第15話

怪人二十面相-少年探偵 2-
61
2020/05/28 08:57
電話が切れて、十分もたったかと思われたころ、ひとりのかわいらしい少年が、羽柴家の玄関に立って、案内をこいました。秘書が取りつぎに出ますと、その少年は、
???
ぼくは壮二君のお友だちです。
と自己紹介をしました。
秘書
壮二さんはいらっしゃいませんが。
と答えると、少年は、さもあらんという顔つきで、
小林芳雄
おおかた、そんなことだろうと思いました。では、おとうさんにちょっと会わせてください。ぼくのおとうさんからことづけがあるんです。ぼく、小林っていうもんです。
と、すまして会見を申しこみました。
 秘書からその話を聞くと、壮太郎氏は、小林という名に心あたりがあるものですから、ともかく、応接室に通させました。
 壮太郎氏がはいっていきますと、りんごのようにつやつやしたほおの、目の大きい、十二―三歳の少年が立っていました。
小林芳雄
羽柴さんですか、はじめまして。ぼく、明智探偵事務所の小林っていうもんです。お電話をくださいましたので、おうかがいしました。
 少年は目をくりくりさせて、はっきりした口調でいいました。
羽柴壮太郎
ああ、小林さんのお使いですか。ちとこみいった事件なのでね。ご本人に来てもらいたいのだが……。
 壮太郎氏がいいかけるのを、少年は手をあげてとめるようにしながら答えました。
小林芳雄
いえ、ぼくがその小林芳雄です。ほかに助手はいないのです。
羽柴壮太郎
ホホウ、きみがご本人ですか。
壮太郎氏はびっくりしました。と同時に、なんだか、みょうにゆかいな気持になってきました。こんなちっぽけな子どもが、名探偵だなんて、ほんとうかしら。だが、顔つきやことばづかいは、なかなかたのもしそうだわい。ひとつ、この子どもに相談をかけてみるかな。
羽柴壮太郎
さっき、電話口で腕ききの名探偵といったのは、きみ自身のことだったのですか。
小林芳雄
ええ、そうです。ぼくは先生から、るす中の事件をすっかりまかされているのです。
少年は自信じしんたっぷりです。
羽柴壮太郎
今、きみは、壮二の友だちだっていったそうですね。どうして壮二の名を知っていました。
小林芳雄
それくらいのことがわからないでは、探偵の仕事はできません。
実業雑誌にあなたのご家族のことが出ていたのを、切りぬき帳でしらべてきたのです。
電話で、人の一命にかかわるというお話があったので、早苗さんか、壮二君か、どちらかがゆくえ不明にでもなったのではないかと想像してきました。
どうやら、その想像があたったようですね。
それから、この事件には、例の二十面相の賊が、関係しているのではありませんか。
 小林少年は、じつにこきみよく口をききます。
 なるほど、この子どもは、ほんとうに名探偵かもしれないぞと、壮太郎氏はすっかり感心してしまいました。
 そこで、近藤老人を応接室に呼んで、ふたりで事件のてんまつを、この少年にくわしく語り聞かせることにしたのです。

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