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第3話

きっかけ
447
2020/11/23 01:39
あなたside

はじめは優しい人だな

それが二宮先生の第一印象だった

手術室看護師は主に2つの役割を担う

主治医に必要な器械を渡す器械だし看護師と

その手術の全てを管理する外回り看護師

新人は器械だし看護師から経験を積んでいく

最初は器械が全然分からなくて先生たちにもたくさん迷惑をかけた

そんな時、二宮先生は一緒の手術に入ったら色々教えてくれた

おかげで器械を渡すスピードも速くなった

器械出しに慣れてくると今度は外回り看護師の経験積みが始まる

外回り看護師はその手術においての看護の責任を全て背負わなければならない

だから、初めて1人で外回り看護師をする時は不安で押しつぶされそうになった

そして、その初めてが二宮先生が主治医を担当する手術だった

あなた「あー……やばい、汗かいてきた。緊張が……」

1人でブツブツ言いながら部屋に入るとすでに二宮先生の姿があった

二「おはよ。…どうした?顔色悪いぞ?」

あなた「おはようございます。じ、実は今日初めての外回りで…緊張が……」

二「ははっ。まあ、そんなに緊張するなよ」

そりゃ、先生は緊張しないだろうけど!

そろそろ患者さんが入室する時間だ

もう1回整理しないと…

パサッ

すると、目の前に1枚のメモが置かれた

そこには手術に必要なもののリストと

『よろしくな。頑張ろう』というメッセージとその横に不格好な馬の絵が書いてあった

二宮先生の方を見るとそっとウインクしてくれた

あなた「!」

その日の手術は失敗もあったが、先生のおかげで緊張はすっかりほぐれていた

そして、それからも先生はあたしが外回りに入るたびにメッセージを書いてくれた

他の同期の子にも書いていたようだが、それでもよかった

思えば最初のその1回が先生を意識するきっかけとなったんだ




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