第7話

「アイヌの少女」
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2022/08/01 23:46
杉元佐一
あなたさん、あんたが背負ってるやつはなんだ?
それにその服も....見たことねぇ布地だ。
あなた
ん?(リュックと服の事か....?)
あなた
あー....おばあちゃんが作ってくれたんです(嘘)
杉元佐一
へぇ、あなたさんのおばあさんはすげぇんだな
あなた
そんなことn....!
杉元佐一


























杉元とあなたは驚いた





































































































先程2人を殺そうとした後藤が、雪に埋もれていたのだ


杉元佐一
なんだこりゃ
あなた
逃げる勢いで埋もれたとかですかね
杉元佐一
まさか。とりあえず出してやろう。
あなた
はい。

杉元と協力して後藤を引っ張り出した
杉元佐一
あなた

後藤は、はらわたが無くなっていた

杉元佐一
はらわたが無くなっている....
あなた
!杉元、さん...これ....








すぐそばに、ヒグマの足跡があった









杉元佐一
ヒグマが食い残しをここに埋めたんだ...

食いきれない獲物は土をかぶされ土饅頭どまんじゅうにされる。
ヒグマの土饅頭は「おれのものだ」という宣言である。

杉元佐一
首が折れてる
あなた
悲鳴を上げる間も与えられず
殺されたんでしょうね
杉元佐一
だろうな....ヒグマに出くわすなんて 
ツイてないなあんたも.......!?

杉元が後藤の首元を触りながら喋っていると
突然杉元が後藤の着ていた服を脱がした

杉元佐一
オイ...オイオイ...どういうことなんだ?
こりゃあ....
あなた
どうしたんです杉元さ....!?























































後藤の背中には、ヤクザのモンモンとは違う入れ墨が書かれていた

杉元佐一
あんたがさっき話してた
囚人のひとりってことか?
あなた
ホラ話じゃなかったんですね....
どおりで詳しかったわけです
杉元佐一
これが、金塊の在り処をしるした
入れ墨だってのか!!

杉元とあなたは辺りをキョロキョロと見回した

杉元佐一
ここにいるのはまずい
早く違う場所に死体を移さないと...
埋蔵金の手がかり...
ヒグマが戻ってきてこいつを食っちまう!


途端、ばりっ、と音がした


杉元佐一
あなた

音がした方へと首をむけると
そこには木にしがみついている小熊がいた。

杉元佐一
なんだ小熊か....
あなた
....待ってください杉元さん。
小熊がいるということは_____









































































『近くに母熊がいるのでは....』
























































「フォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!!!」







杉元佐一
あなた

親熊が、いた。


杉元が咄嗟に持っていた銃をヒグマに向けようとしたが
負い革が足に引っかかってしまった



ヒグマは、あなたと杉元に向かって走ってきた
あなた
(こっちに向かってきてる....!!)

野生の鹿も追いかけて仕留める恐るべき瞬発力と持久力。
ヒグマが時速60キロのトラックと並走し続けた証言もある。
杉元佐一
おおッ!
あなた
ッ....!

すると、運良く雪で足場が悪かったおかげで2人は
ゴロゴロと雪の坂を転がってゆき、倒木によって止まった

あなた
クソ....
杉元佐一
畜生ッ!速すぎるだろ!
あなた
!杉元さん....





2人のすぐ後ろに、もうヒグマはいた















「食われる」と覚悟した2人だったが、突然矢が飛んできてヒグマに刺さった





「ギャア"ッ!!」


2人は矢が飛んできた方を見た

































































そこにいたのは、アイヌの少女だった。

杉元佐一
アイヌ....
あなた
アイヌ....

ヒグマは悶え苦しんでいる

離れろ。トリカブトの根やアカエイの毒針を混ぜた即効性の毒矢だが...ヒグマなら10歩は動ける。

アイヌ民族の毒矢には効力を強めるために様々な物が混合されその製法は各家で異なり秘伝として受け継がれてきた。























そしてしばらくして、ヒグマは死んだ。
あなた
これ...死んだんですか?
逆立っていた体毛がねている。死んだ。
杉元佐一
なんて爪をしてやがるんだこいつは....
バケモノだ。
あなた
こんなのでひっかかれたらたまりませんね。

するとアイヌの少女が刃物を取り出し、ヒグマに近寄った

杉元佐一
何やってんだ?
毒矢が刺さったまわりの肉を取り除く。
そうしないと毒が強いから肉も毛もダメになる

アイヌの少女が、後藤に目を移した

その男、死んでるのか?
杉元佐一
あぁ。ハラワタ全部食われて埋められてた。
その母熊にやられたんだ。
母熊?
あなた
小熊が木に登っていたんです。
その下の穴から母熊が飛び出してきました。
穴からでてきた?それは変だ
冬ごもりの穴から出たばかりの熊は何も食べない。胃が縮んでるからすぐに食えない。子供を守るために近づいた人間を襲ったとしても肉まで食わない。

アイヌの少女がヒグマの腹を斬り、胃を見た

ほらやっぱり。胃が空っぽだ。
杉元佐一
じゃあオッサンを食ったのは別の熊か。
小熊が冬ごもりの巣穴から出て木に登っていたのもおそらく別の熊が近づいたので母熊が避難させたんだ。
まずいことになったぞお前ら。
杉元佐一
なんで?
この時期に肉が食えるのはマタカリプだ。
冬徘徊するものマタ   カリ      プ。冬ごもりしそこなって気が荒くなってる危険な熊だ。
お前らその男の死骸をどうするつもりだ?
杉元佐一
こ、こいつは....その...
近くの...村に....
あなた
あ、あぁ。
やめておけ。その男はマタカリプの食いかけだ
熊は一度手に入れた獲物にはものすごく執着する。
獲物を奪われたらどこまでも追いかけて取り戻そうとする。凶暴なヒグマを村まで案内する気か?置いていけ。
あなた
それは出来ません。
この遺体は絶対ここに置いていけません。
?その男はお前らの家族か?友人か?
そんなに大事な人間なのか?
杉元佐一
いや....
あなた
そ、そういうわけでは....
じゃあお前がマタカリプを撃てばいい。
そこの男、兵士なら戦え。
杉元佐一
....(俺が戦場戦ったのはロシア人でこんな化け物みたいなヒグマじゃねぇぞ)
もうすぐ真っ暗になる。今夜は月がでないから自分の手も見えなくなる。でもヒグマからはこちらが見えているぞ。
熊の夜討ちは危険すぎる。
覚悟がないなら早く立ち去った方がいい。
弱い奴は食われる。
杉元佐一
....
あなた
....
杉元佐一
....なぁ、面白い話があるんだ。
杉元佐一
俺らもまだ半信半疑だが、このオッサンの話が本当なら...この死体をヒグマに食われる訳にはいかねぇ。
杉元佐一
あんたはヒグマ猟に慣れてる。力を貸してくれ
杉元佐一
(幼なじみで、戦友が残した最後の頼み....)
あなた
(ばあちゃん....)
杉元佐一
どうしてもカネが必要なんだ。
....

アイヌの少女は黙ったままだ

あなた
....そうですよね。こんな話私達も最初は
ホラ話だと思いましたけど...
信じる。
杉元佐一
ほんとか?
なぜならその殺されたアイヌたちの中には
私の父親もいたから。
あなた
....え
杉元佐一
なんだって?
話はあとだ。急いでまきを集めろ。

そして薪を集め、火をおこした。

杉元佐一
火があれば近づかないのか?
いや、ヒグマは火など恐れない。
このかがり火の明かりでヒグマを撃つ。
死体を囮に使って待ち伏せるんだ。
もっともっと薪が必要だぞ。
杉元佐一
じゃあ、もっと遺体を明かりに近づけとくか

そして杉元が死体を明かりに近づけようとした時、アイヌの少女の顔色が変わった。

あなた
ちょっと待て、この入れ墨....
そうか...これは!
なんて冷酷な事を....
あなた
どうしました?
最初から囚人達に金塊を山分けするつもりなんてなかったんだ。こいつらそれも知らずに....
杉元佐一
どういう意味だ?
見ろ。

アイヌの少女は、死体の入れ墨を指さした。

入れ墨が胸や腕にも廻り込んで彫られている。
そしてその全てが身体の正中線で途切られている
この位置は熊や鹿を解体するとき、毛皮を剥ぐために切込みを入れる線と同じだ。
あなた
....

あなたは絶句した

杉元佐一
つまり....殺して皮を剥ぐことが前提でこの入れ墨は彫られているってことか?
あなた
(この入れ墨を彫った男は一体何者なんだ....)
あなた
ヒグマがくる前に皮を剥いでしまえばいいんじゃないですか?剥いだ生皮まで追いかけてはこないでしょう....
いや、そんな暇はない。
羆は獲物からあまり離れない。
必ず近くにいる。
薪を集めるのが最優先だ。










































杉元佐一
俺たちで羆をたおすしかねえってことか
あなた
(いきなり舞い込んできた一攫千金の手がかり....羆なんかに食われてたまるか!!)





杉元は銃を構え、あなたは短針を構えた。


























































近くで鳴いている羆の声を、3人はまだ知らない。

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