第10話

#10 Q
707
2020/08/28 19:37
あの日そのまま家に帰り、疲れ切っていた私は部屋に入るなりすぐベッドへばたんきゅーして長い間寝てしまっていた。


起きた頃には22時。
ムンビョル
ムンビョル
やば…バイトばっくれじゃん…!
焦った私は怒られないか不安と闘いながら、バイト先に謝罪の電話をいれた。
ムンビョル
ムンビョル
お疲れ様です…あ、はい…すみません、寝過ごしてしまって…
ムンビョル
ムンビョル
ありがとうございます…べ、別に何もないですよ!!以後気をつけます、はい…すみません
電話に出てくれたのは運悪く店長で、声を聞いた瞬間

やっちまったぁ…!!

という焦りに駆られたが、幸いなことにその日はあまり忙しくなく店長は怒ったなかったようだ。


普段は低姿勢で誰にでも平等かつ優しい店長だけど、曲がったことは大嫌いということを知っていたから本当に焦った。


電話を切り、携帯の待ち受け画面を見るとたくさんある通知の中にフィイナからの不在着信があった。


やっちまったぁ…!(本日2回目)


もう仕事いっちゃったかな?でも声だけでも聞きたいな。


仕事中だったら、まぁ、電話切るよね…


意を決してフィイナに電話をかけ直した。


プルルルルルルルル……
フィイン
フィイン
もしもし?起きた?笑
ムンビョル
ムンビョル
ごめん、寝てた…
フィイン
フィイン
えへ、おはよぉ
あれ?なんか昨日のクールな印象のフィイナとなんか違う…


やけに幼いというか、甘々?
ムンビョル
ムンビョル
おはよう…?の時間でもないか
ムンビョル
ムンビョル
今仕事中?
フィイン
フィイン
ううん、結局お休みって言われちゃったよ
そういうと残念そうに深いため息をついたのが電話口から聞こえてきた
フィイン
フィイン
どうせお休みだったんなら、もう少し一緒にいたかったね?
あぁ、そういうことか。


ため息の意味を理解したと共に、可愛くて堪らなくて顔はすんごい気持ち悪いくらいにニヤついてるけど態度に出さないように堪えてた。
ムンビョル
ムンビョル
そ、そうだね…
フィイン
フィイン
電話出てくれなくて寂しかったよ
2人になるとこんな甘々なんだ…なんか、なんか…


可愛すぎやろボケェ…(?)
ムンビョル
ムンビョル
ほんとにごめんね?でもフィイナそゆこというキャラだったんだ
フィイン
フィイン
ん?きらい?
顔は見えないけど声からして切なげな気持ちなのが伝わってきて


守りたい衝動というか、ギャップがすごい…
ムンビョル
ムンビョル
ううん、かわいい
ムンビョル
ムンビョル
私も声聞けてよかったよ!
フィイン
フィイン
んふ〜そう?//
フィイン
フィイン
とかいって違う女にも同じこと言ってるんじゃないの〜?んんん??
あああああだめだよフィイナ


気持ちが暴走していく。

私たちは恋人じゃないけど、明らかにわかるフィイナの嫉妬が可愛くて今にも叫び出しそうな勢い。


もしフィイナが恋人になってくれたら、どんな顔を見せてくれるんだろう…
ムンビョル
ムンビョル
言ってないよ〜そもそも友達そんないないって笑
フィイン
フィイン
あ!そういえば気になってたんだ、聞いていい?
ムンビョル
ムンビョル
なーに?
フィイン
フィイン
ビョリの過去の恋人のこと!ビョリのこともっと知りたくてさ。どんな恋してるんだろうって?
ムンビョル
ムンビョル
え〜フィイナも教えてくれる?
フィイン
フィイン
私?ロクな恋愛してないよ笑 最後に恋人できたのいつなの?
ムンビョル
ムンビョル
ん〜中3!でも好きってわけじゃなかったんだ
フィイン
フィイン
おぉ?やるね〜ビョリ〜笑
ムンビョル
ムンビョル
ちがうよ!わけがあって笑
その時ちょっと…なんていうの、バレちゃダメな恋してたんだ
フィイン
フィイン
え?禁断の恋?なにそれ気になる〜だれだれ?
ムンビョル
ムンビョル
せ、先生…//
フィイン
フィイン
ひゃ〜!ビョリったら年上たぶらかして、嫉妬しちゃうな〜
ムンビョル
ムンビョル
過去の話だよっ…もう終わってるし。
フィイン
フィイン
その人とはどこまでいったの?
ムンビョル
ムンビョル
いちおう…最後まで…
フィイン
フィイン
え!!やばいじゃん〜罪だね笑
その時のカモフラの恋人は男の子?
ムンビョル
ムンビョル
うん、彼氏だったけどそっちも色々あってさ…私利用しちゃったんだよね
フィイン
フィイン
彼氏くんがビョリのこと好きだったってこと?
ムンビョル
ムンビョル
そうらしいんだけど…完全に舐めてて。どうせなにもする勇気ないって思ってたらキスされちゃって。
ムンビョル
ムンビョル
それを先生に見られちゃったの
フィイン
フィイン
あちゃ〜
ムンビョル
ムンビョル
付き合ってることは知ってたし先生が本命だって伝えてあるんだけど、結局キスしてるところみちゃったら誰でも…ね?
ムンビョル
ムンビョル
誤解を解けないまま、先生が違う学校に行っちゃって嫌な終わり方しちゃった。
フィイン
フィイン
へ〜…なんか、ビョリおとなしいからピュアな恋愛でもしてるのかと思ったよ
ムンビョル
ムンビョル
そんなことないよ。笑
ムンビョル
ムンビョル
てか!うち全部話したしフィイナのこと教えてよ!
フィイン
フィイン
ロクな恋してないって〜グレてたからさ。今はないけどワンナイトばっかりだよ。あ、でも
ムンビョル
ムンビョル
でも?
フィイン
フィイン
最後は女の子に恋したけど、結局いい感じになってたって勝手に舞い上がって、あっちに恋人できて失恋したかな…それが最後の記憶
ムンビョル
ムンビョル
大恋愛じゃん
フィイン
フィイン
すごい傷付いたよ〜人生ではじめてヤケ酒したし…それくらい、ハマっちゃってた
フィイナがこれほど好きになるのは、一体どんな人だったんだろう


勝手に舞い上がって


って言葉がどうしても引っかかっる。

普段はサバサバしてるフィイナだから現実を認める為なんだろうけど
なんだか自分の気持ちを飲み込んでる感じがして、私と似たものを感じて


嫉妬よりも、同情が勝った…
フィイン
フィイン
まぁ、でも…本気で好きってわけじゃなかったと思うよ。今考えるとね
ムンビョル
ムンビョル
え?なんで?
フィイン
フィイン
その子に出会うまで私、女の子を好きになれると思ってなかったの
ムンビョル
ムンビョル
あ〜
フィイン
フィイン
初めて"こっちの人"と出会ったから知りたいが為の勘違いかな…でもいい勉強になったよ
ムンビョル
ムンビョル
フィイナは…
ムンビョル
ムンビョル
なんか大人だね
フィイン
フィイン
そんなことない
フィイン
フィイン
まだ幼いよ…でもビョリにもいつかわかる時がくると思うの
その言葉になんだか他人事かのような感情をかんじた。


フィイナが私を好きで、私がフィイナを好きなことを知ってるんだったらこんなこと言わないはずなのに


なんだか幸先不安じゃないけど、どこか寂しさを覚えてしまった
ムンビョル
ムンビョル
…分かりたくないな
フィイン
フィイン
なんでよ笑
ムンビョル
ムンビョル
私、フィイナのこと好きだもん
フィイン
フィイン
ムンビョル
ムンビョル
だから、分かりたくないな
ムンビョル
ムンビョル
告白じゃないけど、ただフィイナの歌声に惚れたの。まだまだお互いのこと何も知らないじゃん?
フィイン
フィイン
そうだね…
フィイン
フィイン
ビョリが私のせいで寂しい思いをしないことを願うよ…笑
ムンビョル
ムンビョル
いやどゆこと笑
するとここで一旦、フィイナの音声が途切れる。


この時私は疑いもしなかった、音声が途切れる意味を。


これが私を狂わせることを…
フィイン
フィイン
ごめん!やっぱ仕事だったみたい
ムンビョル
ムンビョル
そっか!いってらっしゃい
フィイン
フィイン
ごめんね。また声聞かせて
ムンビョル
ムンビョル
うん!頑張ってね。連絡待ってるよ〜
フィイン
フィイン
うん!じゃ、またね
ここで電話が終わる。


久々にこんな夢中になったから、フィイナが行った後に急な虚無感に襲われる。


あれ、私いつもどうしてたっけ? 


たった一日で自分のこと忘れしまうなんてね。

フィイナの言ってたこと、一生わかりたくないけど…

延々と頭の中にその言葉が回って離れない。


"ビョリが私のせいで寂しい思いをしないことを願うよ"




フィイナの心が見えない
なにがあったんだろう、彼女の過去には…

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