第3話

#3 fiancé
869
2020/06/24 21:00
そして例のハーフ会と会う当日。


久しぶりの外の世界に私は緊張とも喜びとも言える謎の感情だった


ずっと引きこもってるのは悪いし、久々に友達が出来るかもしれないからお姉ちゃんには感謝しよう。


服なんてここ数年買ってないから、私なりに頑張っておしゃれしてみたけど、やっぱりなんだかいつもの調子は出ない。


シンプルなTシャツに、セットアップを合わせた簡単なコーデ。これくらいしか持ってないけど、キャップをかぶればなんとか誤魔化せた。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
準備できた?
ムンビョル
ムンビョル
う、うん…お姉ちゃん、大丈夫かなこれ。ダサくない?
お姉ちゃん
お姉ちゃん
全然イケてるよ!十分後の電車乗ろうか
ムンビョル
ムンビョル
(で、電車…)
久々の電車というワードに戸惑ってしまった。


中学校なんて近くにあるし、電車に乗る機会なんてなかなかない。
昔はよく、両親についていけば辿り着けたけどお姉ちゃんと2人で大丈夫なのだろうか?


ていうか、お姉ちゃん電車乗れるんだ…
私1人じゃ絶対無理だ。しかも都会の方まで行くなんて…。
最寄りまで到着すると駅のアナウンスが聞こえてくる
〜♪

『まもなく、一番線に電車が参ります』
お姉ちゃん
お姉ちゃん
やばい!走るよ!!w
ムンビョル
ムンビョル
え、まっ…お姉ちゃん!?
電車がもう既に到着していて、お姉ちゃんは乗り遅れまいと私の腕を引っ張って走り出した。


ここ数年まともな運動なんてしてないから、早く走れないし、すごく疲れる。


プシューーーーッ……


ムンビョル
ムンビョル
はぁ…はぁ…ゼェ…はぁ…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
あははw めっちゃ疲れてんじゃん!元女バスそんなんでいいのかよ〜
ムンビョル
ムンビョル
もう学校行かなくなってどんだけ経ってると思ってんの!夏だしこんな走ったら…はぁ…はぁ…そら誰だってね…
ギリギリで電車に乗ることができて、私が乗ったところでちょうどドアが閉まった。


久々の運動のせいか、息切れがひどくてまともに喋れやしない。


お姉ちゃんはそんな私の情けない姿をみてずっと笑ってるせいか、他の乗客にすごくみられる。
ムンビョル
ムンビョル
もういいよ!お姉ちゃん、もう黙って…!!
お姉ちゃん
お姉ちゃん
くくく…っ、ごめん。面白くて。
電車が動き出すと、ゆっくり窓の景色が変わっていく。


私が知らなかった世界、たった一年でこんなに変わってたんだ…。


荒地だった森はここ数年で開拓されて、工場が建っていたり、マンションやショッピングモールも出来ていてとても賑やかだった。


私はそれをぼーっと眺めていた。


ただただ、自分の冒険心をくすぐられてみてるだけで楽しかった。


まるで、世界を飛び回ってたあの頃を思い出すかのように。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
びっくりしたでしょ。
ムンビョル
ムンビョル
えっ?
お姉ちゃん
お姉ちゃん
あんたが引きこもってる間にね、この街はだいぶ栄えてきたんだよ
お姉ちゃん
お姉ちゃん
まぁ、元々住んでた国よりかは全然劣るけどね笑
ムンビョル
ムンビョル
でも、田舎ながらだよね。すごくいいと思う
お姉ちゃん
お姉ちゃん
怖くないなら、今度あそこのショッピングモール行こっか。お姉ちゃんが服買ったげる!
ムンビョル
ムンビョル
え、そんな悪いよ!お姉ちゃんお小遣いそんなにないでしょ…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
あっははは!なーに言ってんの。もうバイトが出来る歳でしょ、私もあんたも!
ムンビョル
ムンビョル
あっ、そっか…
バイト、か…


引きこもってた時はまだ中学生で働くことができなかったから、親からドアに挟まれていたなけなしの小遣いで食いつないでいた。


だからまともに遊べやしない、趣味もなければ、友達もいない。


でももう高校一年生になったんだ。


通信制の高校だし、校則はないからバイト始めてみてもいいかな。


どこがいいんだろう。
料理は出来ないから飲食店のキッチンは避けようかな(笑)


ホールとか?でも大きな声出せないな。


どこがいいんだろう、お姉ちゃんに聞いてみよう。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
バイト?やりたいの?
ムンビョル
ムンビョル
うん、お小遣いじゃ食い繋ぐのも大変だから。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
あ〜そうだね。ママ最近外にいて家事も最低限だから私もしばらく外食だったな
ムンビョル
ムンビョル
お姉ちゃんは何をしてるの?
お姉ちゃん
お姉ちゃん
私?ピザ屋で働いてるよ!ビョリも来る?
ムンビョル
ムンビョル
え、私料理できないよ…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
大丈夫!簡単だから。食材切って、あとは生地こねたりトッピングするだけだし!最初は電話とかから始めてたけど、あれなら声張らないし向いてるんじゃない?
ムンビョル
ムンビョル
そこにしようかな…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
それでいいなら今度店長に伝えとくよ?
ムンビョル
ムンビョル
うん!お願い
お姉ちゃん
お姉ちゃん
決まり〜初めてのアルバイト楽しみだね♪
お姉ちゃん
お姉ちゃん
くれぐれもお姉ちゃんの足引っ張らないようにね^ ^
ムンビョル
ムンビョル
あっ、ハイ…。
そんなこんなで、お姉ちゃんとアルバイトの話したり最近の街の事情を話していて


ふと窓の外を見るともう私の知ってる景色はどこかに行って、高いビルやマンションが建ってる栄えた街まで出ていた。


思わず、感激して声が出てしまっていた。
ムンビョル
ムンビョル
うぉ〜すげえ
お姉ちゃん
お姉ちゃん
すげえってなによ(笑)あんたの住んでた所のほうがよっぽど都会でしょうが!田舎モンかって!ペシッ
ムンビョル
ムンビョル
いてっ!た、たしかに…笑
お姉ちゃん
お姉ちゃん
そんな反応になって無理はないけど、いい加減慣れてよね。笑
お姉ちゃん
お姉ちゃん
あと数分でつくよ。
最寄りの駅から乗車して、はや50分ほど経過した。


もう既に首都の中にいるらしい。


どうりでこんなに栄えていたわけだ。
気づくの遅すぎかって。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
降りるよ!
ムンビョル
ムンビョル
え、えここ!?
ムンビョル
ムンビョル
早く言ってよ!
プシューーーーッ……


またまたドアが閉まるギリギリで電車を降りて、途中ドアに私のカバンが挟まるというアクシデントも起こったがなんとか引き抜けた。


あいも変わらず、お姉ちゃんは私に爆笑していて恥ずかしい。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
じゃあ、ここから友達の高校までバスだね。タクシーもあるけど、どっちにしよう…
ムンビョル
ムンビョル
どうせタクシーでしょ
お姉ちゃん
お姉ちゃん
当たり。乗るよ!
ムンビョル
ムンビョル
だと思った。ほんとせっかちなんだから…
お姉ちゃん
お姉ちゃん
⚪︎⚪︎高校までお願いします!
そしてハーフ会と出会う直前にまで来てしまった…


タクシーの中で私の心臓は鳴り止まないまま、緊張で言葉も出ない…


そして大きく息を呑んで、タクシーを降りた。
お姉ちゃん
お姉ちゃん
よーし!気合い入れてくぞ!!(?)
ムンビョル
ムンビョル
は?←

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