──十字路が見えてきた
そこを左に曲がれば、だんだんと人通りが多くなり、学校に着く。
そして、私たちは赤の他人になる。
はぁ………付き合ってらんない
私はあえてつっこまずに言った。
そう言って龍央は私の頭をグシャッと撫でて歩いて行った。
極道の者は狙われやすい。
特に私はここら一体を収める鬼門家組長の孫娘だ。
素性を隠し、身を守るため学校ではウィッグを被っている。
だって、オシャレしたいじゃん!
私だってJKなのにさ、こんな前髪の長い見るからにダサいウィッグをしないといけないなんて……
心の中で愚痴を言いながら私は学校に向かった。
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美凜は私の数少ない友達だ。
日は浅いけどずっと一緒だったのではと思うくらい仲がいい。はっきりしてるとこが好きなの。
そして、美凜は私が鬼門家の者で組長の孫娘ということを知っている。
美凜と仲良くなった経緯?
それがおもしろくて………
転校して私を見た瞬間、友達になりたいって思ったらしいの。で、私の事が気になって家まで着いてったらしくて、それでバレたわけね。
そっからかな、仲良くなったのは。
私は寝るのが好きだ。
だからよく寝坊&遅刻してしまう。
美凜にはホント申し訳ないわ……
こんな私だけど美凜は一緒にいてくれる。
美凜は私にとって大きな存在だ。
昼休み──
「「「キャーーー」」」
お弁当を食べていると女子たちの叫び声が聞こえてきた。
ご飯を口に詰め込みながら廊下に目をやる。
廊下には人が群がり、その中心に龍央を含む生徒会がいた。
生徒会に目をくれず、手元の箸を進める。
ふと目線を上げると、龍央と目が合ってしまった。
無表情でじーっと見てくる龍央。
(無言の圧付き)
そう言い、大口開けず少量ずつ口に入れ食べると、
「ニコッ」
笑顔を浮かべ去っていった。
今日も美凜と過ごす時間はあっとういうまに感じられて、とても楽しい日になった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!