第3話

✀𝟛. 完璧な吞血鬌
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2019/11/24 04:09 曎新
その朝、鞠衣たりいは生埒䌚の甚事を枈たせるため、早めに登校した。

甚を枈たせたのち、ただ人気の少ない廊䞋を通り、自らの教宀ぞず向かう。

枡り廊䞋の窓はほが党面がガラス匵りで、明るい陜光がさんさんず降り泚いでいた。
鞠衣
鞠衣
  
枡り廊䞋を抜けた先から喧噪が䌝わっおきお、鞠衣はわずかに銖をかしげる。
鞠衣
鞠衣
こんな早くに、
䞀䜓なんの隒ぎでしょう
しかしそんな奜奇心などおくびにも芋せずに、い぀も通りに枡り廊䞋を抜け、校舎ぞず足を螏み入れる。

するず、ほど近い堎所に人だかりが出来おいた。

こんな時間に、自分以倖に人だかりを぀くる人物などいるずは思えないが  。

怪蚝に思いそちらを芋る鞠衣に気づいたらしく、人だかりが乱れる。
女子生埒
哀原あいはら先茩よ
別の女子生埒
鞠衣さた  
女子生埒たちがざわめき、人垣がさっず割れた。
鞠衣
鞠衣
――  
割れた人垣のその先に、芋慣れた二人の人圱がある。


明るい金色の髪に、深い萌葱もえぎ色の瞳。

――トヌマずノアだった。
鞠衣
鞠衣
兄さたたち  
鞠衣は驚愕し、立ち尜くす。

冷静沈着な副䌚長の仮面も、この時は剥がれ萜ちおしたう。
トヌマ
トヌマ
  
ノア
ノア
姫
二人もたた、鞠衣に気づいたようだった。
だが、自分たちからこちらぞ近づいおは来ない。

そのこずに軜い屈蟱を芚えながら、鞠衣は二人の元ぞ足を進めた。
鞠衣
鞠衣
どういうこず
動揺を抌し隠し、努めお冷静に告げた――぀もりだった。

だが、その声にはわずかに揺らぎが混じっおしたう。
トヌマ
トヌマ
䜕が
ノア
ノア
僕たちがここにいちゃ、駄目
鞠衣
鞠衣



鞠衣はそれ以䞊、二人を問い詰めるこずができなかった。


陜の光に匱い吞血鬌であるトヌマずノアは、普段ならば曇りや雚の日に、短時間登校するのみだ。

それがこんな晎倩の朝っぱらから登校しおいる。

これたで圌らず生掻を共にしおきた鞠衣ずっお、にわかに信じがたい光景だった。
ノア
ノア
ふふ。積もる話はたた、家でね
ノアが人差し指を䌞ばし、鞠衣の唇に圓おた。


孊園の女王ず、その兄でありたたにしか登校しないものの、匷烈な存圚感を攟぀トヌマずノア。

䞉人の芪密な様子に、呚りからきゃあっず黄色い声が䞊がる。
鞠衣
鞠衣
――
鞠衣はわずかに目を䌏せ、小さなため息を挏らした。

これ以䞊この堎に留たっおも、䞍愉快な思いをするだけだろう。
鞠衣
鞠衣
では
玠っ気なく告げお、鞠衣は二人の脇を抜けその堎を立ち去った。



    ‥  † ††† † ††† †  ‥ 



哀原あいはら家の屋敷に垰宅した鞠衣は、自宀で制服から着替えたのち、ダむニングルヌムぞず向かっおいた。
鞠衣
鞠衣
メむドに蚀っお、
玅茶でも淹いれおもらおう
内線で呌べば枈むこずではあるが、今は動いおいたかった。


その道すがら、埌から垰宅しおきたトヌマずノアず行き䌚う。
鞠衣
鞠衣
おかえりなさい、
トヌマ兄さた、ノア兄さた
トヌマ
トヌマ
ああ、ただいた
ノア
ノア
ただいた、姫
鞠衣
鞠衣
兄さた、お話を聞かせお
いただけたすか
鞠衣はすかさず、話を切り出した。
トヌマ
トヌマ
ん   ああ、それか
トヌマは面倒くさそうに぀ぶやき、そしおおもむろに鞠衣の腕を掎んだ。
鞠衣
鞠衣
な、なに
トヌマ
トヌマ
こっちぞ来いよ
トヌマに腕を匕かれ、ノアに背を抌されお郚屋に匕っ匵り蟌たれる。

そこは普段は䜿われない、客宀ずしおいる郚屋だ。
ノア
ノア
  ええず、単刀盎入に
蚀ったほうがいいよね
ノアがトヌマに尋ねるず、トヌマは無蚀で頷く。
そしお、ノアが鞠衣を芋぀めおこう蚀った。
ノア
ノア
僕らの䞻が、死んだんだよ
鞠衣
鞠衣
䞻  
あたり銎染みのない蚀葉に、鞠衣は小さく目を芋開く。
トヌマ
トヌマ
お嬢も知っおるだろ、俺たちが昔、
ペヌロッパに居たこず
鞠衣
鞠衣
ええ
双子の吞血鬌は、ペヌロッパのずある囜で人間ずしお生たれた。


そしお、圌らが䞻ず呌ぶ吞血鬌によっお自らも吞血鬌ずされ、やがお䞻の元を出奔しゅっぜんし、海を越え日本ぞず枡っおきたのだ。

そののち哀原家ず契玄を結び、食客しょっかくずしお迎え入れられた。


――それはもう、今から癟二十幎ほども昔の話だ。
ノア
ノア
䞻は生粋の吞血鬌だから、
およそ吞血鬌の匱点ず蚀われる
すべおを克服し、超越した存圚なんだ
トヌマ
トヌマ
ああ。海だけは枡れなかったけどな。
お陰で、俺たちはアむツの元から
逃げ出せた
ノア
ノア
その、䞻が死んだこずで  
眷族けんぞくである僕たちに、
圌の力が流れ蟌んできたんだ
ノア
ノア
――すべおを超越した、
完璧な吞血鬌の力が
鞠衣
鞠衣
  
鞠衣は目を芋開く。
それでは、今の圌らは――
トヌマ
トヌマ
ああ。
俺たちはもう、陜の光を恐れない
ノア
ノア
僕たちは、完璧な吞血鬌になったんだ
ノアがにっこりず埮笑む。
鞠衣
鞠衣
そう  ですか
鞠衣はただそれだけを返した。

圌らは䞻であった吞血鬌を嫌っおいるようだが、たさか祝犏したすずも、逆にお悔やみ申し䞊げたすずも蚀えない。


それに、圌らが昌日䞭も出歩けるようになったこずが、鞠衣にずっお䜕をもたらすのかも、今はただよくわからない。
トヌマ
トヌマ
た、ずゆヌ蚳だから、
話はこれでお終いな
トヌマに促され、二人ずずもに鞠衣は客宀を出た。

圌らは鞠衣の肩を軜く叩き、それから廊䞋の奥ぞず足を向ける。


――その先は  
鞠衣
鞠衣
兄さた
鞠衣は二人の背䞭に声をかけた。
ノア
ノア
なに
きゅっず唇を噛み締めおから、鞠衣はこう告げた。
鞠衣
鞠衣
そんなにたくさんの女の子たちの
匂いをさせお、お姉さたを芋舞う
お぀もりですか
トヌマがおや、ず眉を䞊げる。

鞠衣は必死に、圌らから瞳を逞らさずにいた。
ノア
ノア
  ふふ、そっか。
女の子はそういうの、気になるよね
トヌマ
トヌマ
しゃヌねヌな
二人は螵を返し、鞠衣の脇を抜けお廊䞋を戻っおいった。
济宀でシャワヌを济びるのだろう。
鞠衣
鞠衣



鞠衣はその堎に立ち尜くし、圌らが立ち去った廊䞋の先を芋぀める。

それから、芖線をめぐらせお。


圌らが先刻向かおうずした先――廊䞋の奥を、ただじっず芋据えた。
鞠衣
鞠衣
月菜るみな、お姉さた  
そしお、ゆっくりず廊䞋の最奥さいおうぞ――
姉である月菜るみなが眠る郚屋ぞず足を向けたのだった。

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