あの日そのまま家に帰り、疲れ切っていた私は部屋に入るなりすぐベッドへばたんきゅーして長い間寝てしまっていた。
起きた頃には22時。
焦った私は怒られないか不安と闘いながら、バイト先に謝罪の電話をいれた。
電話に出てくれたのは運悪く店長で、声を聞いた瞬間
やっちまったぁ…!!
という焦りに駆られたが、幸いなことにその日はあまり忙しくなく店長は怒ったなかったようだ。
普段は低姿勢で誰にでも平等かつ優しい店長だけど、曲がったことは大嫌いということを知っていたから本当に焦った。
電話を切り、携帯の待ち受け画面を見るとたくさんある通知の中にフィイナからの不在着信があった。
やっちまったぁ…!(本日2回目)
もう仕事いっちゃったかな?でも声だけでも聞きたいな。
仕事中だったら、まぁ、電話切るよね…
意を決してフィイナに電話をかけ直した。
プルルルルルルルル……
あれ?なんか昨日のクールな印象のフィイナとなんか違う…
やけに幼いというか、甘々?
そういうと残念そうに深いため息をついたのが電話口から聞こえてきた
あぁ、そういうことか。
ため息の意味を理解したと共に、可愛くて堪らなくて顔はすんごい気持ち悪いくらいにニヤついてるけど態度に出さないように堪えてた。
2人になるとこんな甘々なんだ…なんか、なんか…
可愛すぎやろボケェ…(?)
顔は見えないけど声からして切なげな気持ちなのが伝わってきて
守りたい衝動というか、ギャップがすごい…
あああああだめだよフィイナ
気持ちが暴走していく。
私たちは恋人じゃないけど、明らかにわかるフィイナの嫉妬が可愛くて今にも叫び出しそうな勢い。
もしフィイナが恋人になってくれたら、どんな顔を見せてくれるんだろう…
フィイナがこれほど好きになるのは、一体どんな人だったんだろう
勝手に舞い上がって
って言葉がどうしても引っかかっる。
普段はサバサバしてるフィイナだから現実を認める為なんだろうけど
なんだか自分の気持ちを飲み込んでる感じがして、私と似たものを感じて
嫉妬よりも、同情が勝った…
その言葉になんだか他人事かのような感情をかんじた。
フィイナが私を好きで、私がフィイナを好きなことを知ってるんだったらこんなこと言わないはずなのに
なんだか幸先不安じゃないけど、どこか寂しさを覚えてしまった
するとここで一旦、フィイナの音声が途切れる。
この時私は疑いもしなかった、音声が途切れる意味を。
これが私を狂わせることを…
ここで電話が終わる。
久々にこんな夢中になったから、フィイナが行った後に急な虚無感に襲われる。
あれ、私いつもどうしてたっけ?
たった一日で自分のこと忘れしまうなんてね。
フィイナの言ってたこと、一生わかりたくないけど…
延々と頭の中にその言葉が回って離れない。
"ビョリが私のせいで寂しい思いをしないことを願うよ"
フィイナの心が見えない
なにがあったんだろう、彼女の過去には…
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。