アイナに急かされて慌ただしいまま2人で洗面台の所へ向かった。
言われた通り、洗面台の横にある洗濯機に2人分の服が置いてあったけど雑に置かれていた。
一目見てアイナだなって分かった。
これだから習慣が怖いよ…笑
慣れたようにタオルを取り出したフィイナ。
自分の家かよ…笑
………えっ。
なんだかそういう流れだなって、勘付いてはいたけど…
少しだけ顔を赤くしながらこっちを見つめるフィイナと、その先を考えていると思考回路がショートしそうに…
いやいやいやだめだめだめ
みんなに怪しまれちゃう。アミーの家なのに。
それに見られるの恥ずかしいし…なにより
止められる自信が…ない。
あぁ…焦った。
今すごく体が熱い。
最低だな、私。フィイナのこと想像して、こんなんになってるなんて…。
今まで経験はそれなりにしてきたはずなのに、不慣れに振る舞う自分が恥ずかしい。
このままみんなに顔を合わせるのはなんだか気が引けるから、一人廊下で酒瓶を片手に頭を冷やしていた。
すっきりした味わいと微炭酸で多少シャキッとしたけど、
もしあのまま一緒にお風呂に入っていたらどうしてたんだろう。
きっとキスどころでは済ませられなかっただろうな…
またあの夜のことを思い出す。
まだフィイナの全てを見たわけじゃないけど、あの時触れた感触から誰よりも女性らしいのが伝わってきてた。
これ以上思い出すまいと自分を追い込むようにお酒をグイッと流し込み、髪をぐちゃぐちゃに掻き回す。
すると、壁の奥から鼻歌が聞こえてきた…
〜♪
私の声は聞こえてないだろうな。
浴室の中で声が響き渡って、フィイナの綺麗な声をより一層美しく引き立たせる。
なんの歌だろう。
すごく優しくて、でもどこか切ないメロディー。
目を離せば今にも消えてしまいそうな…フィイナにぴったりの歌。
フィイナの声に夢中になっていると、気がついたころにはお酒を飲み切っていた。
瓶も空っぽになったし、キッチンの端に一旦置いて洗面所に向かうことにした。
フィイナ専用の着替えかな。少し小さめの服。
出てきたフィイナが着替えやすいように、自分の分ときちんと分けて置いておいた
その時…
ガラッ
浴室のドアが開く音がしてそっちを向くと、まさかここに私がいると思っていなかったのか…遂に見てしまった
が、咄嗟に目を逸らした。だからしっかりは見ていないけど、どうしよう。心臓が鳴り止まない。
こんなにドキドキしていること、フィイナにバレたくなくてタオルを渡したらさっさと出ようとした…けど…
狭い脱衣所の中、私はなるべくフィイナのほうを向かないようにしていた。
けど、やっぱり気になって仕方がない。ダメっていうのは分かってる。
でも気配以上会話未満のこの状態で、フィイナが何を思ってるのか…
やっぱ私、出た方がいいのかな。
フィイナのこの言葉が嘘だってくらい分かってる。
だって、確かにフィイナが手に持ってるタオルはバスタオルよりは小さいけど届かないほどではない。
気にしてないようなフリだけして、誘われるがままにフィイナの背中に触れたその瞬間…
乱暴に抱きついたせいでフィイナが少しバランスを崩し、壁に手をついた。
分かってる。でも、抵抗してくれないと、私はこのまま…
お願い、フィイナ止めて…!
ボディーソープが香るフィイナの背中に舌をゆっくりと這わせ、うなじにキスをした
壁に手をつくその反対側の手で口を塞いで必死に声を抑えるフィイナ。
お互い分かってるんだ…でも、今更止めることなんて出来ないよ。
だって、ずっとこうしてフィイナに触りたかったんだから…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。