第2話

あなたとの出会い
40
2019/03/24 11:46
優衣香(ユイカ)
行ってきまーす!
優衣香の母
優衣香.....本当に大丈夫なの?
一昨日退院したばっかりでしょう?
優衣香(ユイカ)
大丈夫!今日受験頑張るから!
優衣香の母
何かあったら、すぐ電話してね
優衣香(ユイカ)
わかってるって、行ってきまーす。
優衣香の母
行ってらっしゃい.....
ドアを勢いよく開けると、眩しい太陽の光が顔に注いだ。
今日は待ちに待った高校受験の日だ。
自分の胸に手を当てる。
優衣香(ユイカ)
大丈夫...
痛くない。
私は小さい頃から心臓が弱い。それに、生きる時間も限られている。

だけど、それが何?私には関係ない。私は自分らしく生きる。最後まで自分が納得する人生を歩みたい。





しばらく歩くと、駅が見えてきた。
たくさんの人々が行き交うこの時間。
もう一度、胸に手を当て、確認した。まだ、大丈夫。
中に入っていき、ホームまで来た。ここまで来れば安心。
ワクワクしながら、電車を待つ。

受験のために毎日勉強してきた日々を思い出す。
もう時間がない。私に残された時間は一年をきった。

目の前を見ると、私と同じくらいの男子が立っていた。
この子も受験かな?
そしていつもと同じように、嫉妬心がわく。いいよね、時間がたくさんあって。世界って不公平だよね...。
その時だった。
優衣香(ユイカ)
うっ......
胸に手を当てた。
いつも以上に、ドキドキしていて痛い。目の前の景色が歪み、意識が朦朧とする。もう、立っていることも辛い。
その時、前に立っている男子が振り返り目が合った。
優衣香(ユイカ)
助けて...
ささやくようにそう言った。
だけど、聞こえていないようでその子はすぐに前を向いた。
それとも、聞こえてたのかな?だけど、無視したのかな?
そうだよね、迷惑だよね。
ごめんなさい
そう思った後、意識が途切れた。






目を開けると、そこは病室のベッドだった。ゆっくり体を起こそうとする。だけど体が動かない。顔だけ動かし右を見ると、知らない女の人がいた。
女の人
気がついた?
優衣香(ユイカ)
え...っと
女の人
ごめんね。知らない人がいるとビックリするわよね。
優衣香(ユイカ)
あなたが助けてくれたんですか?
女の人
ううん、私は救急車を呼んだだけ
優衣香(ユイカ)
じゃあ誰が...
女の人
受験生の男の子よ
受験生の男の子...
もしかして、私の前に立っていた子?
優衣香(ユイカ)
その子は間に合ったんですか?
まさか私のせいで...
女の人は首を傾げて言った。
女の人
あんまり慌ててなかったから、大丈夫だと思うけど
優衣香(ユイカ)
そうですか...。
女の人
あなたって有名人ね
優衣香(ユイカ)
え?
女の人
だってこの病院に運ばれたとき、お医者さんが『またゆいちゃんか...』って言ってたから
優衣香(ユイカ)
あー、私よく入院するんで
女の人
そうなの?
優衣香(ユイカ)
はい、心臓が弱くて安静にしてなくちゃダメって言われるんですけど、そういうの苦手で...
その事を聞くと、女の人は笑って
女の人
そうよね。私も苦手だから、わかるわ
と言った。
その後、私がスマホでお母さんに連絡したのを確認して女の人は病室を出ていった。

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