第13話

#13 Rainy day
486
2020/12/23 19:39
-Ammy side-


なんだか嫌な予感がしたの。


終わりの始まりが来たような、大きな悲しみの予感が。


女の勘は鋭いのよ


不器用な私の親友がまた、大きな傷を抱えるんじゃないかと。


また無意識のうちに難しい相手を選んでしまって、また無意識に傷つけあうんじゃないかと。


女の勘は鋭いのよ


まだあの子たちは出会ったばかり
今抱えた傷ならきっとすぐに癒えて、忘れて笑い合える日がくるの。


優しくも残酷な嘘かもしれない。


大好きな親友の為なら彼女たちの恋を応援したいわ。でも、貴方の本当の顔を知るなら今しかないと思って。


知られたくない過去を引きずって疑い深くなってる彼女でも、慎重なのは柄じゃない。


恋に落ちてしまったら後戻りは出来ない。


よく知った劇薬なら、飲み干してくれる気がしたの。


甘い罠よ。
友達にこんなことするのはなんだか後ろめたい、でも私たちのためだから。


試させてもらうね、ビョリちゃん。
フィイン
フィイン
あ、アミーもトイレ?
アミー
アミー
うんー
わざとらしく一番離れた席を選んで、わざとらしく視界に入れないようにしてる。


あまりに不自然な"気にしてないフリ"


ハイペースに流し込んだアルコールが効いてくるのも時間の問題かしらね。


貴方を深く傷付けないことだけを祈るけど、生憎の天気。


雨は憂鬱になるけど、自然と距離が縮まって恋を後押ししてくれる天気でもある。


そこまで計算してたつもりはないんだけどな


運命の悪戯かしら、きっと何かの偶然であの2人は一緒になるわ。


私には分かる。

"あのソファー"は魔法にかけられているから


今日はみんなが私の家に来るけど、必然的に誰かがそこに座ることになる。


次はどんなストーリーが待ち受けてるのかしら


次は誰の涙を見ることになるのかしら。
アミー
アミー
あれ、席に戻らないの?
フィイン
フィイン
…アミーに聞きたいことがあって。
フィイン
フィイン
カルーアを勧めたのはわざと?
アミー
アミー
わざと??ただ飲みやすいかなって思ってチョイスしたんだけど
フィイン
フィイン
んー気のせいか、ごめんなんでもない!
カルーアミルクは飲み口の良さに思わず飲み過ぎてしまうけど


甘いとはいえ、お酒だからね。

ゴクゴク飲んだら当然酔いは回るわ。


ごめんね。嘘ついて。
わざとだよ



-Byul side-


ヤバい。飲みすぎたかも。


アミーがいない間に、美味しくてついつい何杯もおかわりしちゃったけど


この前みたいに一気してないから吐きはしないものの、視界が少し不気味に歪む…
ジョイ
ジョイ
びょりぃ〜大丈夫かぁ〜?
ムンビョル
ムンビョル
ん〜?大丈夫らよ!
アミー
アミー
ビョリちゃん出来あがっちゃってるし、そろそろお会計して後はお家で飲もっか
アイナ
アイナ
賛成ー!
ジョイ
ジョイ
じゃ約束通りお会計は自分が……
ありがとうございました〜
フィイン
フィイン
行こ
アミー
アミー
…はぁ、フィイナの悪い癖。酔うとすーぐ調子乗るんだから。
アミー
アミー
フィイナ!私のぶん。
フィイン
フィイン
いいよそんなの!
ジョイ
ジョイ
今は何言っても聞かないだろうから、フィイナが寝てる時にでも財布に突っ込もう〜?
アイナ
アイナ
そうだね〜
アミー
アミー
んも〜…
フィイン
フィイン
めっちゃ雨降ってんじゃん!傘持ってない!!
アイナ
アイナ
え?今更?笑
フィイン
フィイン
アミー!傘ー!
アミー
アミー
アミーは傘ではありません。2つしか持ってないわ、ごめん
アイナ
アイナ
そのフレーズよく小学校で聞いてたわ
フィイン
フィイン
1つ貸して、ビョリやばそうだから連れてく
ムンビョル
ムンビョル
ん?私は別にだいじょう…
フィイン
フィイン
行こ!!
そうして半ば強引に連れられてしまった。


理性こそは無事なんだけれども、どうやら体がついてこれてないみたいで足元がやたらとふらつく。


おかげでフィイナには迷惑かけてしまうし、気付いた頃には3人は私たちを置いていってしまった。
ムンビョル
ムンビョル
う〜…申し訳ない
フィイン
フィイン
いいんだよ、まだ最初の頃は私もそうだったからさ。
ムンビョル
ムンビョル
あんなに飲んでたのに、酔ってないの?
フィイン
フィイン
んーちょっとだけ酔ってるよ
ムンビョル
ムンビョル
ちょっとだけ、顔赤くなってる
お酒の力で大胆になった私は、フィイナの顔に手を伸ばすとフィイナは驚いた顔をみせた。


今日やっと初めて話せたのに躊躇いがないのが不思議。
フィイン
フィイン
アミーの家禁煙なんだよね。一服していい?
ムンビョル
ムンビョル
うん〜
フィイナに連れられて、人通りがない暗い路地裏に入る。


フィイナ、たばこ吸ってたんだ…


ポケットからタバコを取り出して火をつけるまでの一連の流れがなんだか色っぽくて眺めていたら、フィイナと目があった。
フィイン
フィイン
ビョリも吸う?レギュラーだけど
ムンビョル
ムンビョル
ん〜吸う
レギュラーが一体何かは分からないけど、少し背伸びしたくて強がりで一本もらった。


タバコを口に咥えるだけで分かる、慣れないタバコのフレーバーが口に広がっていく。
フィイン
フィイン
やべ、オイル切れちゃったな。ま、いっか
ムンビョル
ムンビョル
ほんと?別に私はいいよ吸わなくても
フィイン
フィイン
ビョリ、こっち向いて
そう言われてフィイナのほうを向くと、フィイナのタバコの火を私のタバコの先につけた。
フィイン
フィイン
吸って
おぉ、火がついた。


こういうやり方もあるんだな、と思っていたらタバコの苦味が口の中に広がってつい蒸せてしまった。
フィイン
フィイン
あはは、やっぱそうなるよね。ごめん、うちのタバコ14ミリできついからさ
ムンビョル
ムンビョル
けほっ、けほっ…大丈夫
ムンビョル
ムンビョル
あーいう火の付け方もあるんだね?
フィイン
フィイン
知らない?シガーキス
ムンビョル
ムンビョル
え、これキスだったの?
フィイン
フィイン
間接キスみたいな感じかな。
フィイン
フィイン
うちら、またキスしちゃったね
そう言われると意識してしまう。


お酒のせいか、どうしてだろう、フィイナの唇ばかり目に入って無意識に欲している自分がいる。


そっぽ向いてひとくち吸い込んで吐き出した後に、フィイナの手が私の顔に伸びてきて不意にキスをされた。


優しいキスから漂う大人の味と香り。


久々に味わったフィイナの唇の感触に夢中になっている間に、タバコは燃え尽きてしまった。


それをだらしなく道端に捨てると、フィイナからハグを迫られて言わずとも受け入れるどころか私からも求めてしまった。
フィイン
フィイン
ごめん、もう少しこのままでいさせて
私たち外にいるのに、誰に見られてようが関係ない。


月明かりと星たちが優しく2人を照らして、土砂降りだった雨もいつの間にか止んでいた。


それに気が付かないくらいに、夢中になってお互いを強く抱きしめた。


もっと深く愛したい…。


このまま2人で抜け出してしまおうかと、そんな考えがふと私の脳内を過ぎる。
フィイン
フィイン
そろそろ、行こっか。みんなに心配される
ムンビョル
ムンビョル
うん…
路地裏を抜けたら終わると思っていた2人の時間。


でもアミーの家の最寄駅につくまで、ずっと手をかたく繋いでいた。


足並み揃えて歩いていると、ふと窓に2人の姿が映り込む。
ムンビョル
ムンビョル
なんか今日私たちの服似てるね
フィイン
フィイン
そうだね。私たち、恋人同士みたい
その言葉に一瞬耳を疑ったが、フィイナの横顔はすごく幸せそうで


なんだか照れ臭くて、何も言葉が返せなかった。


だから、代わりに手を強く握り返した。


どうしよう。すごく抱きしめたい。


どうして肝心な時に言葉が出てこないのか。
誰がどうみても友達以上の関係なのに。


この幸せがずっと続けばいいのに。


心の底から、そう思った。





ティロン♪
フィイン
フィイン
あ、通知
ジョイ
ジョイ
「チー牛ひとつ特盛り温玉付きで買ってきて♡」
ムンビョル
ムンビョル
陰キャかよ

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