第5話

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2019/12/15 13:19
 かすかに空気の振動を感じた。やけに現実みたいで、重い瞼を開けた。夢の世界と同じく、目の前にはミンギュが俺の顔を覗き込むように立っている。

『いま、なんかいっ…た?』

「…言いましたよ。僕、ひょんの事ずっと好きなんです。」

『急に…どしたんだよ。』

「ただ、言いたくなって。寝ぼけて[俺も…]とかって言ってくれるかな~って思ったけど、酔い…覚めちゃいましたよね。すみません、気にしないでください。」

足早に部屋を出ようとする彼を、気づくと俺は必死で引き止めていた。腕を掴むと、ミンギュの手は震えていた。

…こいつ。

『逃げるなよ、俺まだ何も言ってないじゃん。』

固まって、俺の手を振りほどこうともしない。相当の勇気で言ってくれたのが伝わって…。次に勇気を出すのは、俺だ。

『…みんぎゅ。……お…俺も好きだ、みんぎゅのこと、ずっと。』

静かにこっちを見る目は、冷たかった。

「ひょん、どういう意味か分かってます?僕の言う[好き]と、ひょんという[好き]はきっと違いますよ。僕の[好き]は……!!」

脳より先に、体が動いた。我ながら大胆だと思う。けど、勘違いされたまま、気まずくなるのだけは嫌だったから。それが俺らの最初のキスだった。

『…わかってるよ、ちゃんと。ずっと前から、こうなりたいって願ってたから。』

顔の近さに耐えられなくて逸らそうとすると、くいっと顎を上げられ、やさしいキスがひとつ降ってきた。

「…ひょんがそんなこと言うなんて。反則すぎます。」

俺の肩に額をぐりぐりする弟は、思ったより大人になったようだった。…これじゃ俺の心臓の方が危ない気がした。




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