第2話

普通の子
468
2021/01/03 13:27
──十字路が見えてきた
そこを左に曲がれば、だんだんと人通りが多くなり、学校に着く。
そして、私たちは赤の他人になる。
鬼門 椿
鬼門 椿
んじゃあ、ここから他人ね
鈴原 龍央
鈴原 龍央
あぁ……
くれぐれもズラをずらさないようにな
はぁ………付き合ってらんない
鬼門 椿
鬼門 椿
…………
鬼門 椿
鬼門 椿
ズラって言うな
ウィッグと言え
私はあえてつっこまずに言った。
鈴原 龍央
鈴原 龍央
どっちも同じだろ
鬼門 椿
鬼門 椿
いや、ウィッグの方が若々しい
鈴原 龍央
鈴原 龍央
若々しいて
鬼門 椿
鬼門 椿
つか、早く行きなさいよ
生徒会長さん
鈴原 龍央
鈴原 龍央
はいはい、わかりましたよ
鬼門さん
そう言って龍央は私の頭をグシャッと撫でて歩いて行った。
鬼門 椿
鬼門 椿
崩れるだろうが……
極道の者は狙われやすい。
特に私はここら一体を収める鬼門家組長の孫娘だ。
素性を隠し、身を守るため学校ではウィッグを被っている。
鬼門 椿
鬼門 椿
本当は嫌なんだけどねぇ……
だって、オシャレしたいじゃん!
私だってJKなのにさ、こんな前髪の長い見るからにダサいウィッグをしないといけないなんて……

心の中で愚痴を言いながら私は学校に向かった。


一瀬 美凜
一瀬 美凜
椿、おはよう!…って朝から暗いわね
鬼門 椿
鬼門 椿
あぁ、美凜おはよう……やっぱりわかっちゃう?オーラってやつ?
一瀬 美凜
一瀬 美凜
うん、なんかどんよりしてる……
美凜は私の数少ない友達だ。
日は浅いけどずっと一緒だったのではと思うくらい仲がいい。はっきりしてるとこが好きなの。
そして、美凜は私が鬼門家の者で組長の孫娘ということを知っている。
美凜と仲良くなった経緯?
それがおもしろくて………
転校して私を見た瞬間、友達になりたいって思ったらしいの。で、私の事が気になって家まで着いてったらしくて、それでバレたわけね。
そっからかな、仲良くなったのは。
一瀬 美凜
一瀬 美凜
で、どうしたの?
鬼門 椿
鬼門 椿
うぅ、私もオシャレしたい………
普通の子でいたい………
一瀬 美凜
一瀬 美凜
仕方ないでしょー、あんたは。
命とオシャレどっちが大事なの?
鬼門 椿
鬼門 椿
オs……命
一瀬 美凜
一瀬 美凜
今、オシャレて言いかけたよね
鬼門 椿
鬼門 椿
なんのことやらぁ………
一瀬 美凜
一瀬 美凜
……オシャレなら休日にしなさい
今週、遊びに行くでしょ
鬼門 椿
鬼門 椿
うん……うん!そうだね!
今週は美凜とデートだもんねぇ
一瀬 美凜
一瀬 美凜
椿、遅刻しないでよ?
鬼門 椿
鬼門 椿
し、しないよ!絶対!……多分
一瀬 美凜
一瀬 美凜
はぁ、怪しいんだから………
私は寝るのが好きだ。
だからよく寝坊&遅刻してしまう。
美凜にはホント申し訳ないわ……
こんな私だけど美凜は一緒にいてくれる。
美凜は私にとって大きな存在だ。
鬼門 椿
鬼門 椿
美凜ちゃぁん、好きよ〜
一瀬 美凜
一瀬 美凜
はいはい、私もよー
昼休み──
「「「キャーーー」」」
お弁当を食べていると女子たちの叫び声が聞こえてきた。
一瀬 美凜
一瀬 美凜
おー、始まった
鬼門 椿
鬼門 椿
んむ?
ご飯を口に詰め込みながら廊下に目をやる。
一瀬 美凜
一瀬 美凜
生徒会御一行や
廊下には人が群がり、その中心に龍央を含む生徒会がいた。
一瀬 美凜
一瀬 美凜
はっ、発情期の雌猿やな
鬼門 椿
鬼門 椿
あら美凜ちゃん、そんな汚い言葉
使っては行けませんわよ
一瀬 美凜
一瀬 美凜
いや、誰ww
鬼門 椿
鬼門 椿
まぁ、生徒会もよくやるよねぇ
昼休みに見回りとはねぇ
一瀬 美凜
一瀬 美凜
ほんと、何を見回るんだか……
鬼門 椿
鬼門 椿
疲れるだけなのにねぇ
生徒会に目をくれず、手元の箸を進める。
ふと目線を上げると、龍央と目が合ってしまった。
鬼門 椿
鬼門 椿
あー……
一瀬 美凜
一瀬 美凜
ん、何?……あらァ
一瀬 美凜
一瀬 美凜
見られてますわよ、奥さん
鬼門 椿
鬼門 椿
なんか、見られてますわねぇ
無表情でじーっと見てくる龍央。
(無言の圧付き)
鬼門 椿
鬼門 椿
あれはぁ……
鬼門 椿
鬼門 椿
「よく噛んでゆっくり食べろ」かな
一瀬 美凜
一瀬 美凜
え、まじ?
鬼門 椿
鬼門 椿
ちょ、見てて
そう言い、大口開けず少量ずつ口に入れ食べると、
「ニコッ」


笑顔を浮かべ去っていった。
鬼門 椿
鬼門 椿
ほら、当たり
一瀬 美凜
一瀬 美凜
ほんとに当たったわ……
一瀬 美凜
一瀬 美凜
食べる量まで注意するとか、
さすがお世話係ね
鬼門 椿
鬼門 椿
まったく、めんどくさいお世話係だよ
鬼門 椿
鬼門 椿
家でも学校でも監視され……
一瀬 美凜
一瀬 美凜
今度のお出かけも監視付き?
鬼門 椿
鬼門 椿
かなぁ、まっ、いてもいなくてもどっちでもいいんだけどねーん
一瀬 美凜
一瀬 美凜
私も別に気にはしてないからねぇ
鬼門 椿
鬼門 椿
どこに行っても安心やでなっ!
一瀬 美凜
一瀬 美凜
せやなっ!
今日も美凜と過ごす時間はあっとういうまに感じられて、とても楽しい日になった。

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