一通りの作業が終わった。
自分の作業もしたし、僕も少し寝た。
もちろん僕はソファで寝たけど。
暇な時間は明輝さんにかまってもらったし。
楽しい1日だったと思う。
「んぁ……虹遥おはよ…」
「あ、おはようございます、紅さん。
あ…、紅さんのスマホ鳴ってましたよ。」
「お、わかった」
ー美駒かなー
ぼそっと紅さんが呟く。
…呼び捨てで呼び合う程仲が良いのだろうか。
少し、美駒という人に羨ましさを感じる。
「虹遥、ちょっと電話していい?」
「あ、どうぞ〜。僕向こうに行ってますね。」
なんて言いつつ、ドアの向こうから聞く気
満々だけど。
昔の僕ならこんな事は絶対にしないのに。
ほんとに、変わったなぁ……
「もしもし?あ、美駒?うん、あ〜、ごめんって。うんー」
紅さんの声が聞こえる。いつもより明るい声だ。
少しドアを開けて中を覗いてみる。
「な、んで…」
そんな紅さんの心から笑ったような顔、
見た事ない。
ずるい。なんであの人にだけ。
僕じゃだめなんですか。
…今日の僕はおかしい。
考えれば考える程嫌な気持ちが募ってく。
こんな僕、僕は知らない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。