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第10話

10話 パパの歌はガサガサ
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2021/04/04 09:06
白玉 悠里
白玉 悠里
「「京極君が、一生
私のためだけに歌を歌ってくれるなら
その話…考えても良いよ」」
白玉悠里ゆうり俺が出会った中で
一番苦手なタイプだと思った奴。
そんな奴と、俺が…高校を卒業して
結婚する事になるなんて思いたくもなかった。
いや、今でも嘘なんじゃないかって
思うのに、気がつけば娘までいる有り様だ。
京極 悠里
京極 悠里
ちょっと、待って
京極 一冴
京極 一冴
あ?
京極 奏
京極 奏
チャック閉まらない
京極 一冴
京極 一冴
どれ?
京極 奏
京極 奏
ジャンバーのやつ、取れないの
俺は、しゃがむと
かなでのジッパーをグイッと引っ張ってみた。
バキッ
京極 一冴
京極 一冴
あっ
京極 奏
京極 奏
京極 悠里
京極 悠里
どう?直った
京極 奏
京極 奏
あああ、パ、パパが…
パパがかなでのジャンバー壊した
京極 奏
京極 奏
うわあああああああん
これ、すきだったのにいいいい
京極 一冴
京極 一冴
・・・
しまったという顔をしている俺に、
ため息をこぼしている悠里ゆうり
京極 悠里
京極 悠里
力任せはダメだって
いつも言ってるでしょ?
京極 一冴
京極 一冴
悪い
京極 悠里
京極 悠里
ちょっとは、学習してよ?
京極 一冴
京極 一冴
・・・悪い
悠里は、かなでの元に駆け寄り抱き上げると、
よしよしと顔を拭いてあげた。
京極 悠里
京極 悠里
チャック、後で
ママもお家帰って見てみるから
京極 悠里
京極 悠里
ダメだったら、パパに
新しいの買ってもらおう?
京極 奏
京極 奏
うん…
京極 一冴
京極 一冴
買うって、俺が?
京極 悠里
京極 悠里
そうだよ、私
しばらく仕事あるから
京極 悠里
京極 悠里
奏とお店行ってきて
京極 一冴
京極 一冴
俺だって、忙しいし…
京極 奏
京極 奏
パパ嫌いっ
京極 悠里
京極 悠里
ちょっと、パパ💢
京極 一冴
京極 一冴
わかったよ、行くよ
行くから黙れって…
京極 奏
京極 奏
パパ黙れ
京極 一冴
京極 一冴
もう、嫌だ…二人とも
俺は、悠里から奏を受け取ると
遊園地の入り口で、買っていた券を渡す。
京極 奏
京極 奏
パパ、あの車のりたいっ!
京極 一冴
京極 一冴
あれは、身長制限あるから
奏は、まだ乗れねえの
京極 奏
京極 奏
まだ?だめ
京極 一冴
京極 一冴
駄目
京極 奏
京極 奏
うがあああっ!
京極 一冴
京極 一冴
いたっ!髪の毛引っ張んなって
おいっ
ジタバタと仰け反りながらも、なんとか
奏を落とさないように抱えていた。

悠里は、後ろからついてきながらも
ケタケタと笑っていた。
京極 奏
京極 奏
あ!ママ笑ってる
京極 一冴
京極 一冴
良いの、ママは
笑うのが好きなんだよ
京極 奏
京極 奏
ママ笑うの好きなの?
京極 一冴
京極 一冴
ああ、たぶんな
京極 悠里
京極 悠里
ママはね、笑うのと
パパの歌が好きなのだ!
京極 奏
京極 奏
ええ、へんなの
京極 悠里
京極 悠里
ええ?
おかしい?
京極 奏
京極 奏
だって、パパの声
ちょーガザガザだよ?
京極 一冴
京極 一冴
ふう…
俺の声、娘にまで
ガサガサとか言われんのかよ…
京極 奏
京極 奏
でも、パパのカラオケ
ちょーおもしろいよねー
京極 悠里
京極 悠里
そうそう!
わかってるじゃん、奏〜
ぐりぐりと、奏の髪を
ボサボサにしている悠里は
幸せそうに見えた。
京極 奏
京極 奏
あ、パパも笑ってるよー
京極 一冴
京極 一冴
笑ってねえよ
京極 悠里
京極 悠里
え?
もう一回笑ってみて
京極 一冴
京極 一冴
だから、笑ってねえの!!
京極 奏
京極 奏
がぷっ
京極 一冴
京極 一冴
いでえええ!!
なぜか、娘に首を
かじられ目から涙が滲む。
京極 奏
京極 奏
ママをいじめちゃダメでしょ!
京極 悠里
京極 悠里
そうそう!
だめでしょ
京極 一冴
京極 一冴
ああ、もう!!
うぜええええ
こんなに、叫んでも
娘は怯えることもなく

あれして、これやってと
俺に指図する。

小さい女王さまと、
娘を操る怖い嫁…


二人に囲まれながら、
今日も忙しくも楽しい生活を
俺は、送っている。


END


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