとあるだけで、身体は元気なんだけどな。
しかもまだ朝の8時。
今日は6時半に起きたから、寝ようにも眠れない…
そういえば…
1人きりの時間ってソウルに来てからのこの1年、あっただろうか。
練習生としてレッスンを受け、マネージャーに扮してSrtay Kidsのお仕事に同行させてもらい、
宿舎はメンバー達の住む家だ。
たまにある休みも、何かとメンバーに誘ってもらって1人で過ごす事はほとんどない。
もちろん1日のうちで自分1人という時間はある。
長く取れる時は、練習してるか、宿舎を掃除したりご飯作ったり
完全なる無の状態はなかったんじゃないかな…。
何しようかな…
大人しく眠れるわけもなく、
急に空き時間ができると何したらいいかわからない。
カチャ…
ドアがそーーっと開き、さささっと入ってくる人が…
音をなるべくたてないように、静かに閉じられる。
そのぎこちない動きを一部始終見ていたわけで、
くるっと振り返るメンバーと思いっきり目が合った。
ハンは自分で声を自制した。
大きな声を出したらまずいと、慌てて自分の口を手で抑える。
喋り声もコソコソ声だ。
私も思わずコソコソ声で返す。
ハンは他のメンバーにバレないようにこっそり部屋を出て、パソコンを取りに戻って行った。
…
…
…
ハンは私のベッドにわくわくしながら入り、クッションを背もたれにして座るような形になった。
「もたれていいよ」と、私の肩をそっと抱くような形で映画を見始める。
「眠くなったら、寝ちゃってもいいから」とも言ってくれた。
ハンが用意してくれたのは今韓国で流行っている恋愛ドラマだった。
おもいっきり俺が観たい作品でごめんねと言われたが、韓国のドラマを観るのは初めてだったので、凄く楽しみだった。
内容は…ベタベタに甘くて、少女漫画のような胸キュンものだった。
ハンに手で口を覆われてしまった。
いつになく真剣な眼差しで見つめられた。
真っ直ぐな瞳で強い想いを感じ、なぜか私は顔が火照ってしまった。
いつになく強い眼差しで見つめられた。
ハンはすごく嬉しそうな表情をして、私を抱きしめた。
顔付近を腕でぎゅっとされていて、何を喋ったのか聞き取れなかった。
ハンはベッドで膝立ちになり、座る私をさらにぎゅっと抱きしめた。
さすがにちょっと苦しくて、やっとの思いで、顔だけを上に向け、ハンを見上げる形になった。
女の子の上目遣いって、いやあなたちゃんだからなのか?
こんなに可愛いの??
胸元で抱きしめたから、見下ろすとすぐそこに顔がある…
昨日一緒に寝てくれた時だって…我慢できそうになかった。
俺の熱が高かったから、何もできなかったけど…
今は…
チュッ…
そばに置いておいた体温計をハンが見つけ、手渡される。
熱をもう一度計る事にした。
今は10時30分…最初に計った時から2時間30分経っていたんだ。
ピピピ…ピピピ…
計り終えたアラームが静かに部屋に響いた。
心配そうに覗き込む体温計には
38.8度
と表示されていた。
急いでハンがベッドから出て私を横たわらせた。
〈続く〉
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。