私の手に手を添えて一旦ストップをかける。
さすがにまずかったかな…そんな罪悪感が頭の中を駆け巡る。
するとフィイナは脱衣所のドアに向かうと、そのままロックをかけた。
それを見て私は驚くと同時に嬉しくて、さっきよりも心臓がうるさく鳴る。
やたら騒がしい沈黙の中で少しずつ浅くなっていくフィイナの息遣いが聴こえてくる。
その言葉を合図にキスを交わした。
腕をフィイナの背中に回すとフィイナも私の首に腕を回し、どちらからともなく強く引き寄せ合う。
深く味わうように、長く、長く…甘いキスをする。
途中で息が切れたのと同時にお互いの唇が離れると、首筋にキスを落としていく…
丁寧に、丁寧に…愛情深く、体の隅々まで…
濡れたままの髪が更に艶めかしくさせて、耳にキスをする時に自分の息遣いからこんなにドキドキしていることが伝わってしまわないか少しだけ躊躇ってしまう。
普段のクールで少しズボラな彼女からは想像できない、あまりに女らしい声や表情のギャップに胸の奥がきゅっとする。
フィイナの好きなところを責めつつ、ゆっくりと体に手を伸ばす
指で引き締まったくびれの輪郭を上へ上へとなぞり、優しく胸に触れると一層フィイナの心臓が強く鼓動してるのが伝わってくる。
小ぶりだけど綺麗な形をしていて、ついうっとり見ているとフィイナは恥ずかしそうに手で顔の半分を覆うようにして隠した。…
今まで踏み入れたことのない未知の領域…
だからこそ、慎重になっている自分がいる。
でもこんなところで躊躇ってる暇なんてない…手に入れたかった存在がありのままの姿で目の前にいるのに躊躇う理由がない。
首筋から鎖骨へ、下へ下へとキスを落としていき……うす赤く光って硬く抵抗するフィイナのそれを口に含んだ。
思わず出てしまった声に、咄嗟に口を塞いだ。
優しくしているつもりだけど気分が高まっているせいかフィイナは余裕がない様子で、
私の髪の毛を掴んでまで快感に悶えていた。
それがどうしようもなく愛おしくて仕方がなくて、追い討ちをかけるように膝をフィイナの脚の間に当てると一瞬身体をぴくっとさせて、強く私にしがみつく。
更に下へ下へ、お腹から太もも、内股へとキスを落としていく。
しゃがみこんで膝を立てたところにフィイナの足を置かせて、一瞬フィイナの表情を伺う。
口を押さえたまま、こくりと頷いた。
秘部の毛は綺麗に処理されていて、そこに広がる花びらは薄ら桃色。そして溢れた愛液で美しく輝いていた。
柔らかな手を握ると、恋人繋ぎで返してくれた。
そして反対側の指で撫でるように優しく大きくなった蕾を刺激すると、ゆっくりと切ない溜め息が漏れる。
大きく膨らんだ期待に焦らされて指を噛んでいる。
そんなフィイナの顔を下から眺めつつ、少しずつ顔を近付けそこに口をつけようとした
その時。
トントントントンッ
アイナだ。
その様子だと時間も忘れて深く求め合った私たちに痺れを切らしたのか、わざわざ呼びに来たみたい。
はぁ…また中途半端なところで遮られて…
たまたま思い付いた言い訳を伝えて、急いで着替えた。
足音でアイナが部屋に戻ったことを確認すると、フィイナが私を引き寄せそのまま強く抱きしめる。
目が合うと、再びキスをする。
さっきとは違う、浅い軽いキス。しばらくお預けね、の合図。
いいところだったせいか、この前より悶々とした気持ちが残っていて惜しく感じる。
そしてまた強く抱きしめ合い、体の感触を確かめるようにして撫でていると再び私の手に手を添えるようにしてストップをかけられた。
そういうとフィイナはちゃっちゃと着替え始めてしまった。
今まで脱ぎかけだったから知らなかったけど、フィイナは普段からTバックを穿いているみたい。
ファッションの為とは分かっているけど、見慣れない黒のTバックがフィイナのお尻の形の良さと肌の白さを更に際立たせる。
無意識のうちに手を伸ばしてしまっていたようで、フィイナのお尻を撫でると嬉しそうな顔を浮かべているけどやっぱりストップをかけられた。
毎瞬間のように幾度となく撃ち抜かれた心のはずだけど、
その上目遣いと爽やかな笑顔には似合わない少しのあざとさがここまで来ると恐怖すら覚えてしまう。
でもそれをきっと恋って呼ぶんだろうな…
あまりに切り替えが悪い私に無邪気に笑ってみせると、待ってるよと一言残し部屋を出ていった。
なんだか疲れたような…なんだろうな。でも幸せ。
私も服を脱いでシャワーに入るけど、鏡に映る自分を見ていると時折思うことがある。
生まれた頃からこの体で生きてきて、でも何不自由なく生きていた訳じゃない。
地に足がつかないような浮かれた気持ちで時に身を任せてここまで来たけど、前の彼女の時のことを思い出すと…
コンプレックス。その言葉がなんとなくしっくりくる。
自分の体に、いや…自分の生き方に納得いかない。でも、その反面諦めている自分がいる。
終わりの見えない問題だと分かっている、考えるだけ無駄なことも。
でも考えれば考えるほど苦しくなっていって、今まで自分の気持ちに知らないフリをしていた。
いつまでも知らないフリをしていられる訳ではないのは分かっている。
もしこの先、フィイナと上手くいったとして「身体に触れたい」そう言われたら。
もしこの先、自分が何者かに気付いてしまってどうしようもなくなった時大切な人たちが離れていってしまったら…
もしこの先、人生を共にするパートナーが自分の本性や過去を知ってしまったら…
そして何より、この生まれ持った使命を自ら失うことになる…
誰しもが与えられる訳ではない、その大切さが身に染みているからこそ
もしこの先、一生をかけて後悔をしてしまうようなことがあったら…
いくつものもしもが生まれて、笑顔を偽って生きていても望んだ自分自身と引き換えに全てを失うんだろうな、私。
そう思うと、言える訳がないよ…でも、こんな体でも…愛されていたかったな…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。