カウンターの女の人は少し考えてから思い出したように、言った。
すると、カウンターの人は何かわかったような顔をして
と言った。
改めてまわりを見ると、いろんな人がいた。
足に包帯を巻いてる男の子や心配そうな顔でうろうろしている女の人。
目に入ってくる人全員、浮かない顔をしていた。
女の人は、コンッコンッと二回ドアをノックし、開けて中に入っていった。
しばらくして、女の人が戻ってきて
と言った。
僕はもう一度頭をさげ
と言った。
そして、部屋の中に入った。
そこには一つのベッドが置いてあり、確かにあの日見た女の子がいた。
その子から見て左側に中くらいの窓があり、その女の子はこちらに背を向けて座っていた。
何か話したい訳でもなかったが、とりあえず助かってよかったと思った。
そう言いながら、その子が振り返った。
優衣香と名乗ったその子は僕に頭をさげてお礼を言ってきた。
嬉しそうに微笑んだ彼女の顔を見て、僕も嬉しい気分になった。
彼女の安心したような表情からいい人だとわかった。
こんなセリフを言うのは、なんとなく恥ずかしい気がした。
彼女は突然悲しげな表情でそう言った。
衝撃過ぎて言葉がでなくなった。
これで最後?余命五年?
それから、彼女はいろんな事を僕に話してくれた。
言われたときどんなに怖かったかとか。
一つ一つ聞くたびに胸が締め付けられるように痛かった。
その先は彼女も言わなかった。
彼女がどれだけ辛い思いをしているか、僕には理解しきれなかった。
彼女がなぜ僕にいろいろ話してくれたのか、痛いほどよくわかった。
彼女はきっと、今までその思いを誰にも話したことなかったんだ。いや、話せなかったんだ。
まるで、僕と僕のお母さんのように。
そう言うと、彼女は驚いた表情で
と言ってきた。
なんとなく、自分自身と話しているようで心地よかった。
二人で話していると、時間がたつのが早く感じ、いつの間にか日が傾き始めていた。
また、会って話したい。そう心から思った。
病院の外に出ると、眩しい日の光に照らされた。そして、なんだか何でもできそうな気持ちになった。
自分の気持ち言ってみようかな、お母さんに。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。