そして例のハーフ会と会う当日。
久しぶりの外の世界に私は緊張とも喜びとも言える謎の感情だった
ずっと引きこもってるのは悪いし、久々に友達が出来るかもしれないからお姉ちゃんには感謝しよう。
服なんてここ数年買ってないから、私なりに頑張っておしゃれしてみたけど、やっぱりなんだかいつもの調子は出ない。
シンプルなTシャツに、セットアップを合わせた簡単なコーデ。これくらいしか持ってないけど、キャップをかぶればなんとか誤魔化せた。
久々の電車というワードに戸惑ってしまった。
中学校なんて近くにあるし、電車に乗る機会なんてなかなかない。
昔はよく、両親についていけば辿り着けたけどお姉ちゃんと2人で大丈夫なのだろうか?
ていうか、お姉ちゃん電車乗れるんだ…
私1人じゃ絶対無理だ。しかも都会の方まで行くなんて…。
最寄りまで到着すると駅のアナウンスが聞こえてくる
〜♪
『まもなく、一番線に電車が参ります』
電車がもう既に到着していて、お姉ちゃんは乗り遅れまいと私の腕を引っ張って走り出した。
ここ数年まともな運動なんてしてないから、早く走れないし、すごく疲れる。
プシューーーーッ……
ギリギリで電車に乗ることができて、私が乗ったところでちょうどドアが閉まった。
久々の運動のせいか、息切れがひどくてまともに喋れやしない。
お姉ちゃんはそんな私の情けない姿をみてずっと笑ってるせいか、他の乗客にすごくみられる。
電車が動き出すと、ゆっくり窓の景色が変わっていく。
私が知らなかった世界、たった一年でこんなに変わってたんだ…。
荒地だった森はここ数年で開拓されて、工場が建っていたり、マンションやショッピングモールも出来ていてとても賑やかだった。
私はそれをぼーっと眺めていた。
ただただ、自分の冒険心をくすぐられてみてるだけで楽しかった。
まるで、世界を飛び回ってたあの頃を思い出すかのように。
バイト、か…
引きこもってた時はまだ中学生で働くことができなかったから、親からドアに挟まれていたなけなしの小遣いで食いつないでいた。
だからまともに遊べやしない、趣味もなければ、友達もいない。
でももう高校一年生になったんだ。
通信制の高校だし、校則はないからバイト始めてみてもいいかな。
どこがいいんだろう。
料理は出来ないから飲食店のキッチンは避けようかな(笑)
ホールとか?でも大きな声出せないな。
どこがいいんだろう、お姉ちゃんに聞いてみよう。
そんなこんなで、お姉ちゃんとアルバイトの話したり最近の街の事情を話していて
ふと窓の外を見るともう私の知ってる景色はどこかに行って、高いビルやマンションが建ってる栄えた街まで出ていた。
思わず、感激して声が出てしまっていた。
最寄りの駅から乗車して、はや50分ほど経過した。
もう既に首都の中にいるらしい。
どうりでこんなに栄えていたわけだ。
気づくの遅すぎかって。
プシューーーーッ……
またまたドアが閉まるギリギリで電車を降りて、途中ドアに私のカバンが挟まるというアクシデントも起こったがなんとか引き抜けた。
あいも変わらず、お姉ちゃんは私に爆笑していて恥ずかしい。
そしてハーフ会と出会う直前にまで来てしまった…
タクシーの中で私の心臓は鳴り止まないまま、緊張で言葉も出ない…
そして大きく息を呑んで、タクシーを降りた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。