第8話

「ウェンカムイ」
837
2022/08/03 00:55
ヒグマは一度人間を殺すと罰として人間しか食えなくなる。
人間を恐れない凶暴で危険なウェンカムイ   悪い神になる。
杉元佐一
バレちまったってわけだ....
人間様が弱い生き物だって...
必ず羆はくる!一晩中かがり火を絶やすな。
暗くては戦えない。
朝になって明るくなればこちらにも分がある。
「シタッ」を拾え!
あなた
なにを?
白樺の樹皮だ
白樺の皮は油が多くて長く燃えるから松明につかえる。

アイヌの少女は白樺の樹皮を、杉元とあなたは薪を集めていた。
杉元佐一
日がでるまであと12時間か。長期戦になる。
もっとたくさん薪が必要だな
あなた
ですね






















杉元とあなたが薪の方向を向いた





































































そこには、大きなヒグマがいた。


「ガガガガガガガガ!!!」



杉元佐一
うおおでけえッ!!
あなた
でか....ッ!!
しまった!もう来た!!


衝撃で、白樺の樹皮が落ち火が消えた



杉元が羆を殴るが、効く訳がなかった。

下にもぐって腹にしがみつけッ!!




杉元佐一
ぐあっ!
あなた
いッ....!!









暗闇の中、バキバキッと音が鳴った












(やられたか....暗くて見えないがおおよその位置はつかんでる。急所にあたらなくても毒がはいれば時間がかかるけど倒せるかもしれない。気配を読んで確実に当てなくては....)
(突進してくる熊から木が盾になるよう位置をとる。ヒグマの速さなら次の矢を引く前に距離を詰められるだろう)

アイヌの少女は見た。



杉元とあなたが羆の腹の下にしがみついている。

(あのシサム達まだやられて無い)
(※アイヌから見たアイヌ以外の日本人のこと)
一か八か射つ!!

「カフッ」


「カフッ」


「ウオッ!」

あなた
待ってください!こっちで何とかします!!
あなた
クソッ....!!
杉元佐一
ぶっ刺してやるから暴れるな!

杉元は刃をだし、あなたは短針を構えた


現代の都会の夜では実感しがたいが、満月の光は
「昼をも欺くあざむ明るさ」と形容される。





満月の光で羆と杉元、あなたが見えた時だった





アイヌの少女が、弓矢を放った





それと同時に杉元とあなたが羆に刃と短針を刺した



「ギャッ!」




弓矢は羆の頭に当たったが、刺さらなかった


!!

アイヌには熊の頭を狙う習慣が無い。


なぜならヒグマの頭蓋骨は装甲そうこうのように分厚く、銃弾すら弾き飛ばすこともあるからだ。

杉元佐一
うおっ待てッ!
あなた
走るなッ!!

ヒグマがアイヌの少女の方向に突進していった


ヒグマがアイヌの少女にあたり、衝撃で杉元とあなたが落ちた


アイヌの少女が刃を抜きヒグマと向き合った




































その時である








































白いなにかがヒグマに襲いかかった




『ゴォアウッ!!!』


杉元佐一
野犬?

白いなにかはヒグマの額に飛びかかり傷をつけた



「ガガガガガ!!」


(レタㇻ....)


「カフッカフッ!!」


『ゴルルルルッ!!』

その位置からだと・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・心臓は脇の下だ。
肩甲骨に気をつけてしっかり狙え!



杉元は銃を構え、あなたは短針を構えた



杉元が羆の肩甲骨に気をつけながら脇の下を撃ち抜いた



あなた
杉元佐一


ヒグマは2人に飛びかかってきた














杉元佐一
殺してみろッ!!!!
俺は不死身の杉元だ!!!!
あなた
ッ!!!

羆が2人に倒れようとしたその時、あなたは短針を、杉元は三十年式銃剣をかまえた























そしてヒグマが2人の上に倒れた


























ヒグマはドクドクと血を流している

....おい、生きてるかシサム達








杉元佐一
生きてる
あなた
生きてる

2人が羆の下からでてきた

杉元佐一
やれやれまた生き残った
あなた
死ぬかと思った
アイヌの猟師も木の杭を地面に固定して同じように覆いかぶさるヒグマの体重を利用しながら心臓を串刺しにする。
危険で捨て身の戦い方だ。よく知っていたな。
あなた
知りませんよ....とっさに身体が動いた
杉元佐一
おい、引っ張り出してくれ

アイヌの少女が2人の手を握り、引っ張り出した

勇気と戦いの才能がある。優秀な戦士達だ。
シサムにしてはやるな。



杉元とあなたはアイヌの少女の目を見た

杉元佐一
杉元佐一だ
あなた
亜紅兎あなた
アシㇼパ
アシㇼパ
あなた
さっきのデカい白い犬は?
なんだったんですあれ。
アシㇼパ
あそこにいる


そう遠くない雪山の上にそれはいた


アシㇼパ
あいつは狼だ。
あなた
狼....
杉元佐一
オオカミ?まだ生き残ってたのか....

1890年代、エゾオオカミはそのほとんどが駆逐され絶滅されたとされている。


杉元佐一
あんたを守ってるように見えたが....
アシㇼパ
....
アシㇼパ
五年前の話だ。父を含め村の男たち7名は金塊の隠し場所を移動させている道中に殺されたらしい。ばらばらに切り刻まれ獣に食い荒らされて散乱していた。
アシㇼパ
父らしきものもあった....
アシㇼパ
私が知っているのはそれだけだ。父たちを殺した男が捕まって網走監獄にいることすら私たちは聞かされていない。ましてや、入れ墨の囚人たちのことなんて...
杉元佐一
事件にかかわった役人達が金塊欲しさに隠していたんだろう。
杉元佐一
....なぁアシㇼパさん。俺らと組んで金塊を見つけよう。もとはあんた達の金だ。山分けとまでは言わない。だが俺とあなたさんにも分け前が欲しい。
アシㇼパ
見つけるってどうやって?
入れ墨の囚人を探し出して....そのあとは?
アシㇼパ
入れ墨を彫った男は囚人を殺して皮を剥げと言っているようなものだ。
杉元佐一
....
あなた
....
アシㇼパ
ほら、これはお前らのだ。
とっておけ杉元、あなた。
あなた
なんですそれ?
アシㇼパ
ヒグマの胆嚢たんのうだ。乾燥させれば生薬しょうやくとしてとても高く売れる。
アシㇼパ
熊は捨てるところが無い。肉は勿論食える。毛皮も売れるし脂も火傷の薬になる。杉元とあなたが仕留めたんだから全部お前達に権利がある。
杉元佐一
アシㇼパさんにも半分権利があるだろ?
一緒にたおしたんだから。
アシㇼパ
わたしはあっちの母熊だけでいい。
あした村のみんなに運んでもらう。
アシㇼパ
こいつは人を殺して食った。アイヌは人を殺した熊の肉は食わないし毛皮も取らない。悪いことをした熊は悪い神となってテイネポクナモシㇼという地獄に送られる。
アシㇼパ
わたしも人を殺したくない
あなた
....
杉元佐一
この入れ墨を持つオッサンが隠れて生きていたという事は、まだ金塊は見つかっていない可能性が高い。
杉元佐一
アシㇼパさん、おそらくあんたの父親を殺した男はまだ監獄で生きてるぞ。
杉元佐一
役人も金塊が発見されるまで死刑は執行したくないはずだ。

そう言うと杉元はナイフを取り出し、死体の皮を剥ぎ始めた。

アシㇼパ
....
あなた
だけど、埋蔵金が誰かによって見つかった
その瞬間、その男の利用価値は無くなる。

杉元は剥ぎ終わった皮を持ち、広げた

杉元佐一
金塊を見つけることが父の仇討ちかたきうにつながるんだよ
あなた
....アシㇼパさん。貴方、そう思ったから私達に手を貸して熊を待ち伏せたんですよね?
アシㇼパ
....
杉元佐一
手を汚すのは俺がやる。アシㇼパさんとあなたさんは知恵だけ貸してくれ。
あなた
待て杉元。手を汚すのなら、私もやろう。
杉元佐一
え!?....手を汚すことの意味分かってる?
あなた
当たり前でしょう。
知ってて言ってるんですよ。
あなた
私も、人を殺すことは.......できます。
杉元佐一
....そうか。
杉元佐一
俺とあなたさんはカネで、アシㇼパさんは親の仇。目的は違えど道は同じ。三人で手を組めば鬼に金棒だ。

プリ小説オーディオドラマ