とその時、部屋に入ってくる足音がして、数秒後、クローゼットが開いた。
レナだ。
「みーっけ! あっ、お兄ちゃんもいたんだ」
「あーあ、見つかっちゃったね。華ちゃん」
「ぅ、うん」
「華ちゃん、顔真っ赤。大丈夫?」
レナからそう指摘されて、ドキッとしたけど、さっきのことは秘密にしないとと思って誤魔化した。
「そ、そっかな。ヘーキだよ」
「そう?」
「うん」
「ならいいけど」
そう言って、レナは部屋を出て行った。
お兄ちゃんが後ろから私の頭を撫でる。
「お利口さんだね」
「う、うん」
「ご褒美いっぱいあげるから」
「ぇ……ぁ、うん」
ご褒美?
何をもらえるんだろう。
わからなかったけど、なんだかちょっと楽しみなのは、お兄ちゃんが好きだから。
これは秘密ごと。
誰にも言っちゃいけない。
お兄ちゃんと2人きりで会うの楽しみだな。
【続く】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。