日鞠さんに指摘されて俺は慌てて毛づくろいをし始めた。
あ、毛並みがめっちゃ綺麗になった。
やばいやばい……完全バレた。
日鞠さんは天然なのか……?
こちらとしては都合がいいが……
ゆりあのやつが俺の尻尾を踏みやがった……
痛い……
ピロピロリーン ピロピロリーン
そう言って日鞠さんは綺麗な細い指でスマホの画面をスワイプした。
可愛い笑顔を向けられたからには挨拶し返さなくては。
精一杯の可愛い声を出してみた。
しかし日鞠さんが出て行った後、ゆりあはそんな俺を見下ろしながら、一言。
その時、部屋のドアの向こうからガタンッと音がした。
ゆりあが慌ててドアを開けるとそこには……日鞠さんが立っていた。
こいつ……誤魔化すのが下手くそすぎる。
普通は喋れねぇよ。
そう言い残して、出て行ってしまった。
残された俺たちは顔を見合わせてポカーンとしていた。
バレた……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。