瓦礫の山を見つめる少女の胸は、後悔と絶望をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたような感情で潰れてしまいそうだった。
私のせいだ。
真空のような静寂を守っていた実験室は、天井が崩れ落ち、そこに空いた穴は晴れた空を映している。
まるで大地震を経験したかのような、無残な姿だった。
バランスを崩した瓦礫がところどころ砂埃をあげる中、日の光を反射し、私の目をチカチカさせた。
なぜかぞくりと悪寒がしたが、胸の動悸を抑えながらサキは謎の光源に近づき、おそるおそるそれを拾い上げた。
SDカードのようなそれには、赤色の文字で㊙︎と書かれていた。
直感的に、これは彼だ、と思った。
震える両手でカードを握り締め、サキは祈るように泣いた。
自宅に戻り、すぐさまカードをパソコンに差し込んだ。
カードを読み込んでいる間、瞬きをするのも忘れ、画面に穴が開くほど見つめ続けていた。
データを読み込んだ後に画面に表れたのは、彼が生きていたことが淡々と書き連ねられた、日記のようなものだった。
それらは9つのファイルに分けられており、それぞれに彼の当時の内部状況が記載されているようだ。
ここに彼の秘密が詰め込まれている。
画面の向こうの彼に手招かれるように、サキはFile:01をクリックし、彼と私の記憶を辿り始めた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!