第9話

「罠」
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2022/08/14 08:05
アシㇼパ
見ろ杉元、あなた!
松ぼっくりをかじった残りの芯だ!
たくさん落ちてる
アシㇼパ
このエゾマツはリスの餌場だ

アシㇼパはエゾマツを見上げた


あなたは松ぼっくりの芯を見ていた
あなた
エビフライみたいになるんですね
アシㇼパ
なんだ?それ
杉元佐一
あるんだよ。東京にそういう食べ物が。
杉元佐一
....なぁあなたさん
あなた
ん?
杉元佐一
敬語は外していいよ。
あなたさん、その方が楽だろ?
あなた
....うん。わかった。
アシㇼパ
私にも敬語を外していいぞ!
私もあなたと沢山話したい!
あなた
ん。わかったよ。
アシㇼパ
幹にこうやって棒を立てかけておくとリスは横着して楽な通り道を選ぶからここを通る。
アシㇼパ
この棒に針金でつくった「くくり罠」を仕掛ける。リスが頭を入れて進むと首が締まる
杉元佐一
え〜リス食うのか?俺リス好きなんだけどなぁ
アシㇼパ
私も好きだ!
リスは木の実しか食べないから肉が美味い!
あなた
リスって美味しいの?
アシㇼパ
食べたことないのか!?
あなた
うん....
アシㇼパ
じゃあ捕まえたら食べさせてやる!
あなた
ありがと。アシㇼパちゃん。
アシㇼパ
あぁ!
アシㇼパ
毛皮も売れるから現金が手に入る。
ほかの木にも仕掛けてとこう!
杉元佐一
アシㇼパさんがいれば路銀ろぎんには困らんな。
杉元佐一
....脱走した囚人たちが金塊を探しているなら内地のほうには逃げてない。この北海道のどこかにまだいるはずだ。必ず探し出してやる
アシㇼパ
北海道は広いぞ
杉元佐一
囚人だって獣じゃない。
山に隠れては生きていけないはずだ。
杉元佐一
熊に食われたオッサンも砂金が少し採れれば山から下りて町で酒を飲んでた。
あなた
小さな集落だとよそ者は目立つし、脱獄犯ならなるべく大きな町で人にまぎれたいのが心理だと思う。
杉元佐一
あぁ。北海道で人口の多い町といえば
札幌さっぽろ函館はこだて旭川あさひかわ....
杉元佐一
そしてここ、小樽おたるだ。
あなた
(ここ小樽だったのか)
アシㇼパ
それで....どうやって入れ墨を探す?
熊に食われた男だってずっと隠して
暮らしていたのだろう?
こら返しなさい
うふふふ

当時の小樽には私娼窟ししょうくつがいくつも存在した。
蕎麦屋のノレンをかけた売春屋が何軒も続いており、本当の蕎麦屋を見つけるのが困難なほどだった。



杉元は風呂屋へ行き、アシㇼパとあなたは聞き込みをしていた。
ん?なあにお嬢ちゃんたち。
なんか用?
あなたは後藤の入れ墨を描き移した和紙を見せた
あなた
こんな入れ墨の客を相手にしたことはありませんか?
さぁ。そんな変なモンモン見たことないわねぇ
時子ちゃんある?
わたしは無いわぁ。でも......


すると、大男がアシㇼパの服を掴み持ち上げた



あなた
アシㇼパちゃ....!!
何でアイヌのガキが店の前でうろちょろしてやがるんだ?うちの女たちをおちょくりに来やがったのかコラ
お前いくつだ?12か13か?まだ顔に入れ墨も彫ってねえなぁ。アイヌの女ってのは年頃になると口の周りに墨を入れるらしいが....
そんなんじゃ客がつかねえからそのまえに売り払うかぁ?
....お、そこの女もなかなかに良いじゃねえか。お前も売り払ってや


大男の声を遮り、あなたは大男の顔に膝蹴りをいれた


大男が地面に膝をついた瞬間にアシㇼパはあなたの元へ走った

があッ!
アシㇼパ
あなた....!
あなた
大丈夫?アシㇼパちゃん
アシㇼパ
あぁ....ありがとう!
くそッ....このクソガキ共!!
あなた
....

あなたが短針を構えようとすると、大男の後ろに杉元が現れた。

杉元佐一
おい。
杉元佐一
俺の親指をミロ
あぁ?なんだお前_______

直後、杉元は親指を大男の首元に勢いよく突き立てた


ガヒューと変な声を大男は出した。
杉元佐一
息が苦しいかもしれんが質問に答えろデカブツ
杉元佐一
この入れ墨に見覚えは?

あなたが入れ墨の写しを見せた。


だが大男は首を横に振った
杉元佐一
うーん....
あなた
やはり肌を出すところへは安易に
寄り付いてないのかもな。
でぼ....おなじことを...
まえに、聞いてきた男がいだ
杉元佐一
アシㇼパ
あなた
杉元佐一
考えることは同じか


杉元はニヤリと笑った










その後も3人は聞き込みをしたが、進展はなかった。









杉元佐一
アシㇼパさん、あなたさん、今日はここまでにしてまた明日出直そう。
あなた
そうしよう。
3人が山へと帰っていた。




























3人の後ろを、謎の男がついてきていた。
杉元佐一
....何人だ?
あなた
男がひとりだな。
アシㇼパ
街からずっとついてきてる


3人は止まることなく、山の奥へと歩いていった








どんどん深い森へ入っていく....どこまで行く気だ?
寝床を突き止めようと思ったが....

男は銃を取り出した

ここでやっちまうか


男はサルオガセの下を通った。



途端、男の首がくくり罠にかかった。

が....!?ゔゔゔうううッ!!



































男の肌には、金塊の手がかりの入れ墨が彫られていた。

あなた
かかったな・ ・ ・ ・ ・
杉元佐一
まずは一匹目!

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