白玉悠里俺が出会った中で
一番苦手なタイプだと思った奴。
そんな奴と、俺が…高校を卒業して
結婚する事になるなんて思いたくもなかった。
いや、今でも嘘なんじゃないかって
思うのに、気がつけば娘までいる有り様だ。
俺は、しゃがむと
奏のジッパーをグイッと引っ張ってみた。
バキッ
しまったという顔をしている俺に、
ため息をこぼしている悠里。
悠里は、奏の元に駆け寄り抱き上げると、
よしよしと顔を拭いてあげた。
俺は、悠里から奏を受け取ると
遊園地の入り口で、買っていた券を渡す。
ジタバタと仰け反りながらも、なんとか
奏を落とさないように抱えていた。
悠里は、後ろからついてきながらも
ケタケタと笑っていた。
俺の声、娘にまで
ガサガサとか言われんのかよ…
ぐりぐりと、奏の髪を
ボサボサにしている悠里は
幸せそうに見えた。
なぜか、娘に首を
かじられ目から涙が滲む。
こんなに、叫んでも
娘は怯えることもなく
あれして、これやってと
俺に指図する。
小さい女王さまと、
娘を操る怖い嫁…
二人に囲まれながら、
今日も忙しくも楽しい生活を
俺は、送っている。
END
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。