第2話

#2 4years later
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2021/08/15 04:39
私が帰国してから4年の月日が流れた…


正直私は母国語の韓国語は得意ではなく、簡単な単語のみと言った感じでカタコトだったが

下手くそなら下手くそなりのコミュニケーションを取ろうとした


でも世間は案外厳しく、頑張って明るく振る舞うたび相手の都合よく解釈され、気が付いた頃には馬鹿にされて完全に孤立していた…。
お父さん
お父さん
気にすることはない。お前は特別なんだ、みんな羨んでるだけだよ
ムンビョル
ムンビョル
…あ、そう。
本当にそうだと思う?


特別って本当にいいことだと思う?


大人は私の"色"を特別といい、どうかこの色を無理に潰さないように私をあの手この手で奮い立たせようとしている。


みんなは私のように、"特別"になりたいんだ
でも簡単になれないんだという。


逆を言わせてもらえばね、


私もみんなみたいに普通になりたいよ
でも世間はそれを許さないし、なれない。


飴みたいに差し伸べられたって、平等じゃないんだ。


大人たちからは期待の眼差し、同級生からは妬みの眼差し


私は善きことをしたはずなのに、いつしか周りからは惧れられていた
いつしか、疎まれていた。


人ならぬものを、見るかのように。


それでも結局は自己都合なんだろうね
私の人生より、私の栄光がほしいんだろうね
それを自分の功績にするのが狙いなんだろう


まっさらな白いキャンパスも色をたくさん塗り重ねていけば、やがてくすんだ黒になるように


私の心の闇も深まっていった。


ならばいっそ、もういいよ
私は自分の栄光すべてどぶに捨ててでも、自分の人生を手に入れたいから


この部屋の扉を固く閉ざして、外界から遮断した。
お父さん
お父さん
ビョリ!!休むとは何事だ、学校へ行きなさい!!
ムンビョル
ムンビョル
…行かない
お父さん
お父さん
わがままが通用するとでも思ってるのか!早く出てきて支度を進めなさい!!
最初は怒鳴ってでも、手をあげてでも私を学校に行かせようとしていた


傷跡だらけで学校に行っても、
周りから白い目で見られ、先生に保護もどきをされ、傷の写真を撮られ、晒し者にされる


やがて役所の役員が出てきて、三者面談になるが驚くことに
「しつけの範囲なら問題ない。あなたも学校へ行けるように精進しなさい。」


あーあ。なんて世界なんだろう。
最初から期待はしてなかったけど、改めて廃れてるなとしみじみ思うよ。


学校へ行かなきゃいけない

行けない理由も聞かない
行かなくてはならない理由も言わない


ただ学校へ行けと、それだけの話だと


お前らの功績と引き換えに、自我を捨てろというの?


そんなの…そんなの、許せない。だから


絶対に行かない。



そして私が登校拒否をするようになり数日が経った日のこと
お父さん
お父さん
ビョリ、遅刻してもいい。保健室にこもっててもいいから出席しなさい。
ムンビョル
ムンビョル
また数日後
お父さん
お父さん
ビョリ…お前が心配なんだ
お願いだから出てきてくれ
ムンビョル
ムンビョル
(よく言うよ…)
それからまた数週間もすると声をかけることすらなくなってきた。
きっと諦めがついたんだろう。


必要最低限以外のことは話さなくなり、学校から課題や大事な書類が渡された時のみ
ノックで合図をしてドアの隙間に書類を挟むようになった。


ご飯の時も多忙な私たちのことだ。
元から家族で食卓を囲むことはなかったけど、たまに食費をさっきの方法で渡されることになって


3日で日本円にして1000円。
例えると1日2食、カップラーメンしか食べれないくらいかな


お金は十分にあるはずなのに、これほどしか渡さないのはきっと、私を外に出すためなんだろう。


ギリギリ殺さない範囲で色々試してるんだろう。


キッチンに行けばなんだってあるが、私は意地でも出るつもりはない。


トイレとお風呂以外、頑なに出ようとしないから両親との我慢比べになるけど


結局、親の注意なんて中途半端なものだから気を抜いてる隙に静かに動けばいい。
みんなが思ってるよりみんなは私を見ていないから
気分次第なのよ、所詮愛情なんてもの。
そんな生活を続けて、1年ほど経つ。
勉学は捨てていなかったから偏差値こそは低くないものの、内申点は皆無に近いから高校進学は諦めてはいないけど、レポート提出のみで出席はたまにという通信制高校に通っていた。


なにより、まだ母国語が完璧じゃないから。
どうせ奴らは、なんて自分に言い聞かせて、閉じこもっていた


そんなある日のこと。


私には姉がいるのだが、昔はよく喧嘩をしていて笑い合って、でも私が外界を拒むようになってから一言も交わさなくなった。


そんな姉とたまたま鉢合わせた時に、今外で起こっていることをおしえてくれた。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
うわめっちゃ久しぶりじゃん
ムンビョル
ムンビョル
…うん。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
最近、学校はまだ行けてないかんじ?
ムンビョル
ムンビョル
行く気はないかな…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
お姉ちゃんは無理にとは言わないよ。あんたがやりたいよーにするのが一番なんだから!
お姉ちゃん
お姉ちゃん
そういえばね、この前合宿先で仲良くなった友達がいるんだけどね…この友達のグループ、ハーフ会って言うらしいの
そう言ってお姉ちゃんはその、ハーフ会とやらの集合写真を見せてくれた。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
見た目はイカついけど、みんな韓国に来て苦労した友達ばかりだからビョリの力になってくれるんじゃないかな?
ムンビョル
ムンビョル
ハーフ会…
その写真には、女性同士が抱き合って写真を撮ったり、男性同士がキスしていたり、男女どっちとも取れない見た目の人もいた。


みんな韓国に住む色んな国のハーフだという、色んな国の言葉が入り混じってるから韓国語の苦手な私でも楽しめるという。


とても個性豊かで誰の何が一般論とかけ離れていても、最低限の常識があれば輪になれる。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
どう?素敵でしょ?
ムンビョル
ムンビョル
うん、すごく楽しそうだね
お姉ちゃん
お姉ちゃん
良かったらビョリも来る?
ムンビョル
ムンビョル
え?わ、私はいいよ…
ムンビョル
ムンビョル
明るくないし、コミュ障だし、この人たちみたいにはなれないから…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
そんなことないでしょ。あんた元々は明るかったんだから、取り戻せるいい機会じゃない?
お姉ちゃん
お姉ちゃん
今度メンバーの文化祭行くらしいから、行ってみよっか!私もいるし大丈夫だよ!
そんなこんなで、私は半ば強引にハーフ会へと連れられるのだった……

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