館員は、まるでむずかしい数学の問題にでもぶっつかったようにしきりに小首をかたむけています。
総監がたずねますと、館員たちは、確信にみちたようすで、
と、口をそろえて答えるのです。
館員は、あくまでいいました。
刑事部長は、くやしまぎれに、そんなことでも言ってみないではいられませんでした。
明智小五郎が、まるで二十面相を弁護でもするようにいいました。彼は老館長北小路博士と、さも仲よしのように、ずっと、さいぜんから手をにぎりあったままなのです。
警視総監が、ふしぎそうに名探偵の顔を見て、たずねました。
すると明智は窓に近づいて、博物館の裏手のあき地を指さしました。
そのあき地には、博物館創立当時からの、古い日本建ての館員宿直室が建っていたのですが、それが不用になって、数日前から、家屋のとりこわしをはじめ、もうほとんど、とりこわしも終わって、古材木や、屋根がわらなどが、あっちこっちにつみあげてあるのです。
刑事部長は、びっくりしたように明智を見ました。
明智のさしずに、館員のひとりが、何かわけがわからぬながら、大急ぎで階下へおりていきましたが、まもなく中村捜査係長とひとりの警官をともなって帰ってきました。
明智がさっそくたずねますと、警官は総監の前だものですから、ひどくあらたまって、直立不動の姿勢で、
と答えました。
警官は、あの古材木がどうしたんです、といわぬばかりの顔つきです。
明智は一同を見まわして、おどろくべき種明しをしました。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。