第4話

大嫌いとありがとう
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2020/10/31 02:27
「………」

さっきから沈黙が続いている。
僕、何かしちゃった、かな…。

「あ、あの…青葉さん?
どうかされました……?」

恐る恐る青葉さんに声をかけると、
あ、というように青葉さんは顔をあげる。

「ごめ、……いやさ、虹遥と俺って
似てるなって思って。」

「に、似てる……?どこがですか……?」

誰から見ても僕と青葉さんは似ていない。
内面だって、僕の知ってる青葉さんと、
僕となんかじゃ差がありすぎるし…。

「…俺もさ、名前にコンプレックスが
あってさ。…でも、俺の場合は大嫌い、
って言った方がいいのかも。」

名前が大嫌い……?な、なんで……?

「あ、の、名前聞いてもいいですか…?」

「俺の名前、紅(こう)って言うんだけど」

紅さん……なんだ、とてもいい名前だ…
なんで、大嫌いなんだろう……?

「紅ってさ、葉っぱで言う所の紅葉した
葉っぱだろ?紅葉した葉っぱは枯れて
落ちていく事しか出来なくて。
親に自分の将来を期待されてないような
気がして、嫌になっちゃって。」

そう言って青葉さん、いや、紅さんは
苦しそうに笑う。
紅さんだって自分の名前を嫌いになんて
なりたくないんだろうな……
それに、紅葉した葉っぱだって
出来ることはたくさんある、し……!

「紅さん、紅葉した葉っぱは色んな人を
感動させてますよね……?紅さんも、
僕を、リスナーさんを感動させてくれて
いるんです……!!
期待されてないなんて、そんな事ないと
僕は思います!」

驚いた、そう紅さんの顔に書いてある。
先輩相手に言い過ぎたかも知れない

「……ははっ
虹遥、なかなか面白い事言ってくれるじゃん……ありがと……俺、少しは自分の名前を
好きになれた気がする」

そう言って紅さんは微笑む。

「そう言って貰えて嬉しいです…!」

「あ、そうだ
虹遥の過去を俺は知らないけどさ、
俺に物言えるくらいには変われたんじゃない?」

そう言って紅さんはいたずらっぽい笑みを
浮かべる

「うぅ、言いすぎたって思ってますよ…」

でも確かに、昔の僕だったら人に
反論するなんて出来なかった
僕も少しは、変われたのかも。

「まぁ、これで2人とも変われたんじゃん
ほれ、ここでご飯食おうぜ」

そう微笑みながら声をかけてくれる。
2人とも、変われた。
その言葉が嬉しかった。

「…おしゃれなお店ですね!
ご飯楽しみです!」



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