時刻は午後6時。
11月ともなれば、この時間になれば、もう辺りはすっかり真っ暗で。
私以外誰もいない放課後の教室で、1人。
先生から頼まれた資料を整理していると…
「あなたせーんぱいっ!」
『っ…謙杜くん…!』
静かだった教室に響き渡る、もうすっかり聞きなれた、元気で明るい声。
声がした方を見てみれば、思った通り。
そこには、謙杜くんの姿があって。
「どうしたの??こんな時間に。部活は??」
「今日はもう終わった!あなた先輩こそ、こんな時間まで何してたんですか?」
『あー、ちょっと先生に頼まれちゃってさ。笑 資料片付けといてって言われたんやけど、全然終わらなくて。笑』
「えっ、先輩また引き受けたんですか!? もぉー、そんなの断ればええのにっ!」
『うーん、まぁ、それが出来れば悩まないんやけどね?笑』
「先輩はいい人過ぎなんやって!ちょっとぐらい断ったって、誰も怒らないのに…。」
『ふふっ、まぁしょうがないよ。誰かがやらなきゃなんだし…って、謙杜くん?何してるん??』
「んー、見ての通り、片付け?笑 あなた先輩だけじゃ、この量出来ひんやろうし!!」
『えっ、!?ええよ、そんなのっ!私が引き受けたんやし、私1人で…!!』
「えーからえーから!ほら、先輩っ!早くやらなきゃ、帰れないですよ?」
なんて、ニコニコしながらそう言って。
何故か楽しそーに、大量の資料の片付けを手伝ってくれる謙杜くん。
謙杜くんは、私より1つ年下の後輩。
そんな謙杜くんと、私が初めて会ったのは、今日みたいに。
昔から自分の気持ちを表に出すのが苦手で、頼みごとをされると断りきれない私が
先生に頼まれて、謙杜くんに勉強を教えてあげたことがきっかけで。
「あなた先輩…?…もしかして僕の顔、何かついてます?笑」
『へっ、?…あっ、ううんっ、!ついてへん!!なんっにも、ついてへん!!』
「そー?それならええけどっ!…っていうか、あなた先輩、焦りすぎ。笑 もしかして、僕に見惚れてたとか?笑」
『な、なな、何言ってるん謙杜くんっ…!あんまり先輩のことからかわないのっ!!』
「えー、でもあなた先輩、顔真っ赤やで?笑」
『き、気のせいやから…っ!ほらもう!!早く終わらせるよ…っ!』
「ふふっ、はぁ~い。笑」
内心、ひやってした。
…っていうか、絶対バレた。
"見惚れてた"
なんて、謙杜くんの言う通りだったから。
初めは人懐っこい後輩で、可愛いなぁ~って思うくらい、それぐらいの感覚で。
だけど、、。
何かと理由をつけては、私の後にくっついてきて、優しい笑顔を見せる謙杜くんに
いつの間にか、私は惹かれていた。
『…よしっ!完璧!!謙杜くん、そっちもそろそろ……っ、!?』
何とか大量にあった資料を片付け終えて、くるっと謙杜くんを振り返れば
そっと、優しくぎゅっと、握られてた手。
『あのっ、謙杜く、「あかん、、かった…?」
『あっ、いやっ、、そういう訳じゃ、、。』
ドキドキする。
謙杜くんに聞こえてしまいそうなくらい、心臓がうるさくて。
「あなた先輩。こっち向いて?」
『…無理…っ、やだっ、、。』
「えー、僕、先輩の顔みたいなぁ~。ほら、こっち見て?」
恥ずかしくて、まともに謙杜くんの顔なんか見れなくて。
下を向いて、何とか誤魔化そうとしてみたけれど
結局、謙杜くんには全部バレていて。
促されるままに、恐る恐る、顔を上げて謙杜くんの方を見てみると…
「ふふ、やぁーっとこっち、見てくれた。笑」
なんて、ニコッと微笑みながらそう言う謙杜くんに、胸が大きく高鳴って。
「あなた先輩。…もし今僕が、"好き"って言ったら、どうしますか?」
『…っ!!、、、バカっ、。』
「へへっ、先輩、また顔真っ赤になってる。笑 可愛いっ。」
『~~っ、!』
「ねぇ、あなた先輩。僕、期待してもええ?」
『っ、!、、…わかってるくせにっ、、。』
「うん。笑 でも、先輩の口から聞きたい。」
真っ直ぐと、私の事を見つめてくる謙杜くん。
その瞳から、目を離すことは出来なくて。
『…好きっ。謙杜くんのことが、好きっ、!』
「ふふっ。俺も、好きです。あなた先輩。」
精一杯、自分の想いを伝えれば
謙杜くんもその気持ちに応えるように、優しくぎゅっと、抱きしめてくれて。
「あなた先輩、ずっと好きでした!僕と、付き合ってください!」
『…はいっ、!』
なんて、お互いの気持ちを伝えあって、2人で笑い合って。
『…謙杜くん。大好きだよ。』
いつもニコニコ笑ってる、人懐っこくて可愛い後輩の謙杜くん。
そんな年下の謙杜くんは、この日から。
誰よりも大切で、大好きな
私の、頼れる"彼氏"。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。