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第5話

黄 昏 時 ep.05
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2018/05/09 04:27
黄昏時  /  ep.05




午前9時 。

‘ほら、席につけ。
お前ら今日は、転校生が来ている。

そんな担任の言葉にクラスが

一気に騒がしくなる。

‘高校3年生の夏に引っ越しなんて
よっぽどの事情があるんだなぁ、

誰かがそんな風に言うのが聞こえる。



‘おっし、じゃあ入って来てくれ!

お決まりのセリフを担任が言った後、

教室のドアが開いた。



「 転校生 」の

歩く上履きの足音、

ズボンが擦れる音。



イケメンかな、イケメンかな、

って騒ぐ女子たちの声。

がちゃがちゃした生活の雑音。

下品な笑い声。

友達の悪口。



人間の大好物がふっと消えた。



教室の淀んで霞んでいた空気が

その時初めて透明に見えた。



あの夜と同じように。



周りの空気を震わせた美貌



「彼」全ての要素が私の体に染み込んできて

離れない



‘紹介する、今日からクラスメートの七瀬碧くんだ。

そんな担任の声も耳に入らない。



きっと世界が止まるって

このことを言うんだと思う。



全てがスローモーションで

まるで、おとぎ話の中に入ったみたい



灰色の瞳に捕まえられるこの感覚。



その瞬間あの夜の事全てが頭をかけた。



街で見たあの人のことを、

どうしても思い出せなかった夜のことを、

夢か現実なのか区別さえつかなかった

あの灰色の瞳のことを — 。



「 転校生 」が、七瀬碧が、

黄昏時に出会ったあの 「 彼 」がここにいる。



心臓がバタバタと動き出す

鼓動がうるさく胸を叩いてくる。



‘ 七瀬碧です、よろしくお願いします。



そう彼の口が動く。



私の大好きだった、

笑顔のよく似合う、

今はもう亡き彼を



思い出させるような微笑みを浮かべながら。



神様は、いじわるだ。




__________

✒︎ chloé

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